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旧司法試験 刑訴法 平成16年度 第1問


問題

警察官は、被疑者甲及び乙について、Aをナイフで脅迫し現金を奪った旨の強盗の被疑事実により逮捕状の発付を得た。
1 警察官は、甲を逮捕するためその自宅に赴いたが、甲は不在であり、同居している甲の妻から、間もなく甲は帰宅すると聞いた。そこで、警察官は、妻に逮捕状を示した上、甲宅内を捜索し、甲の居室でナイフを発見し、差し押さえた。この捜索差押えは適法か。
2 警察官は、乙の勤務先において逮捕状を示して乙を逮捕し、その場で、乙が使用していた机の引き出し内部を捜索したところ、覚せい剤が入った小袋を発見した。
警察官はこれを押収することができるか

関連条文

刑訴法
112条1項(1編 総則 9章 押収及び捜索):執行中の出入禁止
210条1項(2編 第一審 1章 捜査):緊急逮捕
212条1項(2編 第一審 1章 捜査):現行犯人
213条(2編 第一審 1章 捜査):現行犯逮捕
218条1項(2編 第一審 1章 捜査):
 令状による差押え・記録命令付差押え・捜索・検証
220条1項2号(2編 第一審 1章 捜査):令状によらない差押え・捜索・検証
221条(2編 第一審 1章 捜査):領置

問題文の着眼

逮捕前の捜索、勤務先での余罪に関する証拠物の差押え

一言で何の問題か

1 「逮捕する場合」(220Ⅰ)の時的限界
2 「逮捕の現場」(220Ⅰ②)の管理処分権と物的限界

答案の筋

1 逮捕する場合、証拠存在の蓋然性が高いことから、逮捕の現場における捜索・差押えが無令状で認められる。この点、逮捕の時間的誤差による影響は低く、時間的接着性がなかった場合も逮捕が予定されていれば適法となる。
2「逮捕の現場」とは被逮捕者の直接の支配下のみならず、逮捕場所と同一の管理権の及ぶ範囲も含まれる。もっとも、差押えの対象物は被疑事実に関連する物件に限られる。関連しない場合、緊急捜索差押えは明文がなく令状主義の潜脱となり認められないため、領置 or 捜索差押許可状の発布and発布までの出入禁止 or 現行犯逮捕により押収できる。

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