能動経済ポジティブフェミニズム:サイバーハラスメント海外事例資料集と論文「第三次産業革命にフェミニズムが必要な経済的理由」 #N番部屋


論文

「第三次産業革命にフェミニズムが必要な経済的理由」


背景


 日本は現在、有史以来最高に平和な時代と言えます。長年低いと言われ続けた「幸福度ランキング」も上昇して韓国や中国よりは上になってきましたし、犯罪件数も2014年に過去最高を記録したのち下がり続け、2023年には戦後最低を記録しました。
 しかしこれらの統計を楽観的にばかり見ることはできません。なぜなら子どもの精神的幸福度は世界ワースト2位という結果が出ているからです。未成年の死因第一位が自殺という国も日本だけです。不登校の子どもは増え続け、昨年2023年にとうとう29万人に。1クラス2人の不登校の子どもがいる計算です。
 比較的若者が集まるSNSには不満があふれ、「無敵の人」と呼ばれるような犯罪が増え、差別があからさまになり、成功している人が何か不祥事を起こすと完膚なきまで叩かれる「不寛容」があふれています。
 社会不安の大きな要因には「経済」があるでしょう。お金が無くなると何となく不安になるのは人間として当たり前の感情です。日本人の手取りの中央値は減り続けて、「お金持ちでもないけどお金に困っていない」という「中流階級」が、姿を消し続けているのはトマ・ピケティの予想が日本でも当ってしまっている状況と言わざるを得ません。そして日本特有の社会問題として、そのしわ寄せが子どもと若者に集中してしまっているのです。それは単に国費の分配の問題だけではなく、ネット産業への構造転換が、超高齢化社会により全くスムーズに行われていないことが原因だと考えます。そしてそのことそのものが若年層の経済的縮小だけでなく若者の自信を奪い、幸福度を下げる状況にも繋がっているでしょう。
 特に公共機関は、民間企業には在宅ワークを推奨するにもかかわらず、国会や省庁、地方行政から警察組織に至るまで、このコロナ禍を経た今もオンライン化が全く進んでおりません。
 社会の構造転換が進まないことの弊害は、若者の自己肯定感だけでなく経済に大打撃を与えます。
 日本は分厚い中間レベルの教養を持った人材を保有しながら、GAFAMなどのネット多国籍企業にITの分野で食い込めなかったのは、ひとえにこの製造業からネット産業への構造転換を、社会全体を通してできなかったからに他なりません。
 そもそも日本のような教育レベルは高いけれど資源に乏しい国は、ネット産業やコンテンツ産業とは相性がいいはずです。その証拠にすでにアニメやゲームの分野や比較的予算が少なくても勝負できるホラー映画などの分野では、世界的な評価も得ています。2021年には「鬼滅の刃」がハリウッド映画以外で史上初の世界興行収入1位を記録し、日本生まれの「マリオ」は世界中で類似作品が作られ、90年代に始まったJホラー系映画も、韓国や台湾に引き継がれています。
 「類似作品」「世界中に引き継がれている」とは、悪い言い方をすればお株を奪われているという事でもあります。ハリウッドの脚本家たちが、実は日本の漫画を熱心に読んでいるといううわさ話は昔からありますが、このような流出は、経済に大きな打撃を与えていることをもうそろそろ日本全体が自覚せねばなりません。
 弊害は経済だけではなく「ジャニーズ問題」として、世界史上最悪の未成年者への性虐待事件まで引き起こし世界を震撼させてしまいました。
 今回ジャニーズ問題への詳細な言及は避けますが、これも国家権力がコンテンツ産業を国の経済をけん引する重要分野との認識がないことが、問題を拡大させてしまった要因と思われます。

 韓国、中国、台湾などの国の政策と経済状況を見ても、今や国を挙げてコンテンツ産業を後押しすることが、その国を経済的にも潤すことは一目瞭然です。ハリウッドが特殊な成功例ではなくなりました。




目的


 タレントや俳優や漫画家、アニメーターや声優、インフルエンサーの人権や労働環境を整備することは、人権の観点だけではなく経済発展にも不可欠です。人々がコンテンツ産業で安心して働けること。それがまずコンテンツ産業を発展させたいなら必要不可欠でしょう。

 本論文ではその中でも女性への性的誹謗中傷に焦点を当てます。なぜなら現在日本でその分野の調査が全く行われていないからです。参考になる包括的な調査文献も、インターネット上含めてほとんどありませんでした。そのため本論文の海外調査事例はほとんど一冊の海外文献「サイバーハラスメント」ダニエル・キーツ・シトロン著に頼らざるを得ませんでした。
 本論文がコンテンツ産業の誰もが加害者にも被害者にもなることないよう、サイバー空間での性的な誹謗中傷問題をどのように解決するかを考えるときの一助になれればと思います。

 今回は海外事例をなるべく多く、具体的に集めました。本調査だけでは不十分なため、後続の研究者が現れることを信じてここにまとめます。
 

ネットストーキング、サイバーハラスメント事件・海外事例集



●2024.8月現時点での日本語で確認可能な最新海外調査報告
■2024.8月現時点での日本語で確認可能なサイバーハラスメント事件 




●2009年「全米犯罪被害調查」
年間200万件のストーカー事件
25%サイバーストーキング
~女子大学生対象~
「ストーキングが犯罪と 知らなかった」72%
→通報したのは40%
「警察はとり合ってくれない」33%
「なぜ通報しなかった?.
「通報するほどではない」37% (重要ではない)
「警察は助けてくれない」17%
「警察は問題解決できない」13%
「恥ずかしい」3%

●2010~2013年 サイバーストーキング法の
サイバーストーキング容疑がかけられた事件は10件
ペンシルバニアリリリアレケニー都
サイバーストーキング事件を捜査できる スタッフを擁している警察署は 全体の30%


■シャーナリスト、Webサイト「ストレート」ライター
アマンダ・ヘス
ツイッターで脅迫→警察→「ツィーターって何だい? 」「ツイッターとやらをやる必要はない」
警察財団代表理事 ジム・バーマン 「ネットをやるな」「外すに出るなというようなもの」「なぜ・被害者が生活を変えなくては ならないか」

■2008年 女子大生 クリスティン・プラット の同級生 パトリック・マキオーネ事件

フロリダ州警察
FBでマキオーネがプラットにメッセージ
➡ 性的、脅迫的に
・何十もの性的誹謗中傷動画をYouTubeに投稿
・指で銃を撃つまね 「せったいあいつを殺す」
・職場の外に立つ 「お前の命を助けるのはお前だ」
通報したがマキオーネはあなたの住所をまだ知らない ようだから警察は動けない
➡後にこの時サイバーストーキング法は脅迫を禁止 しているから動けたとわかる
2012年裁判所 マキオーネに禁固4年の実刑
サイバーハラスメント 米警察対応の例
「男なんてそういうものさ」
「大したことじゃない。たかかネット上のやりとり。 誰も君のところに来やしない」
「自宅に帰ってコンピューターの電源を切りなさい」
「不快で未熟なネット上のコミュニケーションは 刑事訴追の範疇に入らない」

●国立司法研究所ストーキング犯罪ワークショップ
報告書2010年版
・地区検事にストーキングに関する教育が不足している
・逮捕しても立件を拒んだ例がある。
・判事がストーキングの容疑事実を信じない。
・裁判官たちもストーキンケ理解の追加訓練を受 けてない→軽い判決を出す傾向に

■2013年メリーランドーリ州歌った妻や娘にストーキンクーハラス メント
(レイプ願望の持ち主)
実利禁固8年
最も重いネットストーキングの判決(2020年時点)


●1975年「世界最初のセクシャルハラスメント事件」
「ファーレイの手紙」
事務アシスタントのカーミダ・ウッド
最初に“セクシャルハラスナント را
ニューヨークタイムズがセクシャルハラスメント を最初にそり上げた
「セックスさせるか出ていくか」
・“個人の過ちではなく
“社会の過ち”
それまでは「家庭内のもめ事」「職場でのもめ事」だった
➡「ネットでのもめ事」?

■著名な女性心理学者の体験「ディセント・ドゥ」
1990年代末期。
メンタルヘルス上問題ある子どもを持つ親のネットフォーラムが荒れる。
精神疾患のある男性からの激しい脅迫ていなメールなどの攻撃。
ニューヨーク大学女子法学生ジル・フリポピッチのフェミニストブログコミュニティに、攻撃が集中。
「ここにいる中でジルのケツにファックした奴はいるかい?」
「ジルに対してやりたいことをもっと話そう」
『公式ジル・フィリポピッチレイプスレッド』には彼女の妹の写真が掲載された。
「能無しカント(女性器)」


■2012年8月ステューペンピル事件
オハイオ州ステューペンピル高校フットボール部
16歳の少女が気絶させられるまでレイプされた事件
犯行を撮影したビデオや写真がツイート投稿され、すぐ削除された。
ツイートタグには
「売春婦の身分」
「俺は売春婦には同情しない」
これを見たアノニマスが犯罪とサイバーハラスメントの首謀者を特定。フットボール部員がレイプについて笑いあう映像を公開。
アノニマスのメンバーはレイプ犯と気を失ったまま抱きかかえられる女性の写真を投稿した者の身元を地元警察に伝えた。また、ネットを通じて彼らが逮捕されるように圧力をかけた。

■ブログ「セックスとアイビーリーグについて」の作者リーナ・チェンについてのネットストーキング
ゴシップサイト「ジューシー・キャンパス」に住所公開。
「元カレが彼女に違法薬物を渡していた」
「彼は彼女に加害プレイをしている」
妹も攻撃「ポルノスターの尻軽な妹」
「君も姉さんのように体を売るのかい?」
「ヘルペス持ちで尻軽なアジア人」


■世界最大逮捕者3700人韓国わいせつ動画N番部屋事件■
主犯
博士ことチョ・ジュビン  仁川(インチョン)の工業専門大学を卒業
 2019~2022年までに25人の被害者を脅迫してわいせつ動画を制作し、テレグラムやディスコードなどを使い拡散させ、有料サイト「N番部屋」でビットコインなどを使い大金を稼いだ。
 実刑42年。2021.10確定。

ガッガことムン・ヒョンウク(1995年生まれ)
 2017~2020年まで50人以上の被害者を脅迫してわいせつ動画を制作、拡散、有料コンテンツとして販売。三人のレイプを指示。
2実刑34年。2021.11確定。
『N番部屋』
 わいせつ動画拡散、販売にかかわった3757人が逮捕。245人が拘留された。
 2019年匿名でハンギョレ新聞に通報があり、報道。世論の高まりで2020.2月閣議決定により「テレグラム性搾取対応共同対策8委員会発足。
 同委員会がテレグラム性搾取申告プロジェクト(ReSET)を開始すると、薬物性暴力、知人凌辱画像、公衆トイレ不法撮影動画などおびただしいわいせつ動画が発覚し、加害に加わった人数は単純計算で30万人と推計された。
 現在も世界中で模倣犯が発生している。世界最悪のサイバー性搾取事件と言える。
 2022年から日本ではネットフリックスで「サイバー地獄」というタイトルで観られるようになった。


●●性被害本人や知人はこちらのサイトに相談してください。●●
ネットフリックス提供日本向けサイバー性被害者救済リンク集
WWW.WANNATALKABOUTIT.com




日本のサイバーハラスメント・性侮辱事件


(2004年 スーパーフリー事件代表者に実刑判決14年 2001年5月頃から2ちゃんねるなどの匿名掲示板ではスーパーフリーにおいて輪姦が行われていることが幾度も指摘されていた。スーパーフリーのOBの一人(未逮捕者:サイドキックスから輪姦を持ち込んだ前述の人物)は、インターネット上の2002年10月02日付の日記にスーパーフリーで5人に輪姦された女性がいることを記載していた[11]。しかし、警察がそれらのインターネット上の記述によって逮捕に動くことはなかった。)

2015年 伊藤詩織サイバーハラスメント

2021 旭川いじめ凍死事件(未成年者性的侮辱画像拡散)

2023年 りゅうちぇるLGBTサイバーハラスメント自殺事件
2023年 ジャニーズ被害者サイバーハラスメント自殺事件
2023年 松本人志被害者サイバーハラスメント現在進行中

2024年 千葉麗子サイバーハラスメント
2024年 写真カプセルアルバムコレクション事件現在進行中

時系列


1999年  女性心理学者「ディセント・ドゥ」事件

(2004年 スーパーフリー事件)

2008年  女子大生クリスティン・プラット同級生 パトリック・マキオーネ事件

2012年 ステューペンピル事件

2013年 メリーランドーリ州元妻と娘ストーキンクーハラスメント事件

2015年 伊藤詩織サイバーハラスメント

2020年 N番部屋事件

2022年 旭川いじめ凍死事件(未成年者性的侮辱画像拡散)

2023年 りゅうちぇるLGBTサイバーハラスメント自殺事件
2023年 ジャニーズ被害者サイバーハラスメント自殺事件
2023年 松本人志被害者サイバーハラスメント現在進行中

2024年 千葉麗子サイバーハラスメント
2024年 写真カプセルアルバムコレクション事件現在進行中







 総論に入る前に、私自身が受けたサイバーハラスメント事例もここに掲載します。
 つい最近このハラスメントについて示現舎という政治や社会問題を扱うニュースサイトの三品純記者から取材を受け、これを書いている本日2024.8.23夕方、記事が公開されました。さっそく海外事例によく似た荒れたコメントもつき始めています。

 この事例は私自身が受けたハラスメントではあるという以外に、TBSアナウンサーの御子息が加害者でそれを放置した事件であった場合(2024.8.24時点でTBSはコメントできないという回答・三品氏記事より)、重要な報道を自分の不利になる場合に報道せずに被害を拡大させてしまうというジャニーズ問題の教訓が全く反映されていないということになるため、重要な事例として共有する必要があると判断しました。

刑事告訴証拠画像https://note.com/fpwoman/n/n6b246956207d

示現舎:三品純記者の記事
『「皆で殺そう」「射殺する」「孕ませたい」女性ユーチューバーを 脅すhazdaは TBSアナの子息か?』
https://jigensha.info/2024/08/23/hazda/



まとめ:総論


 能動経済を1から読んでくれている読者、または昔からの私のYouTubeチャンネルの視聴者のみなさんには初田くんはお馴染みの名前で、こんな争いになり、悲しい気持ちになる方もいるでしょう。私も非常に残念です。
 しかし、海外事例とこのように並べてみると、仲が良かった人から突然誹謗中傷されるというのは珍しい事例ではない事がお分かりいただけるでしょう。

 N番部屋のような事件は、規模は大きいけれど事例数としては少なく、圧倒的に、元同級生や元恋人、元夫といった人からの嫌がらせが多い事が分かります。(だからといってこれらの事件を矮小化することはできません。マスメディアの報道が皆無であることも大きな問題です。その弊害として日本でもアルバムコレクション事件という類似の事件が放置されてしまっています)

 ですから、「内輪揉めを大袈裟に騒ぐな」と言った批判は全く的外れなのです。
 そもそもハラスメントやストーキング、ドメスティックバイオレンスは70年代のフェミニズム運動によりそれまで家庭や職場の「内輪揉め」と警察や世間が無視してきた問題を表面化させて法整備を進めてきたという歴史的経緯があります。
 その舞台がリアル空間からネット空間に移っただけで、また「内輪揉め」と片付けようとするのはおかしいのです。
 なぜネットとリアルを切り離すのでしょう?これだけスマホが生活必需品になっている現代社会で、ネットとリアルを切り離す事など不可能です。
 しかもネットは被害者がログアウトしたり電源を切ったとしても、その悪質な投稿はネット空間に漂い続けます。
 「気にするな」や「SNSをやめればいい」などと被害者に努力を求めるのはそもそも間違いであり、行動を改めるべきは加害者です。
 今回、私も身をもって体験して分かった事は、仲間だと思っていた人から攻撃されるのも大変ですが、それに同調するサイバーモブの存在も精神的にダメージを大きく受けます。ネットの匿名文化を守りつつ、言葉に責任を持たせるよう、マイナンバーカードとの紐付けなど、法整備で軽減される部分も多々あるのではないかと思います。
 最近ではXとYouTubeでみんなでつくる党党首大津綾香さんとも対談を繰り返しています。彼女は立候補するにあたり公約としてネットの誹謗中傷問題に取り組んでくれると約束してくれました。
 今期NHKの朝ドラは「虎に翼」で日本初の女裁判官佐田虎子(さだともこ)の生涯。
 ジェンダーギャップ指数は毎年最下位位から数えた方が早く、強制的夫婦同姓の国も世界で日本だけです。
 このような状態はいち早く改善しなければ、国際社会で経済的な競争をするどころではないでしょう。
 海外とは一切関わらないというならいざ知らず、巨大多国籍企業、グローバル社会の旨みだけ享受して、ルールには従わないというダブルスタンダードはそれこそ男性保守のフェミニストを揶揄するネットスラング「二毛作」ではないでしょうか。
 他国から指摘される前に(もうジャニーズ問題で指摘されてしまいましたが)、先進国らしく自ら率先して自国の女性差別撤廃に取り組まなければならなりません。
 そのためには今ある問題を共有しておく事が第一歩と考え、できるだけ分かりやすく具体的に事例をまとめました。
 このサイバーハラスメントの調査研究がここで終わるのではなく、後続のフェミニスト、差別撤廃の活動家、研究者の一助となってタスキが繋がっていく事を願い、ここに私FPもとこがジェンダー平等の長い列に並んだことを宣言し、この論文を終わります。



参考文献


「サイバーハラスメント
現実へと溢れ出すヘイトクライム」
ダニエル・キーツ・シトロン著
2020


公開日:2020年6月
00001.
形式:ペーパーバック
00002.
出版社:明石書店
00003.
言語:日本語
00004.
翻訳者:原田 學植、 唐澤 貴洋、 大川 紀男、 明戸 隆浩
00005.
寄稿者:原田 學植、 唐澤 貴洋、 明戸 隆浩
サイバーストーキングやリベンジポルノなど、ネット上のヘイトクライムを広く対象とする本書。ハラスメント被害の様々な事例を分析するとともに、いかなる法的・社会的対応が可能かを提起する。仮想空間/現実空間の境界の消失点を見定めた名著の邦訳版。

ウィキペディア https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E4%BA%8B%E4%BB%B6


ネットフリックス
「サイバー地獄・n番部屋ネット犯罪を暴く」
https://www.netflix.com/browse/my-list?jbv=81354041