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第57話:終身雇用
・終身雇用の終了に向けて!

若い時は、生活経費が安いんですよ。生活経費ってのは、労働者として生活に必要な必要経費のことだと思ってね。造語だけど。
で、この生活経費は、年取ると高いんですよ。家族がぶら下がってくるからだよね。

一方、
パフォーマンスって、若いうちの方が高いんですよ。まあ、中年が一番高いんですよ。
そんで、年取るとだいたい低くなる。
どの世界もだいたいそう。


これをそのまま給料体系に当てはめるとどうなるかっていうと、若くてパフォーマンスが高い人は高い給料をもらって、若いけどパフォーマンスが低い人は給料が安い。パフォーマンス高い組も、若さを損なう、つまり年取っていくと高い給料を維持できなくなって、能力が低い順に給料が下がっていく。
年取るとほとんどパフォーマンスを発揮できないので給料は最低どころか、職も得られるかどうか怪しくなっちゃう。
そういう社会になってくはず。

どっかで聞いたことないですか?このシステム。
そうです。
プロスポーツ選手の給料って、こうやって決まっているんですよ。こういう給料体系で構成される社会って、どんなもんですかね?
生きていく自信ありますか?
結論だけ言っとくと、その世界は、一握りの天才だけがウハウハで、ほとんどの凡人は、いつ食えなくなるかビクビクしながらかつかつの生活してるような世界よ?みなさん、天才ですか?

さっき言ったプロ野球みたいな社会って、どこかに受け皿があるから成り立つ。例えばね、プロ野球選手をクビになっても、普通に日本人社会で何かの仕事やって生きてきゃあいいんですよ。野球という世界からは脱落してもセーフティーネットが効いてる。もしもセーフティーネットが効いてなければどうなっちゃうのか。一度ドロップアウトしたら、死ぬか犯罪者になるかしかなくなっちゃうような世界。

終身雇用制度ってのは、そういう不安定な社会にしないために戦後に作った概念なんですよ。
わずか70年程度の文化なんですよ。戦争でズタボロになって、このままほっといたら日本なくなっちゃう、って思った。とにかく、生活にせよ、経済にせよ、健康にせよ、何でもいいから安定させなきゃならなかった。
でも、戦後の日本でプロ野球みたいな雇用計画やっちゃうと、国がなくなっちゃう。だから究極のセーフティーネットとして、「一生安心して暮らせる」モデルを国家一丸でやったんですよ。まあ、究極のノーブレスオブリージュだよね。持つべき人が持たずに支えた訳だから。強制的にだけど。

飯を食えなければ死ぬ。だから稼げない人間にも給料が当たるようにしなければならない。
医療を受けなければ死ぬ。だから金のない人間も医療サービスが受けられるようにしなければいけない。
この国の徹底した平等主義みたいな美徳は戦後の日本という国を潰さないために作り上げた急造の概念だよ。
意外とこのことに気が回らない人が多くて、日本人は太古の昔からこういう文化を 持っていたように思っている人が多い。
それはさておき、

さて、じゃあなんで終身雇用が社会を安定化させるのかっていうと、若者と年寄り持っている、生産性と生活経費の乖離をうまく消化するシステムになってるのね。

歳をとって生産性が低い労働者がいたとして、今の価値観からいうと、そんな奴は家庭を持つんじゃねえって評価になるけど、戦後はそうは考えなかった。すべからく国民は国民である限り誰もが家庭と子供を持って、安定的に人口と経済規模を拡大してもらわなきゃいけなかった。どんな無能も子供を産んで増えてもらわなきゃいけなかったのよ。

ちなみに、人が生きるには経費がかかるでしょう?独り身よりも家族を養う方が経費がかかるでしょう?だから、さっき言ったように歳をとれば必ず家庭を持つってモデルなんだから、個人の能力なんて全く関係なく年齢が上がると生活経費が一律上がっていくわけ。金を稼がなかろうが、仕事ができなかろうが、関係なく経費が上がってっちゃう。生活経費っていうのはそのまんま給料だから、給料が上がって行っちゃう。何度もいうけど、今の感覚なら、そんな奴はやっすい給料で家庭なんか持てないって生活に落っこちろよって思うかもしれないけど、戦後っていうのはそうじゃない。何が何でも家庭を持ってもらわなきゃならなかった。そうなると、もう、給料を決める要素は、単純に年齢だけだったわけ。
若い人間って生活経費が少ない。だから給料が少なくても生きていける。生産性がどうとかはもう関係ない。なんぼ貢献しようが、生産性が高かろうが、若いから給料が安いの。
年取ってくと、大体のユニットは生産性が落ちていく。だから一般的に若いから世代の方が生産性が高い。でも、それらを全部ひっくるめて、生活経費の増加に合わせて給料を決めていくよ。俺が稼いでるんだから、いっぱいくれよっていうのはなしだよ、っていう約束をした。
誰と?
国とだよ。
日本ていう国と。
、まずは戦後を乗り切って、安定した国になろう、そのために誰もが野垂れ死なない、子供を持てる国を目指すよって約束をした。

でもね、やっぱり年取って稼げなくなったおっさんを食わせるために、若者が給料安いのにメッチャ働くっていうのは、若者にとっては腹立たしいじゃない?そりゃあそうだよね。

だから、国は1つの重要なアグリーメント、合意を取り付ける必要があったの。
順番だよ、っていうアグリーメント。
順番に給料は上げてやるから、年取るの待ってろ、年功序列、いいね?っていうアグリーメント。


それを納得させるために、終身雇用制度を打ち出す必要があったんですよ。
だって、どこかで終わっちゃうなら成り立たないでしょう?だからこれを認めさせるには、終身雇用は崩れないよって約束する必要があったんだね。

これにはさらにもう1つトリックがある。
単に順番だよっていうだけじゃ、生産性の高い連中は納得できない。いやいや、僕は人より生産性が高いんだから、みんなで割ったら減ってしまうやん、てな具合。だからもう1つのキーワードは高度成長モデルだね。順番に並べば色つけてやるぞっていうの。

本当は1億円もらうような働きをしているやつが若いって理由でひとまずは300万みたいな給料もらってて、今はお前の儲けた金は年取った先輩の給料になっちゃうよ。でも、今はあんまり生産性の上がってない先輩だって、お前くらいの時にはかなり儲けを出してたんだよ。会社が拡大再生産路線に乗ってきたから、若い時にひと息にもらっちゃってたとするよりももっと多くの給料を今、もらえてるんだよ。あの先輩は若い時に安い給料で先輩を養ってたけど、今はさらに大きな実入りを得てる。長い目で見て得してるんだよ。だからお前も、俺が稼いだ分を今よこせとか言ってないで、将来に回しなさい、順番だから。

そういうことですよ。
全ては国を潰さないためですよ。みんなが子供を持てるシステムを成り立たせるために、給料と生産性の乖離を解決する必要があったということなんですよ。そのキーワードが、年次昇給、年功序列、終身雇用制度だっただけです。順番が逆です。終身雇用制度が先じゃないんですよ。
で、
終身雇用制度を成り立たせるために必要な実は成長モデルが保証されてるっていう事実なんですよ。

今日の話のコアに移りましょうかね。
経団連は、終身雇用制度を維持しない舵取りをしたでしょう?これは、2つのことを意味してるんです。

まず、この国は、みんなが子供を産まなくても大丈夫な程度には安定したってことです。戦後が本当に終わった宣言ですよ。
子供を産むことができる人だけが人口の維持に貢献してね、生産性の低い人は自分一人分の人生を生きてね?子供?無理だよ、君には。
そういう社会になっていくよってことですね。
そりゃそうだよ、終身雇用は能力に関係なくみんなが子供を持つために後付けで作った約束なんだから、それが必要ないっていうことは前提条件の「みんなが子供を」、が変わったってことなんだよ。それを肌で感じたければ、スペインとかイタリアとかに行って見りゃあいいよ。なるべく物騒なところに。日本もそんな感じになってくのかもね。

もう1つは、成長モデルの放棄だよね。安定成長はもう望めない。変な話、成長モデルが維持できるなら終身雇用の終了宣言なんかいらないって話でしょう。年功序列も成り立たない。そうなると、年次昇級という概念も無くなって、同一労働同一賃金という考え方になって行くよ。
驚いたことに、これを歓迎している若者がいっぱいいるんだよね。自分をどんだけ過大評価してるんだろう。
話だけ聞いてると、うだつの上がらない定年間際のおっさんを捕まえて、この役立たずが俺より高い給料をもらってるのは不平等だって息巻いてるのよ。なんて恐ろしい。そういうあなただって、自分の同期か後輩に、ちょっと手がつけられない様なとんでもなくできるやつがいるでしょう?あなたのいう様な同一労働同一賃金が浸透したら、あなたの大嫌いな窓際おっさんの給料は三分の一になって、あなたの給料はおっさんより3万くらい色がつく程度になるけど、元の給料の半分以下になっちゃう。ちなみに、さっき出てきた、できる後輩の給料は10倍になるよ。
いやいや、そうなんだって、欧米の給料体系の中で働いたことないでしょう?僕ら日本人の常識とは根底が違うから。そこに一律突っ込みたいですか?って話なんですよ。

まとめるとね、終身雇用が守られないっていうなら、こっちだっていうこと聞かないぞ?みたいに鼻息荒くしてる人たち。終身雇用を中心に組み上げられるキーワード、年次昇給、年功序列、成長モデル、副業禁止で企業と結婚。この辺の縛りがある中で、力のある人はしっかりとポジションどりして自分を社会に最適化させてうまい汁吸ってるんですよ。すでに。社畜だ、とか言ってる人たちのことを鼻で笑ってるんですよ。すでに。こいつらからもっとむしってやる方法ないかな、なんて思われてるんですよ、すでに。
そういう人たちにとって、終身雇用の放棄なんて、縛りの撤廃、利権の解放にしか見えてないんですよ?チャンス到来ですわ。
狼がうようよしてる荒野に檻を作ってね、守られてる羊が、折から出せ!自由をよこせ!って叫んでる様にしか見えなくて。僕みたいに目だけが良くて力のない一匹の羊としてはですよ、なんで檻が壊れそうになってるのを歓迎してんのかわけわかんないな、と思ったんですよ。

ああ、そうだ、この檻の中ではね、内ゲバも起こっていて、大変に結構な状況なの。若い時から生産性が低くて、年取るとさらに仕事しなくなる人たちっていうのがいてね、逃げ切り世代っていうの。もう若い羊の憎悪の対象なんだけど、彼らの話はまた今度させてもらいます。
こんなことばっかり話してるとそのうち刺されるかな。

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