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大阪府職員採用試験 平成25年度 行政法

問 題


Aは、甲県乙町において、甲県知事(以下「知事」という。)から、公衆浴場法 (以下「法」という。)第2条による許可(以下「本件許可」という。)を受けて、 公衆浴場であるP湯の営業を開始した。一方、Xは、本件許可が行われるまで、約 15年間、P湯の敷地から約240メートル離れた場所にあるQ湯を経営してきた が、最新の設備を備えたP湯の営業開始後、Q湯の利用者は激減した。法第2条第 3項に基づいて甲県が制定した公衆浴場法施行条例(以下「本件条例」という。) は、各公衆浴場間の最短距離は250メートル以上保たれていなければならないと 定めている。そこで、Xは本件許可がこの距離制限に違反してなされたと考えて、 知事に対し、本件許可を職権で取り消すことを要求している。甲県が調査した結果、 本件許可に際し、P湯の敷地の一部とみなすべき土地がP湯の敷地でないと判断さ れたことが判明し、本件許可は本件条例所定の距離制限に違反してなされたという 結論に達した。

この事案について、次の(1)、(2)の問に答えなさい。
(1) 知事は、本件許可を職権で取り消すことができるかについて、知事が職権取消しをするか否かの判断に際して考慮すべき事項に注意して論じなさい。
(2) Xは、知事が本件許可を職権で取り消さない場合には、本件許可の取消訴訟を提起するつもりでいる。Xが当該訴訟の原告適格を有するか否かについて論じなさい。

【参考条文】

〇公衆浴場法
第2条 業として公衆浴場を経営しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。

2 都道府県知事は、公衆浴場の設置の場所若しくはその構造設備が、公衆衛生上不適当であると認めるとき又はその設置の場所が配置の適正を欠くと認めるときは、 前項の許可を与えないことができる。(以下略)
3 前項の設置の場所の配置の基準については、都道府県(…略…)が条例で、これを定める。
4 (略)

関連条文

行政事件訴訟法
9条1項(2章 抗告訴訟 1節 取消訴訟):原告適格
10条1項(2章 抗告訴訟 1節 取消訴訟):取消し理由の制限

一言で何の問題か

設問1 効果裁量に基づく違法な処分(許可)後の職権取消し
設問2 原告適格

つまづき・見落としポイント

「許可しないことができる」の処理
A:「許可」の意義 → 効果裁量の否定
B:「できる」の意義 → 効果裁量の肯定
※司法試験予備試験はどちらの結論でも問題なく、ロジック重視

答案の筋

設問1
法における許可制は、国民保健および環境衛生という公共の福祉の見地から出たものであり、効果裁量は認められず、本件許可は違法である。しかし、処分の瑕疵の程度は小さく、取消しにより得られる利益は見込めない一方、相手方の不利益は甚大であり、職権で取り消すことはできない。
設問2
法の距離制限規定は、既存の公衆浴場の経営者の売上を継続的に確保する趣旨をも含有するものとは言えず、自由競争市場という観点からも、かかる利益は法が個別的に保護する利益であるといえない。よって、「取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者」にあたらず、Xは原告適格を有しない。

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