才能は、ない


「才能はない」

そう思うことにしている。


「好きでやっている」

その事実を思い出すようにしている。


人前で歌ったときの胸の高鳴りの記憶と


気を失いそうになるほどの高揚感と


わたしの音楽を

「仕事の休憩時間に」

「ダンスのストレッチ中に」

「毎日、自分の店で」

「朝起きて子どもを想う時間に」

聴いている人が実在するという事実。


それだけを忘れないように
その事実を大切にするように


まだ何者でもないわたしの音楽を聴いて
たまたま出会ったひとたちの口から出た
純粋な「すごい」とか「すき」の言葉
そのひとたちがわたしをみるときの綺麗な目


ものすごい価値があることを忘れんとこ


不安定になるときというのは
自信がなくなっているときで


自信がないってときはいつだって
納得できる量をやれていないとき


誰よりも苦手なはずなのに
なぜか辞められないこと
そこに魔力が宿る


なんとなく上手くなったひとほど
すぐ満足するようにできている


残るのは、苦戦した人間だ



2019.07.30 キツネカオリ

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