ファイターズの体温

どうも皆さんこんにちは。まただいぶ間が空いてしまいました、Foxtrotです。
今日はファイターズの不思議なところ、外様も生え抜きもみんな仲が良くなるのはなんでかなーってことに思いを馳せてみたいと思っています。

きっかけは例によって質問箱でいただいた、リスナーの方の投稿です。
大田泰示のファンでいらっしゃると思われるその方曰く、「移籍選手も溶け込みやすそう」なチーム、と。言われてみると確かに、日本ハムファイターズというチームは選手のドラスティックな出入りが他チームよりも多いのに、当然ながら球団もチームもそれをわりかしすんなりと受け入れているように見えますし、それどころかファンのおおよそが(全てとは言いません、さすがに)入団選手を希望をもって迎え入れ、退団選手も暖かく見送る、そんな文化があるように思えます。
実際にファンとして言うなら、「出入りに関してネガティブなイメージが少ない」というだけのことなのですが、それは他のチームのファンからするともしかしたら少し変わった特徴なのかもしれません。

昨今FA宣言した選手への、ファンであったひとたちの様々な反応を見れば分かりますが、出て行った選手どころか獲得した球団のGM(と言うとおおよそどこかわかってしまうんですけれど)にまで恨み言をぶちまける過激なツイートも見ますし、ちょっと前ならサインの入った赤いユニフォーム(と言うとこれもおおよそどこかわかってしまうんですけれど)がフリマサイトに雑巾として売られていたなんて言う哀しい話も聞きます。正直な話ハムでも皆無というわけではなく、生え抜き選手がチームを離れることを皮肉を込めて「卒業」と呼ぶことがあるのも当然知っています。この用法は糸井選手のトレードの時に見かけるようになりました。
まあ当然ながらファンだって人間ですから、応援していた選手がチームを離れることは寂しいのです。しかし、日本ハムファイターズでは、おそらくそのことにいちいち目くじらを立てて「裏切り者め」「よそ者め」と罵っているような、言い方は悪いですが粘着質なファンは少ないと思います。北海道民は割とミーハーで、新しい物に食い付きますから、良くも悪くもそこのところとの相性もあるんですけれどね。まあ、とにかくそういうことには慣れた物で、「しゃーない、次でも頑張って」って言える人の方が多分多い。多いんじゃないかな。まちょっと覚悟はしておけ。

思い返せば2004年、突然降って湧いた北海道移転。当の道民からしても、「定着するのか?道民飽きっぽいんだよな」って思っていました。ヒルマン監督の色の濃い目の野球、新庄剛志と稲葉篤紀というスターとリーダーの加入があり、ファンたちはもとより、これまで野球に興味のあまり向いていなかった層、そして野球といえば巨人でしょ、であった層にも人気の渦が届き始めます。ダルビッシュを1位指名して話題作りも欠かさないあたりさすが。2006年にはさっそくの日本一。瞬く間に人気も急上昇。でも初めての喪失が。ガッツのFA。我々は新庄の引退と共に打ちひしがれた。実はこの時はガッツに対して「やっぱり東京がよかったのか」と残念がる声は多く聞かれました。まあでも実は我々はガッツを嫌いにはなっていなかった。というのは今年のコーチ就任時の皆さんのポジティブな声で判明しましたね。ずっと待ってたんのがバレた、結局(笑) そういえば FAだけじゃありませんね、この年大活躍した生え抜きの「大将」武田久や「スペル違い」マイケル中村は未だにこの球団で愛されています。マイケルなんかたまに来日してメディアに捕捉されて、近況が伝わってきたりするんですよ。そんな彼らが先鞭をつけた「育成のハム」のイメージはこの後にもずっと強く印象づけられていますし、この年のオフには巨人と相思相愛と思われていた長野久義を強行指名したり、独自路線をより色濃くします。
2009年には二岡智宏が林昌範と共にやってきて、賢介稀哲小谷野糸井あたりも花開いてと「育成と的確な補強」のイメージはこの辺でガッチリ固まったといえます。2010年には斎藤佑樹を見事獲得、オフには建山義紀がレンジャースへ、稀哲が横浜へ。人気選手の加入と喪失が同時に起こるのは日常茶飯事へ。なんなら2012年には栗山監督就任、賢介がアメリカのジャイアンツへ行ったと思ったら大谷翔平の強行指名です。前年に菅野智之を強行指名して揉めてるにもかかわらず。これで完全に「ハムはやると言ったらやる、スター選手には必ずいく」というのが確定。感情のジェットコースター。

ざっくり振り返ってもこれだけ名前のある選手の出入りがあるわけです。ブンブン容赦なく振り回されちゃう。これらの波乱万丈な15年を通してファンが学んだことは、「ファイターズにゆかりのある選手が活躍すると、それがどこであろうと嬉しい」ってことです。
結局のところ、感情的には「ウチの子」なんですよね。ウチでダメだったエスコバーが横浜で活躍していると、嬉しい。ウチでも活躍していた糸井がオリックスや阪神で頼りにされているのをみると、誇らしい。ウチから惜しまれつつも去って行った高梨がやはり神宮でも飛翔しているのを聞くと、あいつ変わってねえな、と苦笑い。ウチでハラハラさせてくれた鍵谷が巨人でなんか堂々としているのをみると、頑張ってるじゃねーか、でも内心ドキドキ。
それもこれも、みんながハムで一生懸命やっていたのを知っているからです。みんながハムで、チームのために、北海道のためにって毎日泥だらけになって練習していたのを知っているからです。
そして逆にうちに来てくれた選手たちが、この北の大地でもう一度自分の居場所を見つけようともがくその姿もちゃんと見ています。夢追い人稲葉篤紀だってそう。ちょっと色男の二岡智宏も、天然気味の藤井秀悟も、気の優しい木佐貫洋も、ガラスのエース杉浦稔大も、そしてもちろん未完の大ロマン、大田泰示だって。何かどこかに傷を隠して、自分の輝ける居場所を探して、この地にやってくる選手たち。そんな彼らもこの北海道では必要とされて来るのです。そして彼らもまた、チームの、北海道のために泥だらけになるのです。

僕らファンはこれまで見てきたたくさんの選手との出会いと別れから、知っています。この日本ハムファイターズという球団は、選手一人ひとりにちゃんと役目を求めて、必要な選手だから来てもらっているってことを。どんな選手でもわけもなくぞんざいに扱ったりしないってこと。そして万が一ウチで可能性を広げてあげられない選手にはもしかしたら別の必要としてくれるチームがあるかもしれないってこと。これを教えてくれたのは当の選手たちはもちろん、数々の批判や冷たい視線を受けてもブレずに自分たちを貫いてきた北海道日本ハムファイターズという球団の、野球と、野球選手に対する熱い志です。ヒルマン監督も、梨田監督も、栗山監督も、その志をちゃんと受け取れる人達だから監督を頼まれて、そして引き受けてくれたのです。その志が正しいことの証に、僕らのファイターズは常勝軍団ではないけれど、近年では珍しいくらいちゃんと頂点を極めることができる球団に育っている。志が示す実績は、何よりも信じるに値する。僕らは共に歩んでいける。

海峡を越えてわざわざこんな寒いとこに来てくれた彼らの一生懸命な姿、面白おかしい姿、嬉しそうな姿、悔しそうな顔、時には涙。球団も選手たちも僕らファンにたくさん見せてくれる。そしてその一挙手一投足から夢と希望と興奮と熱狂をもらっています。だから、そんな選手たちがどこへ行ったってウチの子だって、段々と思えてきちゃう。もちろん、チームは生きていますから、その流れに乗れなくて居場所を失うことだってある。そんな時、「もっと輝ける場所が待っている」と選手を送り出すことは勇気のいることです。だってウチでやれなかった選手が他のチームで目一杯やれたら、獲得した側とすれば多分「なんでウチで…」って絶対思うじゃないですか。ところがどっこい、ウチのチームはその勇気を持っています。「ハムの見切り」なんて言われることもありますけど、いらないからぽいっと放り出しているんじゃないって僕らは信じることができちゃう。そりゃ側から見ればドライと思われるかもしれないけど、僕らはそうじゃないって信じて応援することができるんだからしょうがない。去って行った彼らに敵として相対してチンチンにやられても、次は負けないからな、と拍手を送ることだってできるんですよ。
なぜって?そりゃ、どこへ行ったって我が子は可愛い物でしょ?成長と、成功を祈って送り出した我が子が違うステージで光を浴びるのがうれしくないわけがない。たとえ思うようにいかなくったって、僕らお人好しだから「また戻っておいでよ」なんて思ってるんですから、怖いもんなしですね。

こんな僕らだから、札幌ドームでマウンドに1人きりのピッチャーが追い詰められると「おいおい1人なんかじゃないぞ!!俺らがついてる頑張れ!!」なんて思ってせめて届けと拍手なんかしたりする。僕が選手だったら胸が熱くなって涙が出ちゃうね。ファンがあったかくて、球団が熱いこのチームに入ってきて、冷たい疎外感なんか味わえるわけがない。この球団にいるうちは絶対に1人になんかしてやらない。その代わりに見せてもらうんですよ、選手たち一人一人の夢が正夢になるその瞬間を。優勝したい?僕らも同じだ、存分に暴れてくれよ。ホームラン王になりたい?こちとらその瞬間を待ってるんだよ、ガンガン飛ばしてくれよ。メジャーに行きたい?大いに結構。やってやれよ、日本野球の、ファイターズ野球の力を見せつけてこいよ。ウチにきたからには、そしてどこに行ったって、「ウチの子」が花開く瞬間を、僕らは待っている。

…なんて、ちょっと浪花節が過ぎますかね。でもほんとですよ。球団が訝しがられるようなおかしなことしないで、ちゃんと伝えられるものは伝えてくれる。だから信じて応援できるし、繋がりを感じられる。栗山監督の人となりもうまくマッチしているかもしれませんね。
まあ、裏を返せば球団にうまくしつけられているのかもしれないですけど、そうだとしても、ファンのことよくわかっているなあと思うし、逆にファンも球団のことよくわかっているなあ、と思うんです。「なにを、ファイターズだけがあったかい球団みたいなツラすんなよ」って思われるかもしれないですけど、少なくともファイターズはそういう球団の一つであることは間違いないと思います。

来年オフは僕の推しの西川遥輝がもしかしたらMLBにポスティング移籍するかもしれない。でもそのニュースを聞いて僕は寂しさと同時にワクワクを感じたんですよね。僕の夢見た素晴らしい西川遥輝が世界にその名を轟かせるかもしれない。全然何にも僕らは手伝えてないけど、もしそうなったら世界に向けて「西川遥輝は僕が育てた」って顔できるでしょ?(できない) それって絶対楽しいよ、ダルビッシュで、大谷翔平で、味をしめているからね、こっちは。

そんなわけですから、まだ見ぬ未来のF戦士、僕らは北の大地で君と出会えるのを待っていますし、今そこにいるF戦士、君がまだ見ぬ夢の姿を実現するのもワクワクしながら待っています。早く会いたいな、かしこ。

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