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司法試験に落ちたあなたへ

某大学法学部の、先輩と後輩の対話にて。

後輩
試験勉強をしていて、予備校の模擬試験を受けて返却されたものを見ていると、司法試験も点取りゲームみたいだ、と感じます。
高校受験、大学受験のように、ただ良い点を取るためだけに勉強していても、虚しさを感じることがあります。
先輩も、そういう気持ちになることはありましたか。また、どう乗り切りましたか。

先輩
私も、初学者として模試を受け始めた頃、そういうことを感じることが時折ありました。
しかし、勉強を進めていくうちに、だんだんと考え方が変わってきました。
誰かと比べるのではなく、過去の自分と比べる、ということが受験においては何より大事です。
他人とではなく、自分と比べる、ということです。
数値上は、他の受験生との比較の上で合否や成績が決まるけれど、普段の勉強においては成績が上がるか下がるかは、絶対的に自分の勉強に依存します。
また、その数値はあくまで数値であって、『人間』ではありません。
受験する者は、誰しも生身の『人間』であることに変わりはないです。
もっと優秀な人を羨んだりするのも違うし、
優秀ではない人を蔑んだりするのも違う。 
そういうことに気づけたことは、大きいです。
もしかしたら、この試験を受けた最大のメリットだったかもしれない、と個人的には思います。
そして、何より、受験勉強を通じて法律家としての素養を身につけることが大事だと思います。
試験は、点取りゲームの側面があることは否めませんが、その先にある社会において求められる役割というものを考えておかなくては、試験に受かっても空虚な気持ちになると私は思います。

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後輩
勉強の中身に意義や楽しみを見出せたなら、点取りゲームに苛まれなくてよい、ということですね。

先輩
はい、勉強を楽しめる人、それは勉強に没頭できる人ということですから、自ずと良い成績が取れるようになる、と私は思います。
同時に、試験というものが、数値で測られる能力を明らかにするものである以上、試験勉強において、ある意味、したたかに点を取りに行く、という姿勢が大事だと思います。
点を取るコツは、基本的なことをしっかりと書く、ということです。
毎年千人以上も合格する試験なので、他の合格者が書きそうなことをしっかりと書く、ということが何より大事だと、当事者として感じます。
他の合格者が書きそうなこと、というのは過去問の検討や優秀答案(再現答案、参考答案も同様)の分析等から自ずと明らかになってくるはずです。
試験に向けて勉強をし始めた頃は、『自分だけ』が果たして受かるのか、ということに不安を感じることがあるかと思います。
ただ、試験勉強を継続していくと、『自分だけ』が落ちないために、大きな失敗をしないことが何より大事だ、ということに気づくことになります。
過去問の再現答案や優秀答案と呼ばれるものを分析して明らかになった合格ラインを意識して、ひたすら勉強していくと、他人との勝負という感覚は消えて、自分との勝負という感覚になると思います。
自分の中で、最大限に勉強しなければならない、と私は思います。
数値上は、余裕で合格した人間でも、当事者の心理としては、余裕ではないと思います。慢心していると、簡単に成績は落ちていくからです。

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後輩
試験に向けた心構えとして、とても重要なことを聞いたと感じております。貴重なお話、ありがとうございます。

先輩
私も大学生の頃、法学部の授業を受けていました。
その際、大学教授が講義でお話されていたことは、司法試験の勉強と直結していない、とよく思っていました。
そして、今でも思っています。
特に印象に残っているのが、某大学教授は、『法律家として、かくあるべき』というような心構えのようなものについて、よく話題にしておられた、ということです。
当時は、『それは特に、熱くのたまう必要性は無いのでは…』と思っていました。
しかし、勉強を進めていくうちに、何となくですが、その意図が分かるようになってきました。
法律というものは、究極的には社会を妥当な方向へと導くものだということが、勉強を継続するにつれて強く思うようになりました。法律の適用により、心理的、社会的、経済的にみて妥当な結論を目指すために、法律というものが存在するのであって、もしも杓子定規に法律を適用して、(心理的、社会的、経済的に)著しく不当な結論になるのであれば、法律の解釈によって妥当な結論にもっていく、ということが大事なのだと実感するようになりました。
逆説的ですが、法律の勉強以外の何かに打ち込んだ経験が、法律家としての仕事に役に立つと、感じております。

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