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別府視察

何十年ぶりの別府

大分県は別府市。九州で幼少期を過ごした自分にとっては、別府と聞いて思い出すのは血の池地獄です。あるいはその周辺の地獄めぐりで、温泉卵とか、泥風呂とか、杉乃井ホテルとか。家族で旅行に行った記憶がかすかにあり、そのイメージ以上でも以下でもありません。東京で近いイメージなのは、熱海だと思います。
現在、別府界隈はとても賑やかで、アート関連や銭湯界隈で盛り上がりを見せていて、たくさんのクリエイターの方々が移住しては情報を発信する様子を、たまに目にするようになりました。娘の小学校の友人ママが、別府に移住を検討して同じママ友たちと別府に旅行に行った話を耳にするが、そんな、東京から感度が高い人がわざわざ行くような街だというイメージが、そもそもない。僕にとっての別府はそんな街です。

目的地は三つ

この記事を書いているのは、2024年4月。とある目的地のために福岡へ帰省して、弾丸で日帰りで福岡から別府まで行ってきました。
① HAJIMARI Beppu
② ガレリア御堂原
③ 別府の地元銭湯(通称ジモセン)
この三つが目的地です。

HAJIMARI Beppu

大学の先輩であり、かれこれ20年近く前に大分県の蒲江町で実施されたワークショップイベントに参加した際にご一緒したことのある建築家光浦高史さん。その方と奥様の坂本和歌子さんが共同経営するリノベーションホテルです。


ホール 気持ちの良い光が入る空間
ゆったりとした時間を楽しめる喫茶店がテナントで入っている
東京にあったホテル「クラスカ」から譲り受けた照明器具とオリジナルの館銘板のコラボレーション
ホテル部分の廊下 元の建物のままの構成で、無造作なのがいい感じ 新築で設計するとこういう場所は生まれない
客室 アートホテルがコンセプト
アート作品と、インテリアとが絶妙に雰囲気を作り出す

残念ながら、その日は光浦さんは次に書く「ガレリア御堂原」がJIA九州建築賞を受賞され、その受賞記念イベントが福岡で行われていたため不在。次回またお目にかかりたいものです。
ただ、たまたまいらした坂本さんが館内を丁寧に案内してくれました。
陶芸家である坂本さんの作品制作や展示・販売の場でありながら、地元の方々とのつながりやコラボレーションもあり、アートあり、場所づくりの模範解ここにありという感じで、すべての場所のプロセスが素敵でついつい長居をしてしまいました。

ガレリア御堂原

次に訪れたのは、ガレリア御堂原。リノベーションされた部分と新築された部分からなるアートホテル。

JIAという建築家の協会の建築賞を受賞するのがうなずける。もう完全にホームランです。

外観
別府市内を見渡すことができる廃墟のようなエントランスホール
中庭
カフェの脇のテラス
外観が格好いい

デザインホテルということで、金額についてもそれなりの価格設定だと思いますが、宿泊者でにぎわっていました。見た感じ、外国人も多そうでした。特徴的だったのは、アートホテルなので宿泊者がスマホを片手に館内を歩いていて写真を撮っては盛り上がっていることでした。
アートって、なかなか楽しみづらいというか、格式高い感じがあり、美術館に行ってもたくさんの人がいてプライベートな感じはしません。でもアートホテルであれば、宿泊者しかいないので、ゆっくりと、気を張らずに滞在ができるのがいいところなのだと思いました。

別府の地元銭湯

別府の銭湯はルールに厳しいようで、前述した娘の小学校のママ友が旅行でジモセンに入っては、地元のお姉さんに怒られる話をよく耳にしていました。入ってみると、確かに「湯だけ」という施設でした。共有資源である温泉を地域全体で楽しみながら守っているのだな、ということはわかりました。さすがに怒られはしなかったけど。

視察というのがおこがましい

別府視察の感想としてはすごいの一言。(仮称)牧山テラスで体現しようとしているものとはスケールが違いすぎて、参考に見学したというのが申し訳なくなるくらい、完成度の高いプロジェクトでした。
特にHAJIMARI Beppuは、宿もあり食もあり、しかもその場所を自分たちの拠点にされ、かつご夫婦でそれぞれの専門分野があるため表現される領域が数種類ある状態。光浦さんの設計に、坂本さんの陶芸によるインテリアが絡むシーンがいくつもあり、建築好きだと「これはせこいな。笑」とうなってしまうほどインスタ映えしそうな個所がいたるところに点在しています。
この視察の段階で、私の頭の中には(仮称)牧山テラスの使い道としてのシェアアトリエ・シェア工房があったため、坂本さんの工房を見ることができたのは大収穫でした。陶芸するには、電源を200V対応すると望ましいことや、ただの水道管では掃除ができないため「クリーンボックス」という名前の石膏の掃除用器具を装着していること、シンクのサイズ感など、空想で想定していたことを実際の工房で点検することができ、大きな収穫がありました。

工房のシンク
クリーンボックス

一緒に連れて行った私の両親には少し退屈だったかもしれませんが、古い建物を再利用して、まったく違うジャンルのものにコンバージョンし、それを地域の人たちが使う、実例を見てもらえた。これも一つの収穫だった気がします。
血の池地獄の別府とはまた違う、地面の下から湧き出るようなエネルギーを、地域と共振しながら自分たちの思いを体現する場所として活動されている、とても素敵な建築でした。坂本さん、ご案内をいただき本当にありがとうございました。

FromFactory KITAKYUSHU - 住むこともできるシェア工房

ものづくりを中心に、趣味を深めたい方から新しいことに挑戦したい方まで、気軽にご利用いただける工房です。友人との共同利用や夜間作業も可能です。

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ものづくりに限らず、セカンドハウスや趣味の拠点としてもご利用いただけます。多様な背景を持つ方々の集まりを目指しており、特定の対象は設けておりません。

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