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石井純平

時は遡る事2020年11月3日

その日のライブで俺たちは前ボーカル
三浦詩音(現九芍、NINJA PUBLIC)
が脱退する事を発表した。

発表した時点では次のボーカルの当てなんて無く、本当に先の見通しが全く無かった。
なんなら戻って来れないかもしれない。と少し不安に思ってる自分もいた。

ライブが終わり、自分達の口で目の前にいる、画面越しで観てくれてる人達に直接伝えた。
とんでもない空気になってしまったけど、なによりもまず先に足を運んでくれた、もしくは画面越しに見届けてくれた人達に直接伝えたかったからこの選択をした。

それが俺達なりの精一杯の筋の通し方だったんだ。


その後、お客さんと話したり片付けをしている時にその日静岡から来ていた後輩のバンドマンが1人寄ってきて「新しいボーカルは決まってるんですか?」と聞いてきた。

決まっていない事を伝えると「Azamiで歌いたい」と言ってくれた。

嬉しかった。

気付いたら何故か詩音くんに「Azamiで歌いたいです。」と伝えにいき、そして何故か俺らのいない所で詩音くんからAzamiを託されていたらしい。

打ち上げ中に詩音くんもそいつも居ないなと思ったらどうやら2人でずっと話し込んでいたようだ。

戻ってきたと思ったら自信満々な顔で

「俺もうAzamiなんで普円さんぶん殴ってでも入ります。」

と言われ、困惑しつつも取り敢えず後日ご飯に行く約束をした。


11/3に発表した後、最後に向けてイベントの準備をしたりセットリスト考えたりインスト曲「餞」の作曲をしたりでなんだかんだバタバタしていたら例のソイツから連絡が来た。
そこにはDROPBOXのリンクが貼られていてそれを開くとAzamiのカガミグサが流れてきた。

ギターもベースもドラムも全部1から打ち込みで作られていて、ソイツの声が入ってた。

Azamiに加入する為に、メンバーを納得させる為に、全てのパートを自分の耳でコピーして自分で歌って自分自身のAzamiへの想いも一緒に込めて俺らに送ってくれた。


嬉しくないわけないし、その気持ちに心の底から感動した。
よく知るAzamiはその音源の中には無かったけど、代わりに新しいAzamiがそこにはあった。

こいつと一緒にAzamiをやりたいと思った。


その数日後にソイツとご飯を食べに行った。
わざわざ静岡から越谷まで来てくれて最初はたわいもない話をしていたら突然

「俺はねぇ、こんな人間なんですよ」

と、自分について猛烈にプレゼンされた。

"あ、こいつは多分変な人なんだな"

って思いつつも
なぜかそこに対して自分も謎の安心感を感じてしまって

"類は友を呼ぶ"

の言葉の説得力に1人で感心していた。

気付いたら自分の中にある"不安"が無くなっていて、少なからず2月まで駆け抜ける原動力にもなっていた気がする。


その後もちょこちょこ連絡はとりつつも、バタバタと1月の企画の事や2月のワンマンに向けて準備や練習をしていたと思ったらあっという間にワンマンの当日になっていた。


そしてその日、Azamiの歴史の中に一つの区切りがついた。


ライブが終わってずっとふわふわしていたけど、
家に帰るとあまりにもあっさりと時間が過ぎていく事に気付いて心の中が虚無感で満たされた。

ネガティヴになってるわけでもなく、ただただ虚無だった。

自分達で決めた事なのになんでこんなんになってんだろって思ってしまったけど今思うとそれはしょうがない事なんだと思う。

そんな精神状況の中でも次の木曜日にはいつものようにスタジオがあり、なんならソイツとの初めてのスタジオ。

"初めてのスタジオなのに自分がこんな状態なのは申し訳ない。なんとかしなければ"
って思いながらもやっぱり時間はあっさりと過ぎていきスタジオ当日になった。

相変わらず静岡から来てくれたソイツは、
自信満々を装いつつも若干緊張が見え隠れしていた。気がする。

俺はと言うとまだふわふわしていた。


そんな状態のままセッティングをし、軽く音を出し、遂に新しい5人で初めて音を鳴らした。


自分の中に今まで感じた事が無い程の衝撃が走った。


ここ数日の自分はなんだったんだろうと思うくらい急に自分の中に全てが戻ってきた。


念の為に言うと今までのAzamiを否定する気なんてないし、今までのAzamiは紛れもなくAzamiだったしある意味であの時のAzamiを超えることなんて出来ないと思う。
だけど俺はソイツの事をマスターピースだと思った。

これがAzamiだと思った。

そこからは早かった。

本当は秋くらいから活動再開をしようと思っていたんだけど、我慢が出来なくてすぐにライブを入れてしまった。
早く今のAzamiを届けたかったし、あとは今のライブハウスシーンの事を考え自分達の力では何も変えられないけどせめて球数を増やすべきだと思ったんだ。


そして2021年6月14日


笑顔な人もいれば複雑そうな人もいた。
でもそれで良い。

全部受け止める。
俺達は前に進むんだ。


こうして新しいAzamiが始まった。



因みに、現体勢最初の3本は純平の事を告知しないでライブをした。

みんなはてなマークが浮かんでいたと思うけど、

どうなるのかわからなくてもAzamiを見に来てくれる人にまずは届けたかったんだ。


これが2020年11月3日から2021年6月14日までのお話。

それ以降の話は現場で見届けて欲しい。


これからも宜しくお願いします。

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