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【香水メモ】Agonist/SOLARIS

鼻屋さんで初めてお買い物をしたときにサンプル購入した、思い出深い香り。

トップノートは明るいピンクグレープフルーツが弾ける。ボトルには「GREEN MANDARIN」の記載もあり、確かにそう言われれば青さや苦みさえ感じられるなぁ、という糖度低めのシトラス。汗滲む夏の日、チェーンのコーヒーショップに立ち寄ったら期間限定のピンクグレープフルーツジュースがメニューにあってつい飲みたくなる、そんな爽やかなイメージ。

しかしそれは一瞬の出来事。体感5分くらいかな?明るいシトラスは一瞬の煌めきのうちに沈殿し、代わりにピーチが顔を出す。こちらは糖度がとても高くて、酸味やフレッシュさはあまり感じられずシロップ漬けにした缶詰の黄桃のよう。私は甘いお菓子はあまり食べられないんだけど、甘い果物に関しては無限に胃に収めることができるので、このあまーい桃をいつまでも堪能したくなる。

うっとりと甘さに浸っていると、1時間程でオゾニックなノートが立ち上る。オゾンノートといえばけっこうキンキンしていて、「90年代メンズ、鋭く爽やか、海、トップノート」みたいなイメージだったのだけど、ソラリスのオゾンは気づいたらふわーっと立ち上がっていて、不思議な浮遊感がある。それでいてどっしりしたピーチはベースにあるままなので、奇妙な二層化が起こる。しかしヘンテコかといえばそうではなくて、綺麗で心地よい。ちょうど地平と宇宙の空のように、確かに別物だけれど調和している。タイトルと内容がマッチしていない香水はたまにあって私はそれを残念だと思うけれど、「ソラリス」は個人的にわかるなぁという感じがする。

そうして不思議な浮遊感に身を任せながら、6~7時間で香りは消えている。時々ラストでウッディ調のベースが顔をのぞかせることもあるが、基本的には徹頭徹尾フルーティという感じがする。香調だけを見れば夏っぽいイメージの香水だけど、暑い日に纏うには私には少々うっとうしい。鋭く突き抜けるようなイメージだったオゾンノートを、まったりした桃が絡めとることで重力を感じるからだろうか。不思議とちょっとだけ重いのである。落ちるでもなく突き抜けるでもなく、ちょうどいい高さのところをふわふわしている。

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