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~輝きを蘇らせた男、アレクシス・サンチェスが魅せた執念のランニング~

2月9日、セリエA第23節。インテル対ミラン、言わずと知れた世界的なダービーマッチ、勝った方が街の象徴と呼ばれる街を挙げてのお祭りであり戦だ。
私の贔屓であるインテル・ミラノは22節現在勝ち点51で首位ユヴェントスを3ポイントで追走していた。しかし前日、首位ユヴェントスはヴェローナに1-2での敗北、この時点で23節のミラノダービーで勝てば首位浮上というチャンスが巡ってきた。
それと同時に思わぬタイミングで大一番でスタメンを任された選手がいた。アレクシス・サンチェスだ。


サンチェスはチリ出身の31歳、10-11シーズンにウディネーゼで頭角を現し、11-12シーズンに当時の欧州王者バルセロナに約29億6000万円で移籍しその後もアーセナル、マンチェスター・ユナイテッドといったビッグクラブでプレーする選手となる。
しかしサンチェスは18-19シーズン冬にマンチェスター・ユナイテッドに移籍した際、かのベッカムやロナウド、古くはカントナ等が付けた伝統の背番号7を背負うが全くと言っていいほど活躍出来ず、選手としての地位は落ちていた。
しかし19-20シーズン夏に移籍市場終了ギリギリにインテルへのストレートローンが決定。かつて輝いたイタリアの地で再起を図った。


しかしサンチェスの置かれた立場は難しく、既にセリエAのシーズンが始まっていた中インテルの新指揮官であるアントニオ・コンテは3-5-2の2トップに成長著しいラウタロ・マルティネス、そして同じユナイテッドから獲得した大型FWロメル・ルカクの2トップで戦うチーム方針を固めていた。いわゆるサンチェスはこの両者が負傷した際の3rdチョイスととしての加入だった。それを受け入れたサンチェスは加入後短い時間でのプレーが多く、また初ゴールを決めたサンプドリア戦で退場。更には代表活動で年明けまで復帰できない負傷を負ってしまった。
それを見たインテルは冬にコンテの教え子、チェルシーのオリヴィエ・ジルーと獲得寸前までこぎ着けていた。ただジルー獲得は直前で破談。そしてカリアリ戦で退場し、2試合の出場停止を受けたラウタロ・マルティネスがいて急遽負傷明けのサンチェスに出番が回ってきた。
ビッグクラブでの経験は豊富だがミラノダービーの独特の雰囲気はどの選手も慣れないという。
この冬トッテナムからインテルに移籍した現代最高のプレーメーカー、クリスティアン・エリクセンもダービーの予想スタメンには名を連ねていたものの、ダービーのスターティングメンバーには名を連ねていなかった。
サンチェスはラウタロ欠場の穴を埋めるべくルカクとコンビを組むことになる。
このダービーの前半はイブラヒモヴィッチが復帰したミランが中盤を制覇、サンチェスとルカクは全くボールを触れる機会がなく、チームとしても引き気味で内容としては最悪の2失点をしてしまう。
このままでは首位がまた遠のく…実に10年振りのセリエA制覇を目指すインテルにまたも大きな壁が出来てしまう。
しかし後半にインテルは息を吹き返す。51分にカンドレーヴァのシュートのこぼれ球からブロゾヴィッチの左足一閃。
54分に諦めず前からチェイシングとランニングをし続けたサンチェスに絶好のチャンスが訪れる。


ペナルティアーク付近でボールを持ったゴディンがスルーパス、ミランのGKドンナルンマとDFの間を通すようなパスだが若干パススピードが強く見えた。猛然と走る男がいた、サンチェスだった。サンチェスはゴディンのこのスルーパスに追いつきドンナルンマと1VS1になる、角度が悪いがシュートに持ち込んでも弾いて再びCKを得ることやそのまま決めるという手段もある中サンチェスはトラップしたままマイナスへの折り返し、押し込むだけのべシーノの同点ゴールをお膳立てした。


ビッグマッチの得点率が高いべシーノも当然褒めるべきだがあの場面、サンチェスが魅せたスピードは全盛期そのものだった。
このゴールで追いついたインテルはその後CKからデ・フライが体制を崩しながらヘディングシュートを決めて逆転。このゴールを見届けたサンチェスはエリクセンと交代。サンチェスが下がる際はスタンディングオベーションだった。
勢いを止めることないインテルはATに途中出場のモーゼスのクロスからエースルカクが力強くヘディングを押し込む。
「ミラノの王は俺だ」と言わんばかりのセブレーションを見せてタイムアップ。
インテルは首位浮上というミッションを成し遂げた。

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オスカー賞発表同日だったこの試合インテル
公式Instagramにはルカクのセブレーションに
「BEST ACTOR」と輝かしいコラ画像が

正守護神ハンダノヴィッチが不在の中パデッリも踏ん張った。コンディションが万全ではないがエリクセンも魅力あるセットプレーも魅せた。同じく冬に加入し決定的な追加点をモーゼスはアシストをして見せた。アシュリー・ヤングは冬加入組唯一のフル出場、約10.7km走り続けた。
チームとしての首位浮上である。


だが私の目に留まったのは紛れもなくベンチで温めながらチャンスを待ち、かつての栄光といったプライドを捨てたサンチェスが全速力でボールを追いかける姿だった。

次節インテルは3位ラツィオとの直接対決、3月の頭にはユヴェントスとの首位攻防戦が待ち受けてる。恐らく次節はラウタロも復帰して報道によるがハンダノヴィッチもユヴェントス戦には復帰するというニュースもある。

この冬場、この2~3月を乗り切って5月にシーズン終えた際に私はこんなことが言えたらいいなと思ってる


「サンチェスのあの走りがあったから…」と

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