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旧司法試験 民法 平成2年度 第2問__

問題

Aは、B所有の茶器を所有していたところ、Cから100万円を借り受けるにあたり、この茶器をCに質入れした。

1 この茶器は、AがBから預かっていたのに過ぎないのに、Bの承諾なしに、自己のものとしてCに質入れをしたものであった場合に、Cは、質権の実行により、100万円の貸金債権の弁済を受けることができるか。次の三つの場合のそれぞれについて検討せよ。
(1) 現在、Cが茶器を所持している場合
(2) 質権の設定後にAの懇願を受けてCがこの茶器をAに引き渡し、現在は、Aがこれを所持している場合
(3) Cから茶器の引渡しを受けたAがこれを更にBに返還し、現在は、Bがこれを所持している場合

2 この茶器は、AがBに貸し付けた50万円の貸金債権の担保のためにBからAに質入されたもので、これを、AがBの承諾なしに更にCに質入れしたものであった場合に、Cは、自己の質権の実行により、100万円の貸金債権の弁済を受けることができるか。

関連条文

民法
192条(第2編 物権 第2章 占有権 第1節 占有権の取得):即時取得
342条(第2編 物権 第9章 質権 第1節 総則):質権の内容
345条(第2編 物権 第9章 質権 第1節 総則):
 質権設定者による代理占有の禁止
348条(第2編 物権 第9章 質権 第1節 総則):転質

一言で何の問題か

質権の即時取得、対抗要件、責任転質

答案の筋

1(1) 質権者Cが質権設定者Aの無権利につき善意・無過失であれば、質権の即時取得により、弁済を受けることができる。
1(2) 質権の本質はあくまで優先弁済的効力にあり、留置的効力はあくまで債務の弁済を確保するための補助的機能にすぎず、設定者への質物返還は、第三者への対抗要件を失わせるだけであって、質権の効力自体は存続する。このため、Cの質権は存続し、質権設定者Aに対抗することができ、弁済を受けることができる。
1(3) 第三者であるBに質物の占有が移転しており、Cは対抗することができず弁済を受けることができない。
責任転質の質権設定者であるAが把握する交換価値は50万円であり、Cは質権の実行により、この範囲で弁済を受けることができる。もっとも、Cが交換価値について善意・無過失である場合は、100万円についての質権を即時取得し、100万円全額の弁済を受けることができる。


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