家長昭博〜天才よ、舞い上がれ〜
「天才」というと、誰を思い浮かべるだろうか。
パッと思い付く「天才」と言えばレオナルド・ダ・ヴィンチか。
あの誰もが知る「モナリザ」を描いた天才画家。なんとIQは200前後と言われているらしい。
筆者は昔IQサプリというクイズ番組で、IQ70以上の問題を解けたことがなかった。
そう考えるとレオナルド・ダ・ヴィンチがどれほど驚異的なIQの持ち主かってことが分かる。
もしIQサプリにレオナルド・ダ・ヴィンチがゲストで出る回があれば、問題は全てあっさりと解かれ、伊東四郎はモヤッとボールを頭に被らないで済んだであろう。
まぁそんな19時からIQサプリ、20時から平成教育学院だった古き良き時代の話はさておき、サッカー界にも「天才」と呼ばれる人たちが大勢いる。
例えば「リオネル・メッシ」
バルセロナ通算600ゴールとかいう意味がわからない記録を打ち立てている天才。
もう説明不要だろう。彼の左足は世界中の人々を魅了し、世界の名だたるDF達を恐怖に陥れてきた。
何故今メッシの名前を出したか。
それは、せっかく去年カンプノウまで試合を観に行ったのに、撮った写真の使い道が全然ないからだ。
こうしてnoteに無理矢理差し込むことによって、これらの写真を使って行くことができる。
ただそれだけの為に、名前を出した。まぁ、天才であることに変わりはないのだが。
天才の条件
そんなレオナルド・ダ・ヴィンチやリオネル・メッシのことを人々は「天才」と呼ぶが、一体「天才」とは何なのか。どのような概念なのか。そもそもよく分かっていない。
まずは天才の条件を調べてみた。
…難しくてよく分からなかった。
気を取り直して、天才の特徴を調べてみた。
ほぉ、これなら分かりそうだ。
天才の特徴①
「興味があることに対しての集中力が凄い」
これ、大体の人間に当てはまらないか?
興味があることに対して注意力散漫な人間がいるのであれば、逆に見せてほしい。恐らく私はそんな人のことを「天才」と呼ぶ
天才の特徴②
「マイペースで自分のリズムを崩さない」
なるほど。これは面白い。誰かに合わせる、誰かの目を気にするのではなく、ずっとベクトルは自分自身に向いているということか。
「遅刻してないから別に言わないけどさ、いつも家出るギリギリに紅茶淹れるじゃん?あの時間なければもうちょい余裕生まれると思うんだ。」
と言われて先日彼女に振られた筆者は恐らくマイペースだ。
ぐうの音も出なかった筆者はとっさに
「お前が化粧をして美しくなるように、男も紅茶を飲んでカッコよくなるんだよ。」
と言った。人間焦るとよく分かんないことを口にしてしまう。イギリス人代表みたいになってしまった。フィッシュアンドチップスが食べたい。サンダーランドこそ我が人生。
天才の特徴③
「能力が一番活かせる場所を知っている」
天才と呼ばれる人たちは、自身が「天才」と評される場所を知っているということか。
確かに、レオナルド・ダ・ヴィンチがサッカー選手だったらここまで評価されていないだろう。(ヴィンチさん、偏見で語っています。ごめんなさい。)
リオネル・メッシが画家だったらバロンドールを何回も受賞するほどの功績は残せていないだろう。(こちらも偏見だが、これに関しては何故か自信を持ってそう言える。理由は分からない。)
つまり、これら3つの条件が「天才」である条件ということだ。
なんか、人類の殆どの人が当てはまりそうだがまぁ「最低条件」ということだろう。
我が溺愛、心のクラブ世界最高ファンタスティックフットボールクラブ川崎フロンターレにも「天才」と呼ばれる選手がいる。
カブレラ?それは「根菜」だ。
何?つまらないこと言ったから謝れって?「ごめんなさい」ってか。
…さぁ、気を取り直して。我が軍の天才といえばそう、家長昭博であろう。
2017年シーズンに加入した家長は今季で4年目。
圧倒的なフィジカルとテクニックで川崎の右サイドに君臨。
そのプレースタイルは誰も真似することができない。まさに「天才」的プレースタイルである。
そんな家長を紐解きながら、2020年シーズンを占って行こうと思う。
輝いた2018年
「家長昭博」といえば、語らなければならないのは2018年シーズンであろう。
2018年シーズン、家長は圧倒的なキープ力を武器にリーグ戦連覇の立役者に。
個人としてもMVPに輝き、最高のシーズンを送った。
そんな彼のプレースタイルは「時間を止める」ことである。
サイドのスペースでボールを受け、相手と対峙する。相手DFからすればボールを奪いに突っ込めばやられるし、かと言って引けばパスを出される。
時間にしてほんの1〜2秒だが、恐らく対峙した彼らは相当長い時間に感じているだろう。
家長がこの「セクシースペース」でボールを受けるまでの間に大きく関与しているのが「エウシーニョ」である。
エウシーニョはまず、サイドの低い位置でボールを受けるとスルスルとかわし、一旦ボランチの選手にボールを出す。
ここからは彼の一番楽しい時間。
まるで授業終了のチャイムと共に外に飛び出す小学生のように、ビルドアップが完了すると相手ゴールに向かって走り出す。
低い位置にいる家長に対してエウシーニョはその段階でボールを当てる。
家長がキープをしている間にエウシーニョは幅を取りつつポップステップランニング。
家長は殆どの場合、このサイドに突き出したエウシーニョは使わずに中央の選手を一度使う。
この、何気ない横パスこそかなり重要なパスなのだ。
横パスは「逃げ」のパスとそうでないパスがある。
家長が中央の選手にボールを渡す横パスは「攻めに転じる前の横パス」なのである。
横パスの最大のメリット、それは「相手の目線をズラせること」である。
どういうことか。例えば、海に行ったとする。
目の前にナイスバディのお姉さんまたはムキムキのお兄さんがいるシュチュエーションを想像してほしい。
その人が自分の目の前をスーッと小走りで横切っていく。
今、あなたはナイスバディのお姉さんもしくはムキムキのお兄さんを目で追ったであろう。
つまり、そういうことだ。
参考画像:昨季CL決勝で乱入したお姉さん。
ほら、ファンダイクが思わず見て…いやお姉さんファンダイクの裏取っちゃってるよ!!!ちょ、見てwマジかwwwお姉さんww裏取っちゃってるwwwwwやべぇ面白ぇwwwwww
…さぁ、気を取り直して。縦パスは効果的ではあるが、相手がケアしている状況では入れても突っかかってしまう。まぁ、当たり前であろう。
縦パスを入れるためには、相手に「ケアされていない」位置にボールを入れる必要がある。そのためには「ケアされていない場所」に受け手の選手が居なければならない。
これらの話をまとめると、縦パスを警戒している相手の目線をズラすため、一度横パスを入れることによって相手の目線はボールに集まる。
サイドの選手は、この瞬間を絶対に見逃さない。
彼らは特殊な訓練を受けているため、幼少期から「3人目の動き」というものが刷り込まれている。
横パスが入った瞬間、相手の目線が一瞬ボールに釣られた瞬間に裏を突き、ボールを呼び込む。
2018年シーズンの我が軍に落とし込むと、まず低い位置で家長が手で相手との距離を取りつつボールを受ける。
ボールを受けた家長は、一旦バックパス。エウシーニョの理不尽スルスルドリブル後、再度ボールを受ける。
ボールを受けた家長は、スピードを上げられる場面であっても一度ボランチに横パス。
横パスが入った瞬間に、既にエウシーニョは駆け出している。ボランチ→高い位置をとったエウシーニョへの配給というシーンはもうお馴染みであろう。
そしてエウシーニョは鋭角に入ってきた家長と再度落ち合う。
ここでも2人は細かいパス交換をしながら、右サイドを制圧。
そして、家長は「セクシースペース」へボールを持ち込み、相手と対峙する。
ここからはよくハイライトで見る「ギュンッ!」と縦に抜き切る家長のお家芸を披露。(この時既にエウシーニョはCFの位置に。)
ついつい我々は見落としてしまうが、これらの手順を踏まえて家長は右サイドを自分色に染めていく。
家長とエウシーニョは2018年のフロンターレに於ける最強コンビだった。
彼はよく左サイドにボールがあるとヘルプに行き、そのまま左サイドでプレーし続けることがあるが、今回は右サイドにフォーカスを当てて話を進めていく。
ビルドアップから最終局面まで、まさに2人で1つ。地元(右サイド)じゃ負け知らず。修二と彰ならぬ、エウシとアキ…今のは無しでお願いしたい。
エウシとアキ(お気に入り)、試合中はかなりお互いに意見をぶつけ合っていたらしいが、サッカーをやる上では殴り合ってでも想いを擦り合わせるのは重要なことだ。
筆者も現役時代、紅白戦で失点をするたびにCBと「てめぇ!!やる気あんのかよ!前出てこいよ!!!」「どう考えたっててめぇのミスだろ!お前んところでやられてんだよ!自覚しろよ!!」と言い合っていた。
まぁ、そんな筆者も元カノの前では「はい。」と「ごめんなさい。」しか言えない「大きめのチワワ(元カノ命名)」となっていたが。
そんな話はどうでもいい。つまり、家長がぐんと調子を上げた2018年シーズン後半。その活躍の陰には家長のプレーに合わせて走る「エウシーニョ」の存在があった。
苦しんだ2019年
そんな華々しい2018年シーズンが終わり、迎えた2019年シーズン。
家長を1つの出来事が襲う。
そう。エウシーニョの移籍。
エウシーニョが移籍したことにより、エウシとアキは解散。「サイドをプロデュース。」はシーズン3で打ち切りとなった。
相棒を失った家長は苦しんだ…ように、見えた。
果たして、本当にそうだったのだろうか。
もちろん、2018年後半に比べて彼自身のコンディションが好ましくなかったのは事実だが、彼がやろうとしていたことは2018年と2019年でそんなに変わっていただろうか。
エウシーニョの移籍により、組み立て〜最終局面まで"喧嘩をしながらも"彼のプレーを理解し、彼の求める場所でボールを引き出せる選手が居なくなってしまった。
2018年シーズンに家長が入れた横パスと、2019年シーズンに家長が入れた横パスの彼自身の狙いは間違いなく一緒だ。
しかし、そこにエウシーニョの姿はなかった。
それ故、彼のプレーは消極的で、プレースピードを下げてしまっているように"見えてしまった"のである。
しかし、そんな家長が本来の動きを魅せた試合も2019年シーズンに数試合あった。
特に印象的だったのが、サイドバックに守田がいたアウェイ湘南戦だ。
この試合終了後のインタビューで守田が「とにかくエウソンを意識した。エウソンがやるプレーを心がけた。」とコメントしていた時、僕の中ではこの仮説は確信に変わった。
「家長は決して絶不調なんかじゃない。」
家長は「居て欲しい位置」に居て「出して欲しい位置に出す」選手だったエウソンを失った。
周りの選手と連携を取りながらリズムを生み出す彼は、全てを0から積み上げることになった。
それなのにチームの右サイドバックはいつまで経っても固まらない。誰かが毎試合取っ替え引っ替え出てくる。
それでは連携面の向上は見込めない。
2019年シーズンは家長が1番辛い思いをしていたのではないかと思う。相当なストレスがかかっていたのではないかと思う。
シーズン後半、エウソンっぽい位置取りで、エウソンっぽい配給を心がけた守田がSBに入った瞬間コンディションが上がったように見えたのは決して偶然ではないはずだ。
そして、チームもシーズンノーゴールだった家長を残留させた。年俸1億。通常なら移籍となってもおかしくはなかった。恐らくチームも彼を取り巻く環境を理解していたのだろう。
天才よ、再び舞え
そんな苦しい2019年シーズンを終え、迎えた2020年シーズン、チームは右SBに山根、ジオゴ・マテウスを獲得。
現状2試合は山根がスタメンだった。
山根の第一印象は「エウシーニョっぽさ」である。
位置取りや配給のタイミングはまさにエウソン。
それ以上に筆者が似ていると感じた部分は「ドリブル」だ。
エウソンのドリブルはスルスルと相手を剥がせるが、決して「派手なドリブル」ではない。
ボールを晒しつつ、膝から下のみでボールタッチをするのが彼のドリブルの特徴だ。
ボールを晒しながらのタッチなので、相手DFからすれば「あっ、奪えそう」と感じるはずだ。
そう思い相手DFが足を出した瞬間、エウソンはびっくりするくらい柔らかい足首を活かしてスルッと交わす。
山根のドリブルもまさにそんな感じであった。
彼なら、家長が「居てほしい場所」に入ることができ「出してほしい場所」にボールを出すことができる。
もっと言えば、山根自身も家長を「居てほしい場所」に居させることができるだろうし、家長から「出してほしい場所」でボールを受けることができるはずだ。
何故なら、彼らのイメージは恐らく「同じ」だからである。
エウシーニョっぽいヤマネーニョの登場は、間違いなく家長にとって追い風であり、相乗効果が期待できるものである。
家長はしばしば左サイドに顔を出すが、今季の川崎ではそれらの機会はおそらく減る。
コンパクトに保ち、陣形を崩さないまま決め切るのが恐らく鬼木式4-3-3だ。
そんな家長に求められるのは、もちろん右サイドでの輝き。
冒頭に述べた天才の条件を覚えているだろうか。
「マイペースで自分のリズムを崩さない」
家長のリズムに合う山根の獲得が我が軍にとってどれだけ大きいか、言及するまでもないであろう。
今から予言しておこう。今季の右サイドは、再び川崎のストロングポイントとなる。
さぁ天才よ。舞い上がれ。
新しい相棒を手にした天才は、再びピッチを家長色に染めていく。
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