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ゾイド考:旧大戦後期のヘリック共和国軍

ゾイドの世界観、設定についてアレコレ考察する

暗黒軍の脅威

ZAC2051年──長きに渡る中央大陸戦争はヘリック共和国の勝利に終わった。
だが、一つの戦いの終わりは新たな戦いの始まりに過ぎなかった。
ヘリック共和国は、ガイロス帝国という強大な敵性国家との大陸間戦争に突入する。
暗黒大陸上陸を狙った緒戦で、共和国軍はガイロス帝国の暗黒軍に敗退。
二機のマッドサンダータイプを含む上陸部隊全滅という悲惨な結果を迎える。
共和国軍は、70年間もの中央大陸戦争で疲弊しきっていた。
連戦につぐ連戦で、兵士の心身は消耗していた。
ゾイドも乱獲と改造、戦闘による損耗の繰り返しで個体数が逼迫し、戦力は頭打ちだった。
なにより、国民の間に戦いに対する疑念が生じていた。
今までは中央大陸の覇権争いという身近な戦争だったのが、海を越えた暗黒大陸への遠征という他人事になってしまった。
わざわざ、こちらから攻め込む必要があるのか?
これ以上の犠牲を払って、いったい何が得られるというのか?
一般国民にとっては、暗黒大陸なぞ祖父母の時代の昔話に語られるだけの幻の存在に過ぎない。
戦争は新たな局面に入っていた。
ゾイド人にとっては史上初めてとなる、別の大陸との国家を挙げた総力戦である。
軍民ともに大幅な意識改革が必要だった。

地球人は、ゾイド人に多くの技術と文化をもたらした。
近代的な戦争のやり方も、その一つだ。
たとえば──プロパガンダ。
一般国民にも分かり易く、暗黒軍の脅威を知らしめる必要があった。
昔話に語られる、遥か北方の地獄の軍勢。
かつて祖父たちが戦った強大な侵略者。
そういった恐怖のイメージを喚起させる。
そして、民衆に思い出させるのだ。
かつてヘリック一世の時代、それまで反目していた中央大陸の東西が手を取り合い、外敵に打ち勝ったという歴史を。
プロパガンダの主な目的は、旧ゼネバス勢力の吸収である。

“新生”共和国軍

中央大陸戦争末期、ニカイドス島に立てこもったゼネバス帝国残存戦力は暗黒軍に接収された。
しかし、それがゼネバス全軍というわけではない。
戦争中に共和国軍の捕虜になった帝国将兵や技術者、接収された工場、旧ゼネバス領内の民兵組織等、中央大陸にも相当数のゼネバス帝国軍関係者が残っている。
ガイロス帝国との戦争を継続するには、彼らの協力が必要だった。
プロパガンダ実施に関して、人格者として知られるヘリック大統領には思う所があったはずだ。
かつて父ヘリック一世は一計を案じ、暗黒軍侵攻を誘発する自作自演のような形で中央大陸を統一した。
そのことは遺言で知らされ、策に溺れる危うさと後悔の深さを警告されていた。
だが、中央大陸を守るためにはゼネバス系勢力の吸収は必要不可欠だった。
指導者として、選択の余地はなかった。
共和国軍は、そこまで追い詰められていた。

共和国政府は暗黒軍に関する情報を開示した。
その方法はニュースや新聞、ゼネバス関係者への面談、そしてプロパガンダ用に共和国軍関係者が事実を元に脚色・執筆した「新バトルストーリー」「ゾイドグラフィックス」といった書籍など多岐に渡った。
暗黒軍の裏切り、そして敬愛するゼネバス皇帝の死を知り、旧ゼネバスの将兵たちは奮い立った。
「ゼネバス皇帝陛下の仇を討つ!」
「暗黒軍に捕らわれた同胞を救いだす!」
同時に、皇帝の兄でもあるヘリック大統領の寛大な精神に敬意を抱いた。
こうして旧ゼネバス系勢力は穏便な形で共和国軍に吸収され、新生共和国軍として再編成された。
民衆は、かつて祖父たちが暗黒大陸からの侵略に一致団結して立ち向かった歴史の再現を見た。
「共和国も帝国も関係ない。同じ中央大陸の民として侵略者と戦うのだ!」
建国神話の再現──プロパガンダとして、これ以上ない演出であった。

最強のゾイド


手段はどうあれ、共和国軍は生まれ変わった。
暗黒大陸への第二次上陸作戦以降に開発されたゾイドには、ゼネバス系技術が多く導入される。
共和国軍の改造ゾイドにもアイアンコングやデスザウラー等のパーツが散見されるようになった。
正式採用機もデザインラインに曲線が増え、装甲型コクピットが多く採用され、
そしてゼネバス帝国の象徴である「赤」のカラーリングが含まれるようになった。
多くの技官も共和国軍に参加したことが伺える。
特に──戦争末期に開発された決戦兵器キングゴジュラス。
ゴジュラスの名を冠してはいるが、この機体の設計はむしろデスザウラーに近い。
かつてゼネバス帝国には、デスザウラー以上のゾイドを作ろうとした天才技官がいた。
彼は戦争中に共和国軍の捕虜となり、亡き父の遺志を継いで平和利用のための義肢を完成させた。
だが、戦争は終わらなかった。
彼の敬愛するゼネバス皇帝、そして多くの同胞が暗黒軍に連れ去られた。
彼が戦争を終わらせるために、皮肉にも「父の作ったデスザウラーを超える最強のゾイド」を作り上げた可能性も……なきにしもあらず。

#ゾイド
#ZOIDS

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