今月の銭湯
シンプルで研ぎさまされた清潔な空間に、どこか親しみ覚える世田谷区に残る憩いの場 ”新寿湯”
昭和41年にから営業され、今年で創業53年目になる世田谷区を代表する銭湯。綺麗好きで、職人肌気質の横山さんが経営するこの銭湯は非常に丁寧に掃除が行き届いており、53年という歴史を感じさせないほど清潔である。昔、保健所から来た役人も、銭湯の裏に非常によく整理された積んである薪を見て「このお店は見なくても大丈夫だ。」とそこで判断されて帰られたという逸話あるほどの折り紙つきである。銭湯に行ってみたいけど、少し抵抗のある若い方にも、とても開放的かつ下北沢からも近くリラックスするのにピッタリな場所だ。
Pile up ordinary days to be a FROW
映画に出てきそうなくらい仲睦まじい夫婦が、そのお二人で新寿湯を今日も利用する人々へ至福のひとときを提供している。
東京オリンピックの影響もあり、新寿湯でも日本人以外の利用客を増えているようだ。横山さん曰く、何を言ってるかよくわからなく、困ってしまうこともあるみたいだが、スマホの機能などを駆使し、英語と中国語、ロシア語くらいならなんとか対応ができるそうだ。気になる旅行客の利用方法は、「みんないい人、それなりに勉強してきているからね。」と新寿湯はどんな方にもアットホームな空間であった。
そんな二人も、昔と比べて身体面で何かと不自由なことも増えてきて、何度かやめてしまおうかという会話も何度かあったようだが、次をやる人もいないし、お客さんから辞めないでくれとの要望が多くなんとかここまでやってこれたそうだ。今年の10月から、銭湯の利用料金でも増税することが決まり、水道代などのコストもキリなく上がってきていろいろ大変だけど、なるべく値上げしないように続けていきたいと話していた。
番台にいつもいるお母さんは、いつもニコニコして利用者を和ませてくれる。お母さんのファンが多いのも不思議ではない。お父さんは非常に器用な方で、お母さんの代わりに料理、掃除全て担当しており、昔は銭湯ダンナーズとして尺八や三味線などで一時期、ラジオやイベントで引っ張りだこだったそう。尺八だけではなく、法螺を吹くのも上手とジョークもいうお茶目な一面も持つ。
銭湯だけではなく、この二人に会いに行くってのもいいかも。
そして、10月28日”第28回世田谷区ふろ祭”といった魅力的なイベントが開催されるようだ。当日に訪れた利用者の方対象に、世田谷区の各銭湯にて先着順にくじが引くことができるようだ。1等には世田谷区内共通商品券(各店5,000円×2本)、2等 共通入浴券(各店5枚分×10本)、3等 1010記念タオル(各店140本)、そして各銭湯で用意されている当店賞というのも用意されているようだ。もちろん今回取材させて頂いた新寿湯さんでもこのイベントの対象の銭湯になっている。
日常的に銭湯に訪れることがあまりない方には、すこし驚かれることかもしれないが、実は取材させて頂いた新寿湯のある世田谷区は、現在26ヶ所もある銭湯激戦区である。そして同時に、東京都浴場組合、世田谷区浴場組合などの組織が年間を通して、さまざまな試みをしている非常にエンターテイメントの富んだイベントを開催されている。現銭湯ユーザーと新規銭湯ユーザーを巻き込む面白い取り組みのおかげで、これまでサブカルチャーに翳りつつあった銭湯文化が現在、比較的若い層の方にもハマるようになり銭湯業界が息を吹き返しつつある。
新寿湯 information
営業時間 15:30〜24:00
休日 月曜日(祝日を除く)
シャンプーリンス、ボディソープ、無料タオルの貸し出し 有
住所:東京都世田谷区代田5丁目11−7
小田急線 世田谷代田駅より徒歩4分 下北沢駅より徒歩8分
京王井の頭線 新代田駅より徒歩5分
場所 新寿湯
編集 伊東孝司
撮影 原田圭輔
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