地方が都市に“勝つ”方法

最近「地方創生」という言葉を耳にする機会が増えました。

よほど地方が都市部と比較して活気がなくなってきているということが感じ取れます。

私も岐阜県出身であり、現在は静岡県に住んでいるため、東京に行くたびに人・建物に圧倒され情報が集約しているなと感じます。

私が特に都市と地方の差を感じた機会は就職活動でした。

就職活動の時に自分の将来についてビジョンが描けている人の割合が地方ではかなり少なかったんです。

情報が集まり、その実態を近くに感じられる都市部では自分のビジョンを描けている・将来起業したいなどといった優秀な学生が多く、地方にもいるとは思いますが少なくなっているようです。

地方の優秀な学生もチャンスを求めて都市部に就職する人が一定数いるでしょうからますます地方に暗雲が立ちこめます。

では地方は都市部とどのように立ち向かっていけば良いのでしょうか。地方が都市部のように発達するにはどうすれば良いんでしょうか。

狭い視点からですがお話ししていこうと思います。


そもそも地方って都市に劣ってるの?

結論から言うとNOです!

まず日本の都市も世界と比較すると劣っているという認識が必要です。
都市の代表格「東京」は言わずもがな世界最大の人口集積地、消費地、大企業や学術研究機関の集積地です。

しかしそれらを活用してアメリカのシリコンバレーに匹敵するようなイノベーション、スタートアップ企業、ユニコーン企業を生み出せませんでした。

東京都や首都圏もまたイノベーション、クリエーションを創出する空間としてその本来持っているポテンシャルを開花させる必要があります!
(そのためには世界銀行のDoing Business 2018の「起業のしやすさ」の指標において世界190カ国中103位と評価された日本の事業環境の改善が不可欠です。)


そして注目すべきはイギリスのTimes Higher Education(THE)の世界大学ランキングにアメリカの172校に次いで日本の大学103校がランキング入りしている点です。
地方の大学も世界的に高い教育・研究水準にあるということが日本の特徴です。

また日本学術振興会の科学研究費は東京大学・京都大学だけで21.6%を占め(2018年)、その他首都圏と関西圏の大学に集中しています。

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これは一見地方にとって不利に感じる例ですが、実は論文の生産性(論文当たり、被引用回数当たりの科研費の少なさ)は地方大学が圧倒的に高く、質の良い論文を生産しているということになります。

地方は都市部に比べて教育や技術が劣っているわけではないんですね!


日本の地方の強みは何?

そもそも日本の場合、研究開発費の20%以上は自動車産業に投資されているため、医薬品・医療機器・航空宇宙・ICTなどの先進国型の産業は弱く、日本企業の収益に結びついていません。

しかし、日本の地方には長年にわたって工場が分散されており、最新鋭の製造拠点が存在しています。

日本の強みは、地方の地場企業も高度な生産技術、加工技術、高い研究開発力を有しているところです。そして先ほど述べたように優秀な地方大学もあります。

地方企業に不足しているのは、新事業新しい取引先新しい人的ネットワーク海外市場へと一歩踏み出す勇気ではないでしょうか?

ここからはそんな高い技術力を持った地方が地域産業として成功している事例を挙げたいと思います。


進化する神戸医療産業都市

◆復興からスタートした神戸医療産業都市
1995年に発生した阪神・淡路大震災から神戸の経済再生・復興を模索する過程で神戸医療産業都市が生まれました。

震災で「命の大切さ」を知った神戸が、市民の命を守り国際社会に貢献するために先端医療技術の研究開発拠点を整備し、21世紀の成長産業である医療関連産業の集積を測っています。

◆経済効果
集約都市形成が進むにつれて雇用者数も約11,000人(2019年3月末)に増加し、市内経済効果は2005年の409億円から、2010年には1,041億円に、さらに2015年には1,532億円に増加しました。

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◆将来像
最高水準の医療が快適に受けられる神戸にすると同時に、先端医療でグローバルに貢献する神戸にすることを目標としています。

日本最高水準の医療が集約している街、神戸。他の都市との差別化が図れており、経済効果も抜群ですね、、!


クリエイティブ地方都市福岡

2016年にはMONOCLEの「世界で最も住みやすい都市ランキング」で第7位、2017年には野村総合研究所による「成長可能性都市ランキング」で第1位に選ばれるほど注目されている福岡市。
その秘密は何でしょうか?

◆福岡市の利点、クリエイティブ資源
①コンパクトシティ
人口約150万人で経済界のトップと起業家の距離が近く創業しやすいです。

②交通の便の良さ
国際空港が福岡都心から約10分、その他新幹線、高速道路網も整備されています。

③アジアへの近接性
アジアに近く在留外国人数も進展しており、多様な文化交流があります。

④ハイレベルな大学の存在
九州大学、九州工業大学などがあり優れた研究力・成果を持っています。

◆スタートアップ都市実現に向けたリーダーシップ事業
しかしこれだけの条件がそろっていても挑戦できる風土までもがそろっているとは言えません。
そこで福岡市はベンチャー企業の起業を活発化させるためにリーダーシップを推進する事業を行っています!

例えば国家戦略特区「グローバル創業・雇用創出特区」の指定、起業相談などの支援を行う「スタートアップカフェ」の開設、新サービス実用化のための実験の場として「実証実験フルサポート事業」などが行われています。

中でもベンチャー支援の総合的サービス施設「Fukuoka Growth Next」の開設は100社を超えるベンチャー企業が利用登録し、毎月20~30研のビジネスセミナーが行われています。
開設1年間で入居企業の資金調達は37億円に上り、注目度が上がっています。

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大学では学べないような若者のビジネスの教育を市が行うことで、起業へのハードルが下がり挑戦しやすい社会が作られているなと感じました!

福島の医療機器クラスター

福島県は国内屈指の「医療機器生産県」であり、東日本大震災からの復興を期して策定した新産業創造プロジェクトとして「医療関連産業の集積」を位置づけています。

◆新規参入企業支援
新規参入企業には医療機器産業界における商慣習や医療機器開発の進め方に対する理解を深めてもらうため、研究会への参加を促しています。
福島県では、薬事セミナー、薬事個別コンサルテーション、試作品作成費助成金、医療機器メーカーとのビジネスマッチング、展示会出展、開発エンジニアの人材育成など開発ステージに応じて企業が柔軟に利用できる事業を展開しています。

◆メディカルクリエーションふくしま
「メディカルクリエーションふくしま」とは福島県内で開催している展示商談会で展示企業は200社を超えています。
ここで県外、または海外の最終製品メーカーとの商談が進むようになりました。

医療機器関係者と交流するこのような展示会が国内で認知され、海外からも注目されるようになったのは大きな一歩と言えます。


少子高齢化が進み、医療機器はますます身近になっていくと思います。福島を拠点に日本の医療機器の性能向上によって、さらにグローバルな事業に発展していくと嬉しいですね!


大切なことは一歩踏み出す勇気

これまで挙げた3つの街では今持っている地方としての強みをどうにかして活かそうと工夫してきたことが分かります。
新しく何かを始めるのではなく、今ある価値ある財産を活かすことが大事です。

大切なことは地方の強みをもっと知ってもらうにはどうしたいいか思考すること、そして実行する力です。
政府や地方自治体、地方の中小企業に任せるのではなく、あなた自身が地方に住む一員として考え行動することが必要とされています。

きっとあなたが住んでいるその街も世界に名を轟かせる都市になれる可能性を持っていますよ。

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