ばあちゃんの通夜
黒ネクタイは、確か実家だ。
母「お父さんが持ってくよ。御香典もまとめて用意してくれるはず。」
ありがてぇ。忙しすぎて、用意できてなかったのだ。
午前に仕事を片付け、埼玉からはるばる、いざ、会場に着く。ギリギリになってしまった。
いとこ弟と、父親が迎えてくれた。
父「あのさ、御香典持ってきてる?」
「え?俺はないけど...」
父「ホテルに忘れちゃったわ。」
俺「おお、なるほど。とりあえず黒ネクタイもらえる?」
父「ホテルに忘れちゃったわ。」
俺「....。おお、なるほど。」
忘れてた。
血が繋がってるんだったわ。
いとこ弟「ばあちゃんなら、そんくらい気にせんだろ!」
俺「まあ、確かにな!とりあえず胸元隠しながら行くわ。」
よく見ると、いとこの靴もネイビーのスニーカーだった。
お通夜が始まった。
実は、お通夜に出るのは、これが初めてだ。
みんな健康すぎるのだ。
ご焼香になった。
親族なので、序盤にやることになる。
俺(どういう流れだっけ?ボソッ)
父「ま、適当でいいんだよ。」
とりあえず父親の真似をしようと見てたが、お辞儀をする方向が前の人と全然違うので、参考にならなかった。
お坊さんのお話が始まった。
さっきまで雨が降っていたが、ついさっき虹が出ていたらしい。急いでいて気づかなかった。最後まですごいなばあちゃんは。
最後に記念撮影だ。
前列なので、ネクタイバレるやんけ。
カメラを向けられる。
これ、どういう表情作ればいいんだ。
とりあえず、希望に満ちた顔をした。
いとこ弟「お前真顔だった?」とニヤニヤしながら聞いてくる。
俺「いや、凛々しい顔だよ。」
いとこ弟「全力で笑顔作ってやったわ。」
俺「まじか!それでよかったのか!」
いとこ弟「当たり前だろ。ばあちゃんだって笑ってるからな!...ばあちゃんの顔見るか?」
無機質な箱の中に、ばあちゃんはいた。これが死に化粧か。眠っているみたいだ。
俺「ダメだ。これ以上直視できねぇ。辛すぎる。」
いとこ弟「だろ?俺は、日曜日、その瞬間をずっと見てたんだぜ。その日は泣きながら病院一周したわ。」
一通り終わり、何人かの方とお話をしていたが、俺はもう大丈夫そうかなと思い、親族控え室に向かうと父親がいた。
いとこ一家は、ずっと外で話しているので、父親と長い時間、控え室に入ることになった。
いうて実家に帰った時も、たくさん話すわけではない。お茶を淹れてくれた。
ビジネスホテルに泊まるんだけど6000円する。
「宮城のくせに高いな!」
しかも、シングル空いてなくて8000円。
「宮城のくせに混んでんな!」
「最近、主流は線香だったんだけどなぁ、最近は、ご焼香なんだなぁ。」
「ご焼香ってそもそもどういう意味なんだ?」
「知らん。護摩をたくって言うんだよ。」
どうでもいい話を続けていたら、「旅立ちの唄」がBGMで流れている。
明日がばあちゃんとの最後だ。