本を年間100冊、10年読んで得たもの

本を年間100冊、10年くらい読んでいる。
本を読む効用はいろいろあるが、一番大きかったのは「考え続けることの大切さ」を知ったことだ。

20代の頃、とにかく生きにくかった。まわりがやたらとキラキラ見えて、自分はなんて惨めなんだろうと思ってた。演奏家になりたいという夢は叶う様子もなく、自己否定ばかり繰り返していた。

30歳の手前くらいから「人生の答え」みたいなものを求めて本を読むようになった。ベタだけど太宰とか漱石とか。読んでも分かるような分からないような感じだった。でもこの名作の中に何かしらの「答え」が書いてあるんじゃないかと思い、近現代小説なんかを中心に読んでいた。
読書を続けるうちに自分の好みの作家や好きな作風が見つかるようになり、気づけば年間100冊くらい読むようになった。

それから10年くらい経ち、現在も年間100冊くらい読んでいる。つまりは通算1000冊。10年の間に嗜好も変わり、最近は障害、ジェンダー、医療福祉、マイノリティの本を読むことが多くなった。

で、「答え」は見つかったか、というと見つかっていない。
本を読む中で、時おり「答え」っぽい言葉に出会うことはある。でも、それは万能ではなかったし、時間経過や環境変化に堪えうるものでもなかった。

でも、「答え」に出会うことよりも、もっと大事なことを本から学んだ。

それは「考え続けることの大切さ」である。世の中は常に変化し、問題は新たに生れ続ける。そういう状況の時に一番大切なことは、何らかの「答え」にすがることではなく、「考え続けること」によって現在を捉え続けることだと学んだ。

イソップ物語の「農夫とその子どもたち」という物語がある。農夫の父は息子たちに「畑に宝物を埋めた」と言い残し、世を去る。息子たちは畑を必死に探すが結局宝は見つからない。でも畑を耕し続けた結果として、息子たちは良い畑を得ることになる。

本に宝物はうまっていなかった。でも宝物を見つけるための「畑を耕し続ける」という行為に最も価値があったのである。

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