型月オタクが「エターナルズ」を観た

※Attention※
※この記事はネタバレに一切配慮しておりません。
※型月の知識・興味については不完全な自覚があるので、ここがこうだね!ってのがあったら教えてくれると助かります。
※関係性オタクによる関係性への言及があります。



エターナルズを観てきました。
世界一壮大な映画シリーズと言っても過言ではない、個性豊かなスーパーヒーローたちが入り乱れ、最後には必ず宇宙を救う、「アベンジャーズ」の新規シリーズ。
世界中の人間がド派手なヒーロームービーを期待し、誰もかれもがドキドキワクワクを止められない!ハズなのだが…

ちょっと知ってるのと違う。
美しい朝焼けを背景に、アンニュイな面持ちでたたずむ新しいヒーローたち。それもそのはず、この映画を撮ったのはクロエ・ジャオ監督。オスカーも獲得した代表作はこちら。

沢山の出会いと笑顔の別れを積み重ね、その旅路の果てを目指す、ノマドのファーンのロードムービー。
そう!「エターナルズ」は、あくまでもマーベルのヒーローたちを題材にした、”クロエ・ジャオの映画”なのです。
なので、どうしたって、ダイナミックで美しい自然の風景を見つめ、無数のいのちのはじまりと滅びを想い、その大きな流れの中で、正しさとはいったい何なのか?と問いかけるような、そんなお話になっている…

そもそも、「エターナルズ」とはなんなのか?
ひとりのスーパーヒーローを指すのか?それともチームの名称なのか?
いいえ、違います。
エターナルズとは…!宇宙を支配する超高次情報生命体セレスティアルズが、いつか地球という卵から孵るであろう幼生のため送り出した、誕生に必要なエネルギーを供給する知的生命体…つまり人類を守る使命を持った、自立型戦闘人形だったのである!

たいぷむ~ん的に雑に例えると、彼らは(結果として星ごと知的生命体の文明を破壊するという意味では)捕食遊星ヴェルバーであり、エターナルズは様々な能力をもつアルテラさんが10人いるということになる。(ならない)

これだけで、察しのいいオタクにはかれらになにが起きたのか、わかってしまうのではないかとすら思うんですが…

セレスティアルズが誕生するには、惑星上の文明が十分に成熟し、情報エネルギーを惑星にためる必要があります。だから知的生命体を脅威から守り育てるため、エターナルズがいる。
星を守り育て、その星を破壊してセレスティアルズが生まれたら、記憶を消されてまた次の星へ。エターナルズたちは、これまで、何百万年、何億年という時間を、そんなふうに戦ってきました。たくさんの滅び、誕生、リセット、滅び、誕生、リセット。それで問題はなかったはずだった。

でも我々は知っています。
VOIDとは0ではないことを。
積み上げ続けたヴォイドは、いつか”何か”に手を届かせることを。


そして、一番最初にその”バグ”を顕したのは、エターナルズの一人、アンジェリーナ・ジョリー演じるセナでした。
自在に武器を具現化する能力を持ち、白い長衣を翻して戦う、壊れかけの戦闘人形…?知ってる気がする…
ときおり自制を失い、突然暴れだすようになったセナの世話を買って出たのは彼女の一番大事な親友である、マ・ドンソク演じるギルガメッシュ
一瞬で答え合わせが終わってしまった。

いやさエターナルズの元ネタが世界中の神話からとられている(というかむしろ彼らをもとに神話ができたという設定なのだろうと思う)し、セナはアテナになったんですけど、それにしてもよ。

エターナルズは当然有史から人類に寄り添い守護してきたので、古代バビロニアにも当然その姿を見せているんですが…

青いイシュタル門を背景に、巨大な牛によく似たモンスターを協力して倒すギルガメッシュとセナ。



そしてその雄姿を人々に語って聞かせるエターナルズの仲間たち。「ギルガメッシュとエンキドゥは…」

???

これを観に来たのでいい。いいのだけど、いいんですか?

この時点でまあだいぶ面白かったんですけど、すごいのはね、ギルガメッシュがね、セナをかばって死んでしまうんです。ギルガメッシュの残した、「こころを取り戻す方法」が、あまりにも優しくて、愛に満ちているのですが、おれは教えてやらんので観に行け。いや観に行ったんですよね?すごかったよね。しかも「忘れるな」って言ってたよね。おれはどうしたら…

私は推しの逆死に別れをマーベルの資本で、しかもクロエ・ジャオ監督に映画化してもらった最強のオタクになってしまった…

”壊れてしまった”セナが突然暴れてしまうのには理由がある。
”前回”目の当たりにしたのであろう「星の滅び」の記憶が消えきっていなかったのだ。フラッシュバックする滅びに逆らい、守るべきものを守る為、セナは狂戦士になる。もしかすると、彼女はその星の知的生命体を、心から愛していたのかもしれない。

エターナルズの”VOID”はここに実を結んだ。
主人公であるセルシもまた、地球に降り立った瞬間から人類を慈しんでいた。
イカリスはおなじエターナルズであるセルシを愛してしまっていた。
スプライトは成長できる人類に憧れてしまっていた。
ギルガメッシュとセナも。ドルイグとマッカリも。彼らの間には特別な親愛が生まれていた。ファストゥスもキンゴも、人間たちの中に家族や仲間を見出した。エイジャックだってそうだ。

エターナルズたちは、他者に執着することを知ってしまった。
その小さなバグが、エターナルズたちを最後の戦いに導いていく。
こんな風に苦しむのなら心なんていらなかった、全部綺麗にリセットして次に行きたいと泣き喚いたとしても。

エターナルズが最終決戦で問われるのは、まだ生まれていない生き物を消すのは、殺人なのか?という命題である。

それは、FGO第二部でカルデアが問われるものと全く同じだ。
異聞帯を切除するのは殺人か?
生まれるはずだった生きものたちを消すのは殺人か?
では今の地球の全てを見捨てることもまた殺人ではないか?
その罪と罰は誰が秤り、誰が裁くのか。
エターナルズたちは「心」に従って、救うものと殺すものを選んで見せた。そういう意味では、もうヒーローではないのかもしれない。
藤丸君も、あとちょっとだ。ヒーローにはなれなくても頑張ろうね。

余談ですが、

「俺はずっといい子にしてましたよね!?でも誰も助けてくれなかった!エイジャックも殺すしかなかった!仕方なかったんです!助けてよ!私に逆らわないでください!だいすきなセルシでも殺しちゃいますよ…?だって俺が一番強いもの…」の桜ヒロイン枠はイカリスくんで

「ずっとずっとみんながうらやましかった!私には手が届かない幸せを持ってるみんなが、どうして私だけ不幸なの?どうしてセルシだけ幸せになれるの?どうしてセレスティアルは私をこんなふうにしたの?全部消えちゃえ!」の桜ヒロインがスプライトちゃんだよね

はやくエターナルズで狂うオタクが見たいなあ…


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