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大量の商品から欲しい商品を見つける情報アーキテクチャ

ネットショップへの集客を考える時に、ショッピングモールに出店するというのがまず一番最初に思いつくことであるが、ショッピングモールとは一体何か?と言うのをちゃんと語れる人は少ないようだ。

それぞれの情報導線にどういうメリット・デメリットがあって、それぞれに向いた商材というのは何か?をちゃんと考えて適切な導線を選びたい


第一世代 ショッピングモール / リスト型 (抽象化されたカテゴリによるブレークダウン型のUI)

カテゴリは、サービス提供者側が用意した「カテゴリ」で商品をナビゲートする最古から定着しているユーザインターフェースである。

言うなればイオンモールを歩くような行為がカテゴリを探す行為で、フロア案内とお店の外観から想像されるものが「カテゴリ」ということになる。

メリットは適切なカテゴリであれば利用者が自然にカテゴリを選択できることで、デメリットは事業者目線のわかりにくいカテゴリを設計すると、利用者が迷ってしまうのと、大量のカテゴリがあると、情報の整理の難易度が高くなってしまうこと。

カテゴリ階層は、3階層ぐらいがユーザーの認知や操作する手間を考えても限界なのと、パンくずリストなどの行き来しやすいインターフェースがAmazonから提案されるなど、カテゴリの歴史は古い。大量の商品を販売しているAmazonや楽天市場がどのように情報を整理しているのか?というのは研究に値する。

1階層目のカテゴリから徐々にブレークダウンして、3階層目まででどこまでの情報が整理できるか?が鍵である。言い方を変えると、3階層ぐらいで整理できない商品郡にはカテゴリのみのインターフェースは不適切なのかもしれないので工夫を凝らす必要がある。

ちなみに、図書館学やインフォメーションアーキテクチャなどと言われる分野では、このカテゴライズの話が語られる。大企業のWebサイトを設計する大手Web制作会社であれば、大量の事業群や商品群の情報を整理するIA(情報アーキテクト)という職能の人がこの辺を専門的に携わってくれる。つまり、カテゴリの設計はそのサイトの使い勝手に影響するし、売上に影響が出るものなので、ユーザ目線でちゃんとやりましょうねということである。

第二世代 ショッピングモール / 検索型 (利用者による能動的なキーワード検索)

いわゆる検索窓である。ショッピングモールは、主にカテゴリと検索窓で構成される。それに加えて特集などが運用されているのがサイト構造の特徴である。

1990年代後半に、それまでの主流だったカテゴリ+検索キーワードによる絞り込みだった検索サイトに対して、Googleがたった一つの検索窓で勝負して天下を取ったのは記憶に新しい。

Googleに検索されやすいサイト構造になっていれば、上に書いたカテゴリの設計が少々まずくても、コンテンツに直接アクセスしてくれるというのが、コンテンツの文章をしっかりSEO対策しましょうなどと言われる検索エンジン最適化につながり、これそのものが検索型を活用するメリットとなる。

デメリットとしては、適切な検索キーワードを購入者が思いつかないといけないので、ブランド名や、わかりやすい商品ジャンルなどは検索されやすいが、ニッチなジャンル、抽象的な商品や、これから有名になるブランドは検索されにくいという鶏卵の話が生まれる。

また、何より利用者の検索キーワードによるリテラシーに依存する。検索キーワードの「深さ」がないと表面的な情報にしか到達しない。表面的な情報にはSEO対策された広告コンテンツなどのコンテンツがヒットすることが多く、検索されるための競争が激しい。

よくエンジニアの間では、適切なキーワードが思いつかないことで、この辺のリテラシーがない初心者ほど開発力に対する問題解決能力が低いというのはよく言われることである。逆にそれほど知識の蓄積がなくとも検索エンジンを活用する地頭の良さでカバーできる時代になっているとも言える。

また、例えば、自分の名前や会社名などを工夫して、どれだけ検索結果の上位に表示されても、それを検索してくれる利用者がいなければ、ただの自己満足に終わるという代物で、やはり検索されやすいキーワードにSEO対策を寄せていかないといけないという意味で、検索連動型広告のコストも上がりがちで、これはこれで資本力が求められる限界があるものである。

同じく、テキストで検索されないといけないので、ビジュアルに訴えるものは向いてない。例えば、無名な個人が作るハンドメイドアクセサリーなどは、とてもじゃないけどGoogleや大手ショッピングモールで検索するのは不可能である。現実的に検索可能な商品属性には限界がある。

第三世代 SNS型(魅力的なフロントエンドの行動履歴に基づく商品リコメンド)

これまで書いたとおり、汎用的なショッピングモールや検索エンジンは、ニッチな商品、抽象的なカテゴリ、ビジュアルに訴える商品に対する訴求力は低かった。スペックやブランドで検索可能なものに「売れる商品が偏っていた」と言っても過言ではない。

それに対して、いわゆるロングテール型な商品群(ハンドメイドアクセサリーや、提案型商品のような抽象的なカテゴリ、検索しにくいけど、ビジュアルで訴求する小ロットなファッションなど)が売れるようになったのがSNSなどの魅力的なフロントエンドに連動して、商品が提案されるリコメンド型である。

利用者の好みにあわせて、AIが類似の情報を自動的に検索してくれるのと、利用者は商品を探しに来てるわけじゃなくて、そのサイトで友達がやインフルエンサーが発信したコンテンツを楽しんでところに絶妙に商品広告などが差し込まれて、ついで買いを促すという構造にある。

この横から目線というか、友達感覚、憧れのインフルエンサーを応援する目線感、少なくとも誰だかわからないエリートから上から目線で情報を投下されるのではないという情報構造こそが、たとえ小規模店舗だったとしても、商品への共感を通じて、横から目線でファンを生むために必要な構造で、大手企業の大規模な商品群のマス向けのアプローチでは訴求できない逆転の構造を生み出している。

そしてこの辺の感覚にインターネット特有のメリットを感じられない人が、ショッピングモール型とSNS型の違いに気が付かない。マスメディアからWebメディア、テレビではなくYoutube、大手宅配店からUber Eatsなど、ここ20年でインターネットの強さは、新たなニッチから始まり、それまでの権威に対するオルタナティブとして徐々に存在感を大きくしてきた。

そして、このAIによるコンテンツ間の距離を近づける技術に異様にすぐれていた企業が、いわゆるGAFAをおりなす、Meta(Facebook)社とGoogle社である。特に日本においてはInstagram、Youtubeが幅広く定着していて、この形式に向いた商品販売の有力誘導元になっている。

ショップオーナーは、Instagram等のアカウントを運用して直接ファンを増やしたり、広告出稿などを通じて誘導導線を得ることができる。情報発信の仕方をブランディングとして捉えて、SNSを適切に運用する。

この効果を知りたければ、Twitterのサブアカを作って、特定のジャンルの情報発信者だけをフォローするアカウントを作ってみるのが簡単である。Twitterもいつしかリコメンド型に変わっているので、その商品ジャンルの情報発信者がどんどんリコメンドされてくるハズだ。

まとめ

これらの第一世代から第三世代までの手段は、どれも有力なコンテンツへの誘導導線である。一方で、商品の特性にあわせて、向き不向きがある。ショッピングモール向きの商品群もあれば、SNS向きの商品群もある。大手企業の消費財などの商品であればあるほど、テレビCMなどを利用して商品名などのブランドワードを訴求し、検索されやすい状態を作り、ネットスーパーやAmazonなどのショッピングモールで売るだろうし、逆に資本力が小さくて、これから知ってもらう立場であれば、インスタグラムなどのSNSで自分たちでファンを増やして自店舗への誘導を生み出すことが現実的な成功手段となる。

多くの人が「なんとなく大手ショッピングモールに出品すれば成功するのではないか?」と考えがちであるが、モールにはモールに向いた商品との競争が存在するので、そこで勝ち抜かなければショッピングモールの恩恵は受けにくい。何より漠然とモールに期待する人は「モールそのものが商品で、集客はそこから買うもの」という意識が足りてないケースが多い。上の図で表示された商品に対して「リスト表示されてユーザに選ばせる」と書いたとおり、ただモールに出店するだけで売れるわけではなく、上位表示されるためにモール内で競争があるということ。その原資が必要なこと。そもそも検索されないと表示機会すら得られないこと。

ひたすら広告宣伝費をかけて上位表示をゲットし、商品在庫を薄利多売で回しまくるという商売と、自分たちが作りたい商品を少量作って、ファンの人だけに買って欲しいというビジネスでは、組織構造、価格設定、利益率、そして適切な集客手段は変わってくるのは直感的にもわかるであろう。その後者がインターネットにおいても成り立つようになったというのが、現在おきているイノベーションである。

もしも、集客を買わなくても良いとしたら、それはコンテンツ特性がユーザ層と折り合っていることが前提となる。その世界(Webサービス)で評価されると調達コストが下がるという、かつて岡田斗司夫氏が提唱していた評価経済社会に語られている恩恵を受けられる。それ故に、SNS型にはSNS型に向いている商品の打ち出し方があって、それに成功したショップには新しい可能性を開かれるよねと言う理由になる。その指標が、SNSのフォロワ数、Youtubeのチャンネル登録数というストック情報に支えられる。

(ただし有益なフォロワじゃないと意味がないし、フォロワであることには期限があるので、常にフレッシュにしていかないといけないし、数字だけ追いかけてフォロワーを買うなどは無な行為である。嘘でブランディングはできない時代ということだ。)

今後も新しい商品情報へのリーチの手段が増えていくことで、インターネットで買われる商品の幅が増えていくことになる。TV CMを活用するメガブランドではなく、ニッチブランドでも、自分たちのブランドを大切にする商品を訴求することができ、ちゃんと自分たちの生活も成り立つ世界は、間違いなくインターネットに伴う技術の進化に支えられている。そして、そういうプレーヤーが一躍有名になることで、新たな人間の行動変容を生むという流れは非常にインターネット的で面白い。






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