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連携は難しい。しかし、連携しないと未来はない。(夜の世界と社会をつなぐNPO理事長の月報:2023年10月号)

こんにちは、NPO法人風テラス理事長の坂爪です。

2023年10月11日(水)、渋谷で休眠預金事業の事例共有会が開催されました。風テラスチームは、理事長の私、事務局スタッフ、ソーシャルワーカーの3名で参加いたしました。

日本を代表する名だたる認定NPO法人の皆様が一同に会する中、NPO法人化してまだ1年半、よちよち歩きの我々が参加するのは恐縮の極みでしたが、伸びしろの大きさだけはどこにも負けないぜ!というポジティブな気持ちで臨みました。

グループディスカッションで他団体の皆様とお話をさせて頂く中で、どの団体も共通の悩みや課題があり、その中で最善を尽くして活動されていることをお聞きして、私も非常に励まされました。

今回の事例共有会には、団体間の親睦~連携を深めるという目的もありました。先月の記事で取り上げた困難女性支援法のテーマも「連携と協働」でしたね。

「連携」も「協働」も、NPO業界にいる人にとっては、これまで何百万回も聞いている・聞かされている、耳タコな言葉ですが、近年、「第n次連携ブーム」というか、改めてこれらの言葉が各所で強調・連呼されています。

その背景は、一言でまとめると、

1.「分かりやすく困っている人」の減少

2.「分かりにくく困っている人」の増加

が影響していると思います。

「分かりやすく困っている人」=誰の目にも、明らかに支援が必要だと分かる人や、自分自身で「助けて」と言える人、周囲から「助けてあげたい」と思われる人の割合が減っている。

その一方で、「分かりにくく困っている人」=既存の制度や支援の枠組みには乗らず、本人も自分が困っているというはっきりした自覚はないため、自分からは「助けて」と言わない人、周囲からも「助けてあげたい」と思われない人の割合が増えている。

夜の世界で言えば、「月収100万稼いでいるけれども、ホストの売掛の支払いで全て消えてしまうので、手持ちのお金がほとんどなく、ネットカフェで暮らしている」といったケースです。

高収入があるので、生活保護や法テラスなどの制度は使えない。ホストに行ったのも、そこで売掛を作ったのも、風俗で働いて返済しているのも、全て自分の意志なので、誰かに「助けて」とは言いづらい。けれども、お金も住まいもなく、確実に困っている。

こうした「分かりにくく困っている人」に支援を届けるためには、まず「受援力」(=助けてと言える力)を高めるためのアウトリーチが必要になります。

困り感がなく、誰かに相談するという選択肢自体がない人に対しては、支援者の方から現場に出向いたり、情報発信や広告などで自分たちの存在を知ってもらうことで、「相談できるんだ」「相談してもいいんだ」「相談しても怒られないんだ」という気持ちを持ってもらう。

受援力を高めるためのアウトリーチの次に必要なことは、アウトリーチでつながった人の課題を解決していくための個別支援です。

「分かりにくく困っている人」の背景には、借金・メンタル・家族・障害・病気・虐待・DVなど、様々な課題が多重化しているので、課題を因数分解して個別に解決していくためには、様々な窓口や制度、社会資源を使う必要があります。

ここにおいて、団体同士の「連携」や、行政との「協働」が必要になってくる。一団体だけで、本人の多重化した困難を解決することは不可能なので、対象や得意分野の異なる他団体、そして行政の制度の力を組み合わせながら、本人の困りごとを一つずつ整理・可視化して解決していく、というプロセスが必要になります。

口で言うのは簡単ですが、組織のビジョン・ミッション、文化や規模の異なるNPO同士が連携する、というのは、一筋縄では行きません。

SNSで散見されるような、団体同士のマウンティング合戦や縄張り争い、それらを要因とした炎上が巻き起こってしまうリスクもあります。行政とのやり取りも、一歩間違えれば、「現場を知らない行政 VS 行政を批判するだけのNPO」という構図の不毛なバトルになってしまいます。

人間関係と同様、価値観のすり合わせや細かい実務の打ち合わせには膨大な手間と時間がかかるため、日々の業務多忙を理由に、「連携って大事だよね」「みんなで協働できればいいね」といったフワッとした言葉でお茶を濁してきた、というのが実情だったと思います。

しかし、アウトリーチの普及で「分かりにくく困っている人」とつながれるケースが増えてきている中、そして困難女性支援法の施行を来年4月に控えている状況下で、いつまでもお茶を濁し続けるわけにもいかないはずです。

連携は難しい。しかし、連携しないと未来はない。

今必要なことは、手間と時間をかけることを厭わずに、まずは価値観や活動領域の近い団体同士での連携を進めていき、各地域での行政と顔の見える関係性を作っていくことだなと、改めて感じました。

風テラスも、様々なアウトリーチを通して、年間で3,000人近い女性とつながることができるようになったので、今後は「つながった後」に提供できる支援や選択肢の幅を、他団体との連携や行政との協働を通して、少しづつ、確実に増やしていきたいと考えております。

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