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異色投資本『トレンドフォロー59の啓示』監訳者まえがき全文公開!

世界中のトレンドフォロワーが絶賛した異色投資本、ついに邦訳!トレンドフォロー研究の第一人者であり、書籍『タートルズの全貌』の著者でもあるマイケル・W・コベル氏が、15年間にわたって探ってきた偉大なトレンドフォロワーたちの成功の秘訣が凝縮された一冊!それが『トレンドフォロー59の啓示』です。

彼らは莫大な富を築くために何を考え、どのように行動してきたのか?言葉の内側に潜む真意を紐解き、トレンドフォローの本質を読者(トレーダー)に正確に伝えるべく、監訳者として、実践的投資研究家の盛岩外四(もりいわがいし)氏に白羽の矢が立てられました。

↓↓↓(以下、監訳者まえがきの全文です)↓↓↓

監訳者まえがき―「本書の読み方」にかえて

 ここでは、トレーディング分野の本としては〝ユニークな存在〞の『桁外れの利益をたたき出すトレーディング トレンドフォロー59の啓示』の読み方について書き進めていきます。

 本書のテーマは「トレンドフォロー」です。とはいうものの、トレンドフォローをどのように駆使してトレードすべきなのか、という点については具体的に触れていません。実際、筆者が初めて翻訳原稿に目を通したときの感想は「トレンドフォローをテーマにした自己啓発書か~」というものでした。

 しかし実利主義者のマイケル・W・コベル氏が、そのような無駄なことをするはずがありません。そこで、1つひとつの言葉の意味を熟慮しながら改めて読んでみると、トレンドフォローを深く掘り下げ、なおかつ、さまざまな視点からアプローチし、多くのヒントや啓示が隠されていることが分かりました。ただし、本書を読み進めるにあたっては、頭を普段以上にフル回転させ、〝パズルのピース〞をはめていくように意識することが必要です。ピースがほぼはまれば(すべて、である必要はありません)、トレンドフォローの全体像だけでなく、読後に自分が何をすべきか、それまで欠かせないと思っていたことの多くが不必要で、それらがトレーディングの意思決定を阻害していた、ということもわかってくるでしょう。

「戦略」と「戦術」を定義するための思考作業

 コベル氏は本書のなかで、直接的・具体的な表現を極力避け、婉曲的な表現や暗示にとどめています。まるで、読者が本書に書かれていることを額面どおりに受け取らないよう配慮しているかのようです。なぜなら、トレーダーや投資家の経験や考え、価値観や性格などの違いによって、その受け取り方や解釈は千差万別だからです。トレーディング分野の本というと「いかにして儲けるか」「仕掛けや手仕舞い、損切りのタイミングをどのように計るべきか」といったことが具体的に書かれているのが一般的です。トレーダーや投資家である読者、あるいは相場の世界に興味がある読者にとっては、それこそが唯一無二の関心事であり、それが期待の中心にあるはずです(ただし、そうした本に書かれているとおりにトレーディングをして儲かるかどうかは、別の話ですが……)。しかし、それをいい意味で裏切ってくれるのが本書です。

 トレンドフォローに限らず、トレーディングの戦略も戦術(具体的なトレードルール)も、たったひとつではありません(もちろん、ご存じですよね!)。戦略は「何をするか」、戦術は「それをどうするか」と定義すれば、「トレンドフォロー」という戦略に基づいて、「どのようにトレードするか」は読者が考え、答えを導き出すものです。ただしその際には、トレンドフォローという戦略にまつわる、あらゆる言葉を定義し、それらを充分に理解する必要があります。つまり、コベル氏はトレンドフォローという戦略だけでなく、市場や相場、トレーディングに関連するあらゆることを、〝考え直すために〞〝自分なりに再定義するために〞〝必要なことと不必要なことを切り分けるために〞思考することを提起しているといえます。本書はいわば、「トレンドフォロー(あるいはトレーディング)の哲学書」なのです。

トレンドフォローの迷宮(ラビリンス)へようこそ!

 本書は59のパートで構成され、それぞれが独立しています。そのためコベル氏が書いているように、最初から読む必要はなく、どこから読んでも構いません。各パートは、トレンドフォローを定義したり、優位性を理解したりするために必要な〝パズルのピース〞にあたります。この点を認識してから読まないと、筆者と同様に、「トレンドフォローをテーマにした単なる自己啓発書」という印象で終わってしまいます。

 各パートの冒頭には、偉人や哲学者、著名なトレンドフォロワーやトレーダー、経営者や学者、著述家などの言葉、映画の台詞、楽曲の歌詞などが登場します。いずれも各パートを象徴する内容です。これらと本文とを関連づけることによって、トレンドフォローが一体どういうものなのか、を探っていきます。そうすれば、トレンドフォローの重要性が少しずつわかってくるはずです。とはいえ、一読してわかる内容でもないため、普通の本以上に「思考作業」が求められます(誤解を招かないように一言加えておけば、難解でも、読みにくい内容でもありません。文章に含まれる情報量がすさまじく多いのです。それに考えなければならないことも深く、広く、膨大です)。本文のなかにも冒頭と同様に暗示する言葉がちりばめられています。これらがトレンドフォローとどのように関連しているのかを紐解き、考えながら読み進めると、まるで〝トレンドフォローの迷宮(ラビリンス)〞にでも入ったかのような錯覚に陥るかもしれません。しかし、それこそがコベル氏の狙いではないかと思います。なぜなら、トレンドフォローという器を「何」で満たすかは、トレーダーや投資家である読者次第だからです。

誤解の多いトレンドフォロー

 まず考えなければならないことは、「トレンドフォローとは何か」ということです。日本語では「トレンド追随」という訳語があてられることがありますが、よりわかりやすくいえば「トレンドに従う」「順張り」です(これだけでも、自分なりに定義したり、答えを出したりするのは至難です。後述しますが、たとえば「トレンド」とは何か、「トレンドに従う」とは具体的にどのような状態か、などです)。

 しかし実際には、かなり上昇してからポジションを取る手法と誤解されている面があります。つまり、「トレンドをフォローする」「トレンドに従う」ことが、どういうことなのか、をしっかりと定義・理解できていないトレーダーや投資家が非常に多いということです。プロといわれる人たちであっても、です。

 「トレンドフォロー」を考えるためには、「トレンド」と「フォロー」を分けて定義する必要があります(決して言葉遊びではありません。具体的にどのような状態を指すのかを決めなければ、先に進めません!)。これこそが、コベル氏による読者への問題提起です。特に、トレンドは非常に身近な存在であるにもかかわらず、その定義を明確にしていない人が多く、トレンドという言葉を意識したことがない人もいるくらいです(トレンドに乗り、大きな利益を得た経験があっても、です)。トレンドフォローが誤解されているように、トレンドという言葉もまた軽視されているのです。

 本書のなかで書かれているように、「トレンド」とは過去のものです。「いま現在のトレンド」は存在しません。要するに、目で見てわかる状態がトレンドというわけです。だからこそ、「かなり上昇してからポジションを取る手法」という誤解とあいまって、軽視されているのでしょう。そもそも、トレンドが発生しなければ、儲けることはできません。それくらい重要なことです。ウォーレン・バフェットでさえ、買った銘柄がピクリとも動かなければ、あるいは下落し続ければ、〝伝説〞にはなっていなかったはずです。ただしトレンドとは、何も上昇相場だけを指すわけではありません。下落相場もまたトレンドです。

 もう1つ重要なことがあります。トレンドフォローの話題となると、必ずといっていいほど出てくるのが、「私も15分足で短期のトレンドフォローをしています」という話です。トレンドフォローとは一般的にポジショントレード(長期のトレーディング戦略)といわれます。ここで多くの人が注目するのは「長期」という言葉です。つまり、本質的に「短期のトレンドフォロー」というものは存在しないのです。

トレンドフォローが長期トレードに類する手法とみなされる理由は、トレンドが発生し、それが継続する背景には、たとえば、社会構造の変化や中央銀行の金融政策の変更、中長期の景気循環、イノベーションによる経済状況の変化などがあるからです。これらのことは、数分や数時間、数日間、数週間といった短期間に起こるものではありません。トレンドフォローに基づいたトレーディングで桁外れのリターンを得るには、ある程度の期間が必要になるため、ポジショントレードと混同されているといえます。

トレンドフォローで唯一重要なのは「価格」

 しかし、トレンドフォローで最も重要なのは「期間」ではなく、「価格」です。価格が唯一無二の存在といってもいいでしょう。たとえば、ある市場の価格が高値から20%下落したら下降トレンド入りと定義されるように、です。このなかに時間の概念はありません。つまりトレンドとは、価格を主体に考えなければならず、時間はあくまで客体なのです。この点をしっかりと理解しておかないと、トレンドを定義することが難しくなるだけでなく、迷宮に入ったまま彷徨(さまよ)うことになります。

 今度は「フォロー」です。これも誤解の温床になっているのが、英語を日本語にするときの訳語のあて方です。英語の辞書で「follow」を引くと、「〜のあとについて行く」「追いかける」という訳語が最初に出てきます。人によっては、トレンドフォローを「ほぼ天井圏で高値を摑みにいく手法」というイメージが先行しがちです(場合によっては、「史上最高値でようやく買う手法」と曲解する人もいます)。しかし、トレンドフォローは価格が主体ですから、たとえば、直近4週間の高値をブレイクアウトしたらロング・ポジションを取り、直近4週間の安値をブレイクアウトしたらショート・ポジションを取る、という有名なタートルズの手法をみても、ほぼ天井圏で高値を摑みにいく手法では決してないことがわかります。トレンドフォローに別の日本語をあてれば、「上値追い・下値追いの手法」となるでしょう。

 トレンドフォローとは簡単にいえば、トレンドに従う戦略です。つまり、ある一定の条件を満たしたら買いポジションを取りますが、その逆の条件を満たせば、それまでのロング・ポジションを手仕舞うと同時に売りポジションを取るツーウェイの戦略です。一方、少なくとも株式市場に参戦する多くの人たちにとって一般的な戦略といえば、バイ・アンド・ホールドでしょう。こちらはロングオンリー、ワンウェイの手法です。多くのバイ・アンド・ホールド投資家が下落相場で意気消沈してしまうのは、下落相場という期待とは逆方向へ動いたときの対処法を持ち合わせていないからです。彼らにとって下降トレンドでの選択肢は、ストップロス注文がヒットしてポジションを解消したのちに割安と判断して下落途上で買い向かう逆張りか、ナンピン買いをするか、塩漬けになるか、のいずれかです。少なくとも、逆張りやナンピン買いはトレンドフォローとは対極にある手法で、「塩漬け」はあり得ません。相場がクラッシュしようが、バブル相場になろうが、どちらの向きにも対応するのがトレンドフォローなのです。これだけでも圧倒的に有利ですし、塩漬けになる時間の浪費もありません。

「結果」は重要だが、最も重要なことは「過程(プロセス)」

 株式投資の世界では、「次のテンバガー(10倍になる銘柄)候補はこれだ!」「資金倍増をもたらしてくれる短期急騰銘柄は○○」などという言葉が躍っています。こんな言葉を見聞きしただけで、「自分もそんな儲け話にあやかりたい」と期待に胸を膨らませることでしょう。期間を別にすれば、これこそトレンドをフォローすることなのです。しかし、これは「結果」にすぎません。トレーディングの世界は結果が重要ですし、御託(ごたく)を並べても儲からなければ意味がありません。

 とはいえ、どのようにしてテンバガー銘柄を射止めたのか、資金を数十倍や数百倍にしたのか、という「過程プロセス」のほうがより重要です。仮に、破産するようなリスクを取った結果、大きなリターンをたまたま得たのであれば、その後にすべての儲けを吐き出し、さらに大きな損失を被る可能性があります。つまり、どのようにしてトレンドに従い、それに乗り続けたのか、あるいは、どのような戦術を駆使したのか、という過程を重視する必要があるということです。長期的にみれば、〝まぐれ〞だったのか、〝必然〞だったのか、で結果は大きく変わります。確かに、〝まぐれ〞でも大きな利益を獲得するという経験を経て、開眼(かいげん)するトレーダーは少なくありません。しかし、偶然だけを前提に市場に資金を投じるのは自殺行為です。

 コベル氏は「トレンドに従い、それに乗り続けるために重要なことは、リスク管理、もしくは資金管理」と述べています。たとえば、上昇トレンドにある相場で、どの程度の反落(含み益の減少)を許容するか、です。含み益がみるみる減少するのを目の当たりにすれば、決済ボタンをポチッと押したくなるのが人情でしょう。しかし、トレンドがどこまで伸びるのか、相場の反転が単なる反落ではなく、本格的な下落相場に発展するかどうかは、その時点では誰にもわかりません。なかには、「相場の状況を見ていれば、ある程度はわかる」という〝心眼〞の持ち主もいるでしょう。いずれにしても、トレンドを定義するときには、トレンドの発生はもちろん、トレンドの終了も定義する必要があります。同時に、トレンドをフォローしている間、どの程度まで反転リスクを負うのか、も明確にしておかなければなりません。

 ところで、コベル氏は本書のなかで、著名なトレンドフォロワーのリターン実績や資産規模を示し、トレンドフォローの破壊力の凄まじさを説いています。まさに「論より証拠」です。また統計学の用語を少しだけ用いてトレンドフォローの特徴や優位性も端的に示しています。

 ここまで「トレンドフォロー」という、とてもシンプルな言葉の定義について若干の考察をしてきました。繰り返しますが、決して言葉遊びをしようとしたわけではありません。市場も相場も基本的に数字の世界です。つまり、何事を定義するにも言葉ではなく、数字ですべき、です。そうでなければ、「トレンドフォローをどのように実践するか」というルール作りも曖昧になってしまいます。戦略と戦術を具体的に定義するためには、過去の相場データを紐解き、科学的根拠に基づくべきです。これらの作業は決して簡単ではなく、かなり面倒で、時間もかかりますし、試行錯誤も必要です。それでも、ヘトヘトになるまで考えに考え抜き、読者ご自身のトレンドフォローの定義を完成させていただきたいと思います。筆者の役割はここで終わりです。かなり七面倒くさいことを書き連ねてきましたが、コベル氏の書き口はとてもライトで、読みやすく、難解さのかけらもありません。そして、ときに情熱的に、生真面目に、皮肉交じりに、わざと遠回しに、トレンドフォローの世界を垣間見せてくれます。同時に、トレンドフォローを実践するのに障害となる要因に対しては、完膚なきまでに真っ向から否定しています。

 それでは、トレンドフォロー研究の第一人者、マイケル・W・コベル氏の世界を〝探究心と好奇心〞を持ってお楽しみください。

2022年2月
〝実践的〞投資研究家・テクニカルトレーダー盛岩外四

〜〜〜 監訳者まえがきここまで 〜〜〜

以上、『トレンドフォロー59の啓示』の監訳者まえがき全文となります。

損失を限定しながら利益を最大化していく投資戦略、それがトレンドフォロー!価格が動く方向に乗りさえすれば、それが偶然であっても利益を上げることができます。

市場はいつだって正しく、けっして間違うことはありません。間違うのは決まって投資家の判断です。だとすれば、常に正しい市場に従うのが利益を上げるための最大かつ唯一の方法です。

もし、あなたがトレンドフォローについて理解を深めることで、その偶然を必然に変えていけばパフォーマンスはどうなるでしょうか。

本書を手に取るすべてのトレーダーが迷宮(ラビリンス)から脱却し、桁外れのリターンを得るトレーディングを実践されることを願っています。

トレンドフォローの核心に興味を持たれた方は、以下特設ページにて詳しくご紹介していますので、是非ご覧ください。


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