自分のラフ絵をAIに再生成してもらい、やりとりしつつ仕上げる【AIイラスト備忘録】※作例追加
一か月くらい生成AIを使ってみて、かなりいい感じに自分の絵をブラッシュアップしてもらえるようになりました。
ラフをTrinArtに読みこんで再生成してもらい、髪・服・背景などは生成絵を利用しつつ、細部は修正して、顔は自分で描くというところに落ちつきつつあります。
ちょうど一年前にこの記事で描いたあと、手をつけていなかったお気に入りのラフがあったので、メイキングがてら出してみます。(2023/07/07 よく読まれている記事なので、最近の作例をひとつ追加しました)
作例1
ラフ
自分の描いたラフを読みこんで、TrinArtで10枚ほど再生成してもらいました。プロンプトもけっこう細かく書いてます。
元絵があるからプロンプトは要らなさそうなものですが、意外とそうでもなく、ジャンルやシチュエーションを理解してもらうと生成の精度がぐっと上がります。プロンプトを入れないと、中世風の服で描いたつもりがスーツに変換される、とかもよくあるので、意外と大事です。私はChatGPTに書いてもらってます。TrinArtの場合、プロンプトは日本語でもいいし、英語だと情報量を増やせます。
この二枚のあいだに残りのバリエーションがありますが、細部以外はほとんどいっしょです。プロンプト重視で重ね書きをしていくとだんだん情報量が増えてリッチになっていきますが、そうすると自分の画風とずれてくるので、いっぱい生成すればいいというものでもなさそうです。そのへん、描きこみ量の好みってありますよね。(このへんはもちろん、もっと高機能の生成AIを使えば画風とかも指定できるんでしょうが)
左の絵は自分のラフな線からいい感じに服の細部を生成してくれているので、メインはこの絵に近い数枚を使います。細部がリッチな右側の絵は、そのままでは画風と違いすぎるので、装飾品や背景に使おうかなと。
人物
人物と背景を別々に使いたいので人物のみ切り抜いて、その上から自分の描いたラフを貼りつけ、削りながら加筆していきます。貼りつけた段階で自分のラフのほうに色調補正をかけたりして、AI絵のほうとなじむようにします。それと、ラフがラフすぎたせいで人体比率がおかしいところをなおしたり、左手の下にある謎の白い手っぽいやつを消したり、足として認識されてるパーツをチュニックに戻したり。けっこう修正するとこあります……。
◆修正でお世話になっているブラシはこのあたり:
厚塗り用のブラシですね。
全体・修正
背景は、AIは意外と左右対称に描いてくれないので、コピーして左右反転したものを貼り合わせました。
顔はラフのものをそのまま使ってますが、そのままだと線がザツすぎて絵から浮くので、不透明度を70パーセントくらいにして上から描きなおします。
ある程度整えたら、その絵をまたTrinArtに読みこみます。
これは髪と王冠を生成してもらうためで、できた絵の額から上を切り抜いて、作成中のキャンバスに貼り付けてなじませます。
それと、AI絵をサブビューに読みこんで、カラーパレットがわりにしたりもします。とくに顔まわりの色は自分で選ぶよりいい感じになることが多いです。(ただ、流行の色というか没個性になってしまうきらいもあるかも)
あとは服装の細かい描写がおかしかったりするので、そこを修正します。今回の絵だとサッシュベルトまわりのしわがおかしかったり上着の謎の位置からファーが出てるのでそのあたり。AIは服の構造を考えて描画してはくれないんですよね。なので、「ここはこうなってる服なんだよ」という最低限の説得力があるようにという感じです。
模様があったら左右対称にするとか、布地の裏表をチェックするとか、実際に着用できるかどうかを考えつつ(しかし細部は適度に放っておきつつ)修正してます。
完成
ラフとの比較です:
作例2
もうひとつ同じような感じで描いたやつ。版権絵ですが……
これもラフのイメージどおりに仕上げられた一枚です。作業時間はいつもの背景ありカラーイラストの半分くらい(4~5時間)です。途中まで自力で描くつもりだったので再生成はラフ含めて2回ですかね。
ラフ
海っぽい色の組み合わせで、でも爽やか~よりもちょっとせつない感じの色を目指しました。背景はChatGPTにプロンプト書いてもらってTrinArtで出力して、いい感じのやつを選んで適度に細部を潰してます。AIはすぐ海辺にヤシやビーチパラソルを生やすんで…… 海鳥はあとでAIに描いてもらおうと思って、外観がわかればいいやと素材を貼っておく。この絵の場合、完成形が頭のなかにわりとしっかりあったので、ラフはその確認程度な感じです。
線画
髪を描くの下手すぎるので、Gペンで先に形を作っておいて、それをなぞって描いてます。大きく前後の2レイヤーくらいに分けておくとあとで塗りやすい。前と横の髪は塗りの一番上のレイヤーにおき、後ろの髪は肌の下において彩度低めの青っぽく塗って立体感を出すとかできます。
着彩
彩色は好きだけどほんと難しい。影とかまだぜんぜん塗ってない状態ですが、なんか全体にあか抜けない感じなので、ここでプロンプト弱めでTrinArtにかけて
左上に光源があるのがはっきりしましたね。背景と人物の色のバランスが整った感じがします。海鳥、服とか身体もおおむね破綻なく描いてくれたので、(線画せっかく描いたけど)これをベースに加筆しようかな。しかし、こうしてきれいにしあがってるとなんか……パースおかしいですね?? ちーよーはどこに立ってるんだ? 岩の上か? まあいいや。岩の上に立ってます。あと、背景と人物の明度差があんまりなくて人物が目立ってないかも?
加工
(AI生成絵はレイヤーに分かれてないので)めんどくさいですが、人物のみ選択→コピーしたレイヤーを二枚作って、一枚はオーバーレイにし濃い青で塗りつぶし。もう一枚はソフトライトモードで重ねる。加工の方法はお好みでいいのですが要は人物の彩度をあげはっきりさせるのが目的です。選択範囲を反転させて背景の彩度を下げ、明度を上げる。これで背景よりも人物がくっきりして、どこを見ればいいかわかりやすくなったと思います。
レイヤーモード「色相100%」のレイヤーを一枚作って一番上におき、真っ黒に塗っておくと簡単にモノクロの状態が確認できます。加工前より人物に目が行きやすくなっていると判断しました。夕方の絵だから人物がもっと暗くてもいいかもしれないと思い、人物の全体にもう一枚乗算レイヤーを乗せました。
あとは顔と頭頂部中心にキャラらしさ、自分の絵らしさを出すよう加筆します。ここで、わりとしっかりめに線画を描いておいたのが役立つ。すでに完成したAI絵があると、自分の絵をしっかり見ながらでないと自分の絵柄に修正できないんですよね。なぜならAI絵のほうが整っててきれいだから……。すでに整っているものを個性的な方向に修正するのは難しい。自分の線画を上から重ねて、極力自分の絵柄に寄せるようにします。
あと一押し、絵の中心になるものが欲しかったので右肩のあたりに光を入れました。まず光に目がいって、それから人物の顔、服、髪の流れにそって海、海鳥、と時計回りに視線が動くように配置を意識してみました。
こういう光があったら、人物には逆光でもっとリムライトが入る気がしますが、ちょっと絵が複雑になりすぎて自分の手にあまる気がしたのでやめました。
完成
塗りに関してはもう、AIのほうが確実にうまいので、服などの細部をきちんと詰めて絵の説得力をあげるとかの作業に時間を割くといい気がします。あとは構成とか演出も大事で、一枚の絵のなかで見る人にどういう順番で情報を提示するのか、なにを優先して伝えたいのかみたいなことをしっかり煮詰める作業が必要なのかな。
なんにせよこのクオリティで1から自分で描こうとすると二日、三日とかかかるのが半日くらいに短縮できたので、ほんとにありがたい技術だと思います。
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