2020年アンビエント,ネオクラシカル振り返り

開設以来放置していたこの場所をようやく再起動。
2020年に発表されたアンビエントおよびネオクラシカル/ポストクラシカル音源でよく聴いた作品を羅列していく。先に断っておくと、ピアノサウンドが中心でネオクラシカル多めである。
アルバムから好みをピックアップしたプレイリストもいちようこちらに。


そもそもネオクラシカル/ポストクラシカルはここ十年ほどでじわじわ拡大している音楽区分であり、映画音楽やドラマ音楽との連関が強い。Nils FrahmやOlafur Arnaldsなどの大御所は国内でも徐々に認知されてきたものの、やはりジャンルとしての磁場は―少なくとも国内では―まだまだ微弱だ。そんな環境を少しでも好転させることが出来たら、その願いを込めて、素晴らしい楽曲たちをここからインターネットの黒い森に向けて半ば一方的に発信したい。


1. アンビエント系

 1.1 Pantha Du Prince - Conferences Of Trees

 1.2 Gigi Masin - Calypso

 1.3 His Name Is Alive - Return To Never

 1.4 offthesky - psalm of solum

 bandcampのリンク

1.5 Alaskan Tapes - Sleeping Since Last year

 1.6 Olivier Alary & Johannes Malfatti - U,I

以上6作がアンビエントのくくり。1.1,1.2はアジアの風を感じるテイストで共にアルバム曲にサンプリングされている鐘の音が心地良い。1.3はポストロックバンドHis Name Is Aliveの未発表音源を収録した2枚目となる。80年代のバンド録音らしく、ノイズ加減が神がかっている。1.4はbandcampで見つけた掘り出し物。Dust to Dustで一気に引き込まれ、20世紀の鉄道をモチーフにしたマーチまで購入してしまった。1.5は毎度丁寧なアンビエントを作り続けるAlaskan Tapesの新譜。そして1.6は今年一番聴きこんだであろう「U,I」。ビッグネームのコラボだが完全にノーマークだったため度肝を抜かれた。歪んだ弦の音と加工ボイスが未知の位相へ手をこまねていく。本能的に忌避すべき闇へ抗いがたく誘ってくるその様は、洋上のセイレーン伝説を想起させる。


2. ネオクラシカル系

 2.1 Tim Linghaus - VENUS YEARS

 2.2 Hania Rani - Home

 2.3 Stray Ghost - White Rose(EP)

 2.4 Alexandra Hamilton-Ayres - 2 Years Stranger

 2.5 Olafur Arnalds - some kind of peace

 2.6 Madeleine Cocolas - Ithaca

 2.7 Slow Meadow - By The Ash Tree

 2.8 Gabríel Ólafs - Piano Works

 2.9 Danny Clay - Ocean Park

 2.10 Jordane Tumarinson - Le premier chant / La Bascule

 2.11 Andrew Heath - A Trace of Phosphor

 2.12 Ayako Taniguchi - obsess

 2.13 Goldmund - The Time It Takes

 2.14 Melissa Parmenter - Messapica

 2.15 Snorri Hallgrimsson - Landbrot I

 2.16 MJ Cole - Madrugada

 2.17 Theo Alexander - Animadversions

 2.18 Wataru Sato - Feel Like April

以上17作品がネオクラシカル系。まず2.1のTim Linghausは近作でテーマとしてきた電子音との融合の熟達具合が伺える一作。2.2のHania Raniは氷上で舞うMVも話題となり今年一気に注目された。2.8のGabríel Ólafsはアイスランド出身の若手ピアニストで、今後の活躍に期待大(「Filma Solo」なんかは坂本龍一オマージュとおぼしきフレーズもあり、割と日本人が親しみやすい音では?)。なんといっても今年の日本のネオクラシカルで沢山聴いたのは2.12のAyako Taniguchi。「b-moll」の高速打ち込み集中砲火で完全にやられてしまった。Hiroshi Kondoが手掛けたMVも尋常じゃなく良いので要チェック。2.13のGoldmundも圧巻。前作がオールタイムベスト5に入るほど敬愛していたので当初はハマらなかったが、徐々にその良さが沁みてきた。2.15はニューカマーながら安定したバランス感覚。リバーブ少なめかつ弦楽器を重用していた初期Olafur Arnaldsサウンドが好きな方は間違いなく好みだろう。2.16のMJ Coleは意外な作品だった。DJとして知られるアーティストの十数年ぶりの新譜がまさかのネオクラシカルだったからだ。アップライトでポジティブなテンポもたまには摂取しておこう。ラスト2.18はWataru Satoの新譜。こちらはサウンドトラック的な側面が強くリラックスというよりも高揚感をチャージしてくれる。「三体II(下)」を読んでいる際このアルバムを流していたら、終盤主人公がある場所で絶望的な状況から一縷の希望を託して夜空を仰ぐシーンでこの「Still Silence」が。やたらと場面に合致していて、尺も丁度だったため謎の思い入れがある(冒頭の''黒い森''とはつまりそういうことだ)。それを抜きにしても「Feel Like April」は名盤であることに変わりはないのだが。


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来年はたまに更新できるよう新譜漁りに精を出していきたい。
それでは、よいお年を。

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