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第4回:中学生編|月刊ムーを奨めてくる人々

月刊ムー。
言わずと知れた、学研が誇る有名なオカルト雑誌である。

私は毎月購読している訳でもないのに、何故かこの雑誌と縁ができてしまったことがある。

昭和天皇が崩御されたその年、私は中学最後の年を迎えていた。
そんなある日のこと、昼食時に、級友の男子K・Sが、私の前に突如現れたのだ。
そして私の前に突き出されたのは、あるものがしこたま入っていた紙袋であった。
訝しんだ私は、彼に「これは何?」と尋ねると、K・Sは「これはお前に必要なものだ。」と言うのであった。

紙袋の中を恐る恐る覗いてみると、あの月刊ムーが、山のように積み重なっているではないか。
これには私も驚いた。

正直、彼の意表を突いた行為は、私にはとても迷惑であった。
こういっては何だが、ムーの表紙は何かおどろおどろしくて、いかにもオカルト的な雰囲気であり、私は苦手だったのである。
ましてや中を開くと、「私の恐怖の心霊体験」的な話が当時はよく載っていて、それらの話に私は全く興味がなかったのだ。

しかし、彼は何故かこの大量のムーを私に渡し、「それがお前に必要だ。」と言って迫ってきたのである。

ここで級友K・Sについて少し話そう。
彼はクラスの男子の中でも、特に霊能力の強い人物であった。
恐らく彼は私の霊的体質を感じ取り、善意から霊的な情報を私に提供しようとしてくれたのだろう。

ここで問題なのは、今まで私は級友の男女に、霊感を持っていることを一切話していないのだ。
理由は簡単で、霊感云々等と教室の中で口を滑らせれば、頭がおかしいと思われたり、現実逃避をしていると思われることが嫌だったからである。
その為、私は霊感について堅く口を閉ざしていた。

にも関わらず、K・Sはそれを看破し、私に大量のムーを持ってきたのである。

これはジョジョの奇妙な冒険、第四部の主人公・東方仗助の台詞にある、「スタンド使いはスタンド使いにひかれ合う。」のような感覚に近いのではないだろうか。
言い換えれば、霊感者は霊感者にひかれ合う、という引き寄せの法則になるのだろう。
即ち、周波数の法則によって、結びつけられた出来事なのだと思う。

東方仗助 ジョジョの奇妙な冒険 第四部 / 集英社

そしてこの周波数の法則は、次の新たな霊感者の男を引き寄せたのである・・・。
それが同じクラスの男子M・Tである。
これも不思議なのだが、私は彼に対しても、霊感のことを一言も発していないのに、当然のように霊の話を振ってくるのだ。
しかも彼は、この手の話を他の男子にはあまり振らないではないか。

要するに、彼は相手を見て霊の話をしているのである。

そして困ったことに、霊感者は霊感者にひかれ合う法則は、いつの間にかK・SとM・Tを結びつけてしまったのである。

更に困ったことに、この二人は霊の話において仲が悪い。
彼らは私と違い、霊が見えるタイプの霊能系の人達であった。

補足すると、ここでは霊感者という言葉を使っているが、この言葉は霊的な世界では一般的ではない。
言葉の表現上、霊媒と霊能の区別をして話を展開すると専門的になってしまうので、取り敢えずその中間的な意味として、霊感者と記しているにすぎない。

ある日、彼らは近所の大きな公園の池に霊が出る、という件で揉めていた。
それは「池の中央に出る。」「いや、池の端に出る。」という話で、真っ向から意見が分かれた。
(私からすれば、霊は水のある所に寄ってくるのだから、深夜になれば、池の中央でも端でも関係ないと思うのだが・・・。)
彼らはその話にけりを付けるべく、真夜中にその池に確認に行くというのである。
そして、その勝敗の証人として「私に立ち会え。」というのだ。

もちろん私は、吐き捨てるように即却下した。

このように、霊能系の人間というのは「一人一人霊的な周波数が異なる」のである。
そのため、霊能者Aに見えても霊能者Bには見えなかったり、AとBには見えるが、霊能者Cには見えなかったりする。
要は、霊能者同士でも霊の見え方が異なる、ということである。

これは私の中学時代のムーの思い出であるが、まさか社会人になってからも、職場の一つ年上の女性から、ムーを差し出されるとは思ってもみなかった。
そして、かつてK・Sが発した言葉と同じように、「これはあなたに必要な本だから。」と彼女は私に言った。

その彼女が霊感者だったことは言うまでもない・・・。

ムーといえば、飛鳥昭雄先生。