小倉2ィィ歳ステークス

あれは夏も終わりを迎え、少し肌寒さを感じる時期でした。私はいつも贔屓にしているラーメン屋へ足を運びました。

大将に「冷やし中華まだやってるかな?」と尋ねると「もう下げたんだけど淳ちゃんだから特別だよ」と苦笑いしながら大将は厨房へ向かいました。

料理を待っている間に新聞でも読もうかと立ち上がると備え付けの古びたTVからファンファーレが聞こえて来たんですね〜。なんか嫌だな〜なんて思いつつチラッと見てみると‥「小倉2ィィ歳ステークス?」

「なんだ競馬かよ」張り詰めた緊張が解けました。私も若い頃は随分と競馬にのめり込んだものです。

今は出走している馬の名前も分かりませんが感傷に浸ったのでしょう、レースでも見てみるかと心踊らせたのを覚えています。

10頭立てのレースで枠入りもスムーズでした。最後の馬がゲート入りを終え、係員が離れ態勢完了!ギィィィと断末魔のようなゲート音と共にレースがスタートしたんですね〜。

シュンメキラリがやや出負け、ポンと飛び出したショウナンマッハとデュガのハナ争い、譲る形でショウナンマッハがハナに立ちました。

続いてデュガ、内にソリッドグロウ、中にインプロバイザー、ブレスレスリーで隊列が決まり前半の600㍍(33.6)で通過したんですね〜。

中団外目にナムラクレア、内にスリーパーダ、間にエトワールジェンヌで3-4コーナー中間にレースが動き出します。

ブレスレスリーが外から上がっていったところで中団外にいたナムラクレア、内のスリーパーダも進出を開始します。

4コーナーから直線でソリッドグロウ、ショウナンマッハの先団が馬場中程の進路を選択したのを見逃さずスリーパーダとインプロバイザーが進路を内に突きます。

対して外側ではデュガがコーナー終盤で膨らみ、ブレスレスリーが外へ回避。ナムラクレアはそのまた外を回るロスが発生したんですね〜。

7頭が大きな差がなく横一列で最後の直線。
1番人気のショウナンマッハは徐々に後退します。
内を突いたスリーパーダがジリジリと伸び脚をみせるところに大外からナムラクレアの脚色が違いました。

「淳ちゃん、冷やし中華お待ち〜」

話しかける大将を尻目に、食い入る様に「がんばれ!いけ!」と馬券を買ってもいないのに応援していました。

ナムラクレアは伸び続けて1着でゴールイン、2着には内から伸びたスリーパーダ、3着には道中後方で最後の直線にナムラクレアと同じ進路を走って来たアネゴハダが入着しました。

内外のバイアスで明暗を分けたのか、はたまた見えざる何かの力が働いたのか私には分かりません。
外伸び馬場だったのなら内をジリジリ伸びて2着のスリーパーダは今後も楽しみですね〜。

勝ち馬のタイムを見て血の気がすーっと‥
1:07.9(いなぐわ→稲川)

「いや〜良いレースだったね大将!久しぶりに見たから興奮したよ」

ふと大将を見てみると肌寒い時期なのに、額に汗びっっっしょりかいてガタガタッガタガタガタッ震えているんですね〜。

「大将どうしたの?」「見ちゃいけないもん見ちまったよ淳ちゃん」「どうしたの?何を見たの?」

大将が震えながら右手にくしゃくしゃになった何かを私に見せてきました。

なんか嫌だな〜、怖いな〜、気味悪いな〜なんて思いながら恐る恐る大将の右手の何かを覗くと‥

「インプロバイザー複勝 30万⁇⁇」

複勝は3着までしか配当がないんですね〜。
※出走頭数7頭以下は2着まで

人気馬複勝ドカンはリスキー、そんなお話でした。

次回の稲川競馬は呪いの館(WINS編)お楽しみに




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