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フランケンラジオ
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第94話:奨学金の話(後半)
衣食住のみ保証された大学進学とはどんな試算なのか?
・パンクする貸与1型モデル
・やはりパンクする貸与2型モデル
・なんでもいいから入学までに70万の現ナマを!!

大学で一番まとまったお金が要るのって、入学の時なのよ。国立大で入学金が30弱、授業料が80弱の半分、っていうと入学時には70くらいの現ナマを用意しておかなきゃならない。入学金とか授業料免除以外の給付金って、給付開始が5月とかで、さらに月々いくら振り込まれるっていうタイプのものだから、正確には学費にあてるには難があるシステムだよね。これでどうにか学費を払おうと思ったらどうするかというと、親か誰かにローンで初年度一次支払い金を肩代わりしてもらわなきゃいけない。これを月々の給付でまるまる返すデザインにせざるを得ないでしょう。初年度春に70借金作って、秋までにはまた40後期分の払いをしなきゃいけないんだから、秋までに70を作れるわけがない。そんな借金、月々数万給付されたところで返せるわけない。仮に一種だとすると国立で月上限が5万だから、全部の給付をまるまる授業料返済に充てたところで60万にしかならない。つまるところ、何をどうやったって、自己資金でスタートできなければ初年度で50の借金を作り、次年度からは80づつの借金を60の給付で払っていくデザインになる。給付金だけでは絶対にパンクするようになってる。本気でやろうと思ったら、バイトでランニングコストを何とかするか、複数の借金をしなければならない。与信能力のない本人にできる借金ではないから、ハナから他人に出資してもらわないと学費を払い込めないデザインになっている。
わかりずらいかもしれないから、もうちょっと具体的に言ってみよう。入学が決まる。親はほぼ一銭もお金を出してくれない。入学までにそろえなければいけない金は、入学金30と前期分の学費40の計70。誰かに70の借金を頭を下げて肩代わりしてもらう。ここでは年利1.9%とでもしておこうか。5月から一種貸与の奨学金が始まる。月額は5万、マックスで借りた。これは自宅生のマックスだ。一人暮らしはこれに生活費が入ってくるからアウト。給付で学生やるなら、自宅生で経費ゼロが前提。これ以外はパンク。さて、これで秋までにどのくらい借金を減らせるか。バイトは当然しまくる。扶養を抜けちゃう103万上限を考えて、ここは8万、月に稼ぐとしよう。学生としては強烈な額だが、不可能とは思わない。だって学生ヒマだし。秋までの5ヶ月にバイト代が40万。奨学金は25万。計65万で借金の残高5万と利子分がまるまる前期で残った。10月になる。後期の学費を払わなければならない。有利子の借金が更に40万弱だ。合計45万チョイ。これを3月までにどこまで減らせるか。6ヶ月の給付で30万、バイトは相変わらず死ぬほど働いて8万が6ヶ月、48万。合計78万。有利子の借金と利子を払い終わって、30の現金を手にして二年目の春が来る。でもまた借金しないと。前期授業料40、手持ちは30しかない。2年目のスタートは有利子の借金を10万。初年度よりはちょっとマシか。10月までに奨学金とバイトで70万かせぐ。これでやっと収支が逆転、後期授業料を払って、10万の借金と利子を払って、有利子借金完済で手元に10万程度の現金が残る。奨学金の無利子の借金はこれまで115万。原理的にここで奨学金は必要が無くなる。次の春までにバイトで稼ぐ48万を加えた58万を握りしめて、三年目の春を迎える。前期授業料40万。残額プラス18万。就職活動と卒論が気になる3年目にして初めて利子の概念が消えた。奨学金は手付かずでまるまる借金だが、無利子でこれ以上増えることはとりあえず、ない。115万もあるが。ここからの収支は単純で、仮にこのペースでバイトを続けて落第しなかったとして、バイト総額は202万、学費は160万、卒業時には42万の現金と、無利子の115万の借金があなたの貸借対照表に乗っている。奨学金の返済開始は卒後7か月。社会人二年目になったあなたは約70万の無利子の借金というモデルになる。
350の金を払うために、毎月8万バイトで稼ぎ、1円も無駄銭使わないで48ヶ月、384を全部借金返済に突っ込んだら70万の借金が残った、と言うこと。
意外に絶望的。

もちろん、その間、衣食住すべては実家に寄生し、4年間で一本の缶コーヒーも買うことはできない。月額給付である以上、このようなモデルにならざるを得ない。何のためのシステムか正直さっぱりわからない。
結局は、学費を肩代わりしてくれる誰かがいないと、無利子であっても借金が膨れ上がってしまう形になってるというのは問題だろう。

ポイントとしては、自己資金と半年ごとの授業料のための有利子の借金の逆転がどのタイミングで訪れるかという話になる。計算上、月のバイト代(というか、返済額)が35000以下になると、有利子の借金を完済するのは卒業ギリギリになり、満額5年の48か月、250万の無利子の借金を抱えて卒業することになる。無利子とはいえ、スタートダッシュで大いにコケてる人生だ。




これがせめて年度前一括給付であれば話は変わってくる。4年分のすべての学費はここではモデルケースにした350(実際には250平均なので、実は一括で返せる)のうち、月5万の48か月分で250万を払い込んでしまう。不足の100を有利子で肩代わりしてもらう。そうすると金利1.9%の学資ローンだとして返済額35000で2年5か月、三年生の秋までに有利子返済は完了し、卒業までに63万の貯金が貯まる。合計の借金は無利子の190万。35000円でもだいぶ違う。
もっと言えば、月6万のバイトが可能であれば、借金はほぼすべて在学中に完済できる計算になる。
さっきの分割給付モデルでは月8万をすべて返済に充てても70万の借金が残っていたのになぜにこんな話になってしまうのか。

もうやめてくれって言うほど残念なモデルだが、これでもまだ無利子の一種の話だ。
これが有利子の貸与2種だと目も当てられないように思う。

ただ、1種と違って、2種の上限は12万だ。これはひょっとしてチャンスかもしれない。
計算してみよう。金利はあえて2%とちょっと高めだ。このモデルの優位性はスタートダッシュだ。入学時に必要な70万は、半年で60万の給付と月8万のバイトで48、合計108で前期に38のプラスを作ることができる。これで後期の授業料はほぼ払えた。2年目の春までに72と48、120の貯金ができた。2年目が終わるときには160のプラス収支で3年目の春を迎える。すなわち逃げ切りラインだ。この段階で奨学金は必要なくなる。卒業までの学費は貯めてある。この時点でまるまる2年で給付された借金は288万円。これを毎月8万の返済モデルで返していく。しめて192万円。卒業時には有利子で100万強の借金が残る。

同じく8万で血反吐が出るまでバイトするモデル。一種で無利子の70万、二種で有利子の100万。四年間、缶コーヒーを一本も飲まなかった。
どちらも、生活費は一銭も計上されていない。親元に残って、徒歩通学し、落第しないようにしながら月8万のバイトを全額借金返済にあて、口にするものは親がくれた食事のみ。



うちの息子はこの辺りでギブアップだった。
イヤイヤ、待てよ、お前がやりたがってた一人暮らしのモデルが終わってないだろ、言っとくけど生活コストが入るとこんな可愛いモデルじゃ済まないぞ…
「わかったわかった、金がかからない大学行く。
じゃあ、お前が大学行くっていうなら学費は、ファンドにしてしまおうか。300万の予算切ってやるから、あとは経費計算してみなよ。自宅から通えばほとんどかからないし、家を出る場合のコストとバイト収益見積もりから必要な奨学金と最終負債の予想立ててみたら?多分学費免除でバイトで家賃払って不足分をファンドから切り崩すデザインになると思うけど。
「…なんだかんだで、成績良ければ何とかなるようになってる気がする。
そりゃそうだよ、最も効率いいのは上位20%に投資することで、それ以外の支出はシステムの維持コストだと思われてるんだから。ボリュームゾーンは負債っていう概念は国だけじゃなく全ての集団の共通言語だよ。


まあ、長くなってきたので、総括すると、親に金がない状態の大学進学はこんな感じの無理ゲーです。借金を借金で返すようになったら、そりゃあ多重債務者っていうんだよ。だから、親に金がなかったら給付型を取りに行かなきゃ話にならない。5%の広き門、5%が狭かったら、その先に進んでも多分戦えない。
地方から東京に出てきてバイトしながら奨学金でFランに通ってる、とかいう学生がテレビで現状の厳しさを訴えたりしてるけど、それは厳しいだろう。もともと奨学金は1人暮らしを想定してない。親の仕送りが小諸もとなくて奨学金を生活費の足しにしてるみたいな学生は、最初から経営破綻してると思って良い。
そんなわけで、高校生がこれを聞いてたら、何でもいいから内申平均を最低でも3.5を整えて、親との関係が悪くないならスタートダッシュの70万の現金の確保交渉だけでもしておいてはいかがでしょうか?この2つの条件があるだけでも、だいぶ有利ですよ。もちろんその上で給付が取れる能力があればなお良いですが。この制度上の最も大きなピットフォールは、ろくでなしの親か、金は持っているけど関係が破綻した親を持ってるパターンです。このパターンを給付型以外で救うシステムはどうやらなさそうです。給付金を家計に入れるような例があるようですが、限りなく論外です。子を持つ親なら、子供っていうのは金銭感覚が壊滅的に狂ってるので、進学と経費に関するリテラシーを早いうちに叩き込むべきでしょう。


親に金があるかないかで人生がガラッと変わっちゃうなんて不平等だ!とかいう人がいるかもしれない。でも生まれのハンデの話しちゃうと、僕らがアフリカの奥地に生まれなかっただけでも相当にツイてる。パリスヒルトンが死ぬほどお金持ってるのを不公平だと言ったところで始まらない。不平等は想定されてる。ハンデのある環境からエスケープする方法は、必ず開示されているし、だからこそ常に競争に晒されている。しかしこれは社会が健全だということだ。エスケープすらも隠蔽されて、一部の人間が独占するような社会では、全ての価値が固定化されて、階級は固定化された社会になる。これは歴史が証明している。
現状に文句をつけてもしょうがない。文句をいう前にルールの中で自分を最適化することを考えよう。
これは何も奨学金だけの話じゃなく、全てについて言えることだ。

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