2021年2月21日

2021年2月21日14時07分。
実際にはきっとその少し前。
祖母の心臓が止まった。

1週間ほど前、入院すると聞いたときは驚いた。
このような時期なので面会はできない。
祖父のスマートフォンを看護師さんに預けて、テレビ電話をする。
これが祖母と話すための唯一の手段だった。
話してみると想像よりも元気で、いつも通り笑顔が可愛らしい人だった。

数日後、面会ができるようになったと父から聞かされた。
誰がいつ行くかということが問題となった。
祖母には子どもが4人、孫が11人いる。
初め、私は誰とも被らない24日に行くことにしていた。
しかしそれでは遅いということで21日に変更した。 

2021年2月20日。この日は私の21歳の誕生日だ。
この日を楽しみにしていた。
何か月も前からお気に入りの懐石料理のお店を予約していた。
父と母と行く予定だった。 

私と母は昼から美容院へ。
父とはお店で合流しようということだった。
17時。店の前にやってきた父は病院に向かうことになった。
私と母はお店の方への申し訳なさから食事をいただくことにした。
父の分は包んでいただいた。

美味しかった。本当においしかった。
美味しく楽しく食べている自分に違和感と嫌悪感を抱きながら店を去り、帰宅した。

帰宅してすぐ病室にいる父とテレビ電話を繋いだ。
もう祖母の口から言葉を聞くことはできなかった。

「今日21歳になりました。」
そう伝えたとき、僅かに祖母はまばたきをした。
嬉しくも寂しくもあった。もっと旅行や食事の機会があると信じて疑わなかった自分を情けなく思った。

その夜、Youtubeライブにモデレーターとして参加し、いつも通りの夜更かしをした。

翌朝、7時に起き、病院へ向かった。
数か月ぶりに県外に出た。とても眠かった。
病室に入ることができるのは3人ずつ。交代で祖母と話をした。

ドアを開けると、前の晩よりも苦しそうに肩で息をする祖母の姿が目に入った。
エアコンは暑いくらいに設定されていて、少し汗ばむほどだった。
ベッドサイドモニターからは嫌な音が流れていた。
祖母の手に触れると熱くて、足先をマッサージすると冷たかった。
しばらく話をした後、交代し、何時間後かにまた話をした。

待合スペースに座っていると、もう全員が病室に入っていいということになった。
看護師さんだったのか、親戚の誰かだったのか、誰から聞いたかは何故か覚えていない。

特別な話をしたわけではない、時折笑い声も混じる穏やかな時間だった。
しばらくして、新幹線で向かっていた従兄とそのお嫁さんが、最後に仮眠を取りに帰っていた祖父が病室に入ってきた。

看護師さんが出たり入ったりした後、先生が入ってきて診断を終えた。

一度全員病室を出て、慌ただしくなった。
着てもらうお洋服を選んだり、お化粧をしてあげたりした。
最後にお線香をあげて、病院をあとにした。

暖かくて、風が強い、青い空が綺麗な日のことだった。





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