しろがねの月

荒れ狂う永い嵐のあと
その兵士は海の底からやってきた
手には錆びた機関銃を
握りしめたままそこに浮かぶ

透徹とうてつなる水面みなものゆらめきよ
我未ダ此処にニ在リシ和魂にぎたま

果てても尚信じる眼差し
その兵士は戦火の中で夢を見た

故郷を燃やされ家族も焼かれど
私はあなたを恨みはしない
我らを隔てた立場の相違
断ち切るべきはこの報復の連なりなのだ

※一秒でも早く平和が欲しくて
 何度も何度も引き金引いたこと
 屈折した星屑ひとつ撃ち抜き水面に月映す

いだ水面に舟浮かべ 
荒ぶるこの身を鎮めてた
二度と戻らぬものなれど 
静寂しじまの空にはえにしの残り香よ

※ Repeat

凪いだ水面に舟浮かべ
故郷の声を風に聴く
我ら家族は星になり
縁の大海原に降り注ぐ

潮は満ち もはや声も風も聴こえない
かすかにゆらめく水面のきらめき

最期にこうして巡る縁の妙を知り
人はそのを閉じるのだ

河は絶えずにただ流れ
しろがねの月に幽かな憶いを伝えつつ



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