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友尚は最後まで阿選の麾下と思っていたのでは・・・?

『白銀の墟 玄の月』四巻348-349項
友尚と士真のやり取りから。

「・・・・・・あとを頼む。これで全てが終わりではない。必ずいつか阿選は倒さねばならない。国と民のために」
 はい、と士真は頷いた。
「そのときに働いて、追い掛けてこい」
 言って、友尚は士真を見つめた。
「――いいか?お前が来るときには、必ず阿選様をお連れするように」
必ず主公(あるじ)の首を取れ。
「それが我々麾下の務めだ」

のくだり…。

意味をちゃんと捉えていなかったのは、私だけかもしれないので、今更かもしれませんが、友尚の「追い掛けてこい」というのは、”死んであの世”に追い掛けてこいということだと思います。あとを頼むと言っているし、死地(鴻基)に向かうと決断した四十数名の中に友尚も含まれるので、友尚がこれを語った時は、生きて還ることを前提とはしていない。

なので、お前(士真)が(あの世)に来るときには、阿選も(殺して)連れてくるように…と。主公の首を取れと。

気になるのが、この時、また「阿選様」と言っているんですよね…。その後も、連れてこいではなく、「お連れするように」と…。阿選に対して敬意を払ったままの言葉なんですよね…。

友尚は阿選に驍宗謀反の計画を事前に聞いていたら、止めたかもしれないけれど、従ったというような事を言っていたので、信用されていなかったのか…という点や、国や民を害する阿選の行動などで、心が離れたのだと思っていたのですが、私情では最後まで阿選の麾下だと思っていたのではないかと感じました。

忠義や義理を通す主公(阿選)でいてほしかった、そうでない主公には「従っては行けない」がそうであった主公を守りたい(ニュアンスが違うかもしれません。うまく適切な言葉が出てこないのですが)…というのは、芳国月渓の心情に近いのでは…。

本来なら道を踏み外すことのないようにするのも「麾下の務め」というように捉えていたのであれば、自身にも責があると考え、道を踏み誤ってしまった阿選を殺すのが、「我々(阿選)麾下の務め」というふうに言ったのではないか…。

だとすると、もう「従っては行けない」とは独白していたけれども、「従っては行けない」=阿選の麾下を辞めた、とはしていなかったのでは…?この言葉を聞く限り、最後まで友尚はあくまでも自分は阿選麾下として見ていた気がする。

そういうふうに私は捉えて、すごく切なくなったし、友尚を更に見直したというか…。麾下と主公の関係は十二国の世界ではかなり深いものなんだ…と改めて感じたりもした。月渓は自ずから死ぬことはなかったけれど、恵侯や弑逆の先導者という肩書や、王を弑して残された民を救うという責務などがなければ、本来は自分も主公と同じ様に鬼籍に入ってしまいたかったのではと思う。友尚も自分が生きて単に道を失った主公を殺めようとは思っていないから、士真に追い掛けてこい…とまで言ったのだろうと思う。

なので、阿選に反旗を翻した形にはなったけれど、本位は自分が信じていた主公(あるじ)の姿を守るため、そういう形を取って、自分も殉じる覚悟で自分が信じていた阿選の姿ではない阿選を止める(=殺す)ため、霜元らに与したのでは・・・と考えるのは、飛躍しすぎているだろうか…。

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