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#17 お菓子が作れないなら干物を作ればいいじゃない

きょうは、2021年9月25日。

鳴門はどうやら晴天で、徳島のJ1ヴォルティスも久々の白星と、なかなかご機嫌な土曜日。工房も多くのお客様にお越しいただいたようだ。

空港の土産店や、観光客をメインにした売り場のお取引はまだ復活していなおらず、徳島も観光は苦戦している。おそらくは本日も、徳島の地元の皆さんが、週末のドライブにお立ち寄りいただいたのではないかと予想している。本当にありがとうございます。


2020年2月に操業をスタートしたフレンチモンスター瀬戸内フードアートは、当時、「卸」と「催事」を売り上げのメインに考えていた。その他、工房でのスイーツ販売、カフェ利用、軽食、レストラン・・・などなど、夢は広がるものの、それは未来の話。まずは生産性高く、たくさんのお菓子を手作りで、欲しい人に欲しいだけ渡せるための「工房機能」としてスタートした。

しかし。

コロナの中、「卸」と「催事」の取引きのキャンセルが相次いだ。せっかく準備した真新しい設備を持て余すこととなったが、工房機能から作っていたので、外壁の塗装や、客席の仕上げもできていない。そして、コロナで県をまたぐ行き来は自粛を求められていた。

だから、「鳴門にオープン!」なんて、声高らかに宣言することはできなかった。時折、島内の住民のかたや、たまたま通りかかったドライブの方などが、ピンポンを鳴らして、「ここ、一体なんですか?」と覗きにきてくださり、説明をしてお菓子を販売する・・・という状況。客席はがらんとしていて、まるでダンスフロアのようだった。

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こうなると主戦場は、「通販」だ。

Facebookでのつながりを頼りに、鳴門に工房をオープンしたこと。コロナで厳しい状況だけれど、生産者のそばで、美味しいお菓子を仲間が作っていることを連日、投稿した。

鳴門に本拠地を移したからこそできることをやろうと、生産者の皆様にも協力していただき、「鳴門の朝ごはんセット」も数量限定で売り出し、ご好評いただいた。

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また、商品化には至らなかったけれど、干物づくりにもチャレンジした。西麻布のレストランにお魚を提供してくださっている漁師の村さんが工房にいらしてくださって、「このルーフトップは、干物作りに最高です」とおっしゃったのをきっかけに始まったプロジェクト。

塩分濃度を段階的に変えたもの、魚の種類を変えたもの、干す日数を変えたもの、様々なバリエーションで鳴門のメンバーが作ったものを西麻布に送ってもらって、干物を「テイスティング」したりもした。

とにかく、売り上げになりそうなこと、気づいたことは全てやってみて、通販の商品バリエーションを増やしにいった。その時は必死だったけど、工房のみんなは、どんな気持ちで取り組んでたんだろう。先の見通しが、心配だったろうと思う。いや、心配だったのは、全員だな。でも、忙しくすることで、匍匐前進をした。歩みを止めてしまったらそのままその場に立ち尽くしてしまいそうな、そんな危うさがあった。


ある日、もう5−6年ぶりにもなる前職の同僚から電話がかかってきた。

「錦織さん、ご無沙汰しています!FaceBook見ていますよ」と切り出した彼の用件は、昼の全国放送のテレビ番組の視聴者プレゼントのコーナーに、フレンチモンスターの商品を提供してもらえないかという話だった。

「錦織さん、頑張って、経済を回しましょう!」という彼の明るい声。

ありがたくて涙が出た。

思い出の時系列がバラバラだったけど、「フレンチモンスター瀬戸内フードアート」が、最初にメディアに取り上げられたのは、全国放送の昼の番組だったんだ。テレビの効果は大きくて、通販での売り上げが急激に伸びた。そして、徳島の卸先の皆様にも大変喜んでいただいた。

そして2020年6月の頃、県をまたいだ行き来が解除されるようになったことを受けて、徳島のメディアの皆さんに、西麻布の2階から電話をかけまくった。これまでご挨拶できていなかったけれど、工房をオープンしていること。そのお菓子は瀬戸内お土産コンクールで最優秀賞を受賞していること。故郷・徳島を世界へ。というビジョンでスタートしたことなどを一生懸命話した。

すると、「徳島新聞」で大きな記事になったり、人気番組「ゴジカル!(四国放送)」では、15分以上のコーナーで丁寧に紹介していただいた。

ようやく地元・徳島のみなさんにご挨拶が叶った。

その反響はとても大きなもので、徳島県内のクーポンの取り組みや、GO TO トラベルなども功を奏し、連日、マイクロツーリズムに訪れるお客様にお越しいただき、工房が活気付いてきた。

イートインの利用などは、まだまだ先の話、と準備が追いついていなかったけれど、アンティークのテーブルや椅子、シャンデリアなどを錦織が調達して、少しずつ客席フロアも、お客様に喜んでもらえるしつらえを整えていった。

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フレンチモンスター瀬戸内フードアートは、そのようにして、徳島の地元のみなさんから、だんだん口コミで広がりを見せていった。

もし、コロナがなかったら・・・と時々考える。

多分、イートインに向けてのサービスは後回しになり、催事の機会を増やして生産に追われていたかもしれない。通販に注目することもなく、新作の開発に時間もかけられなかったかもしれない。

だから、決して器用ではない私たちが、試行錯誤せざるをえなかったこの環境に、ちょっとだけ、感謝もしている。

また、私が広報の立場で一番驚いたのは、観光をテーマにした取材が相次いだこと。桜の季節、夏の小旅行、秋の味覚・・・と、先取りしたシーズンの観光を盛り上げる企画に情報掲載したいと、旅行雑誌などからの取材がくる。それは、西麻布のレストランでは起きえないことだ。

私たちがやっているお菓子事業が、「観光資源」として、地元の、そしてメディアの皆さんにとっての財産になり得るということ。互いにwin-winで成長を目指せる面白さ。

ますます、徳島を語るに相応しくがんばりたい。私たちが頑張るのは、自分たちのためではない。その先に、徳島の盛り上がりに寄与できそうだという予感を日々、感じている。

ポストカード

そして。この原稿を書いている最中、政府が、緊急事態宣言、まん延防止措置を全面解除に向かって調整しているというニュースが飛び込んだ。

明るい兆しに、ワクワクする。


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