東京の孤立感に負けたときの話

やほ、キツネカオリです。


たまには、むかし話でも。


MOROHAの「遠郷タワー」
聴いてたらいろいろ思い出しちゃった

わたしは
18歳で岡山を出て関西で活動した後
23歳のときに1度上京している。


1年ほど都内に住んでいた。
豊島区のスタジオ付き物件。


2部屋あって、片方が生活部屋。
間に防音用のがっちゃんこできる分厚いドアがあって片方が防音室。

しかも地下にはグランドピアノが何台か置いてあって、
住民は自由に弾いて良し。家賃6.5万。

まさに音楽をするのに最適な神物件。

でも、なんだかんだ外に出ることが多くて
現実ではそんなに活用できてなかったな。


なんとかして東京という地に存在を刻みたくて、年間100本ライブして、被写体とかしてみて、動画配信して、あらゆるSNSを更新する日々。


そんなことを一年やって、女性シンガーソングライターのライブによく行く人の間で「なんか見たことある名前」くらいになってたのかな。


いくつか事務所から声をかけてもらったり、キャパ4万とかの味の素スタジアムでキーボードを演奏する機会があったり、東京のスピード感と勢いに圧倒される日々だった。


だけどいつのまにか気持ちはカラッカラで、とくにツテがあって上京したわけではなかったからか誰かとなにかを分かち合うこともなく、気づいたら逃げ出したくなっていた。


「どんなことでもやってやろう」と意気込んだはずなのに弱気になっている自分のことも嫌で、かといって頑張り続けられる使命感を持てるほどの現実的結果が出ているわけでもなかった。


根拠のない自信と好奇心だけで乗り込んではみたものの、周りには都会育ちの出来のいい人間が余裕そうに羽ばたいていて、生きてるステージの違いを見せつけられた気がして、もともと強かった劣等感は日に日に肥大していった。


東京の人はみんな忙しいから、さらりとした人間関係をこなしていかないと日々が回らない。だからさっぱりしている傾向があると思っていて、それが合理的で楽だとも感じていたけど、視点を変えれば自分がどうしようもなく沈んだとき頼れる人がいないという状況でもあった。


これ以上自分を奮い立たせるための材料が見つけられなくなっていたときに普通の企業で働けるという話は魅力的だった。


そして、誰にも何も言わずに消えた。



急に消えたから気にして連絡をくれる人もいたけど、後ろめたさだとか自分の不甲斐なさだとか人間不信だとかを諸々こじらせて、詳しいことはなにも言えず、全部遮断してしまった。


2年ほど姿を消していたかな。


でも結局やっぱり音楽したい...ってなって悩んでいたときに
プロ奢ラレヤーに奢りに行ったのが2018年12月。
「うちシェアハウスやってるんで住んでいいっすよ〜」
とあっさり言われ、2月末から埼玉の奥地にあるあいまいなハウスに入居。


人づての形で改めて東京(住んでるのは埼玉だけど)にきて半年くらいになるけど、こんなにも動きやすいものなのかと感動してしまう。


Twitterで全然知らないアカウント100人にいきなりDMでウザい動画を送りつけてライブに呼んだりしていたときのことを思うと、恵まれすぎている。


冷たい部屋と
のっぺらぼうの街。

動き回っても渇くばかりで
埋め方が一向にわからない
空白、空白、空白。

嫌なことも嫌じゃないと暗示をかけるもんだから
日に日に自分がわからなくなっていって
手を伸ばしても背伸びしても空を切るばかりで何も掴める気がせず
でも悪あがきはやめられず体力を使い切って気絶するように眠り
吐き出せなかった感情は過食嘔吐で吐いたことにして
イビツな笑顔を無理矢理貼り付けて彷徨う


いまでもあのときの孤立感を思い出すと寒気がするし、夜な夜なコンビニをはしごして菓子パンを買い漁って噛んで吐く行為で気持ちを落ち着かせないと気が済まない状態に陥らないことは純粋に素晴らしい。


「そんなの普通じゃん」と思われるのかもしれないけど、「普通」を普通に手に入れられていることは純粋に素晴らしい。


幸せのハードルが低めなのかもしれないが、なんだかんだ毎日ありがたいと思えることがあって死にたみを感じることがない状況は奇跡だなあと感じるし、安定感の源になっている人々に自分ができることはなんなのかっていうことを考えている。


安心して現状に満足すると怠惰になっていくのは人間のよくない習性。


恐怖心と執着心に突き動かされて動き回って自滅するのもいかがなものかと思うが、あのときの熱量といまの安定感なら、いままでじゃ見えなかったものが見えて辿り着けなかったところまで辿り着けると思っている。


最近は、ポエトリーリーディングの装飾なしの言葉に積極的に突き刺され殴られるようにしている。彼らの音は胸ぐらをがっちりと掴んできて、忘れそうになっていた渇望を呼び覚ましてくれる。


MOROHAの「米」という曲をよく聴いている。

守るってなんだ?食わしていくことか?
それもそう でも それだけじゃないな
生きるってなんだ?息してることか?
それもそう でも それだけじゃないな

MOROHA 「米」


サポートするとキツネカオリを育成することができます。 「たまごっち!」みたいなもんです。