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BASE社の上場に関する考察

BASE社の上場についてまとめたました。
また、素人による分析ですので拙い部分が多いと思いますが、ご容赦いただけると幸いです。
(※11月の初旬に書いた内容となります)

1. 上場までの経緯

【沿革】
2012年12月  BASE株式会社を設立
       Eコマースプラットフォーム「BASE(ベイス)」の提供開始
2014年3月  「BASE」にて「BASEかんたん決済」及び
      「BASEかんたん決済」にて「クレジットカード決済」の提供開始
2014年12月  オンライン決済サービス「Pureca」を開発する
       ピュレカ株式会社を取得し、子会社化(2018年5月に精算)
2015年3月  「BASE」の「BASEかんたん決済」にて、
      「銀行振込決済」の提供開始
2015年9月   オンライン決済サービス「PAY.JP」の提供開始
2015年12月  「BASE」の「BASEかんたん決済」にて、
       「後払い決済」の提供開始
2016年6月   ID決済サービス「PAY ID」の提供開始
2017年6月   お支払いアプリ「PAY ID」の提供開始
2017年9月  「BASE」の「BASEかんたん決済」にて、
       「キャリア決済」の提供開始
2018年1月   「PAY.JP」、「PAY ID」の事業部門を分社化し、
        PAY株式会社(現、連結子会社)を設立
        新規事業として金融サービスを行うことを目的に、
        BASE BANK株式会社(現、連結子会社)を設立
2018年12月   資金調達サービス「YELL BANK」の提供開始

【創業者】

・鶴岡裕太氏

平成元年生まれ。paperboy & co.(現・GMOペパボ)の創業者であり、都知事選にも出馬したことで知られる家入一真氏のスタートアップ「CAMPFIRE」で学生時代にインターンをしていた。やがて鶴岡氏は、家入氏と様々なWebサービスを作るようになり、2012年末にスタートしたのが「BASE」。

2. 現在の経営状況

【IPOに関しての数値】

A 価格

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吸収価格が100億円以上とマザーズとしては大型IPOであった。
公募割れとなったが現在は徐々に株価が上昇している。

B 株式数

 ⅰ全体概要

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売出株式数の割合が35%と比較的大きいことに対して、公募株数が3%と極端に少なく、slackのとった直接上場という形に近い。

 ii上場時の株主構成

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発行済み株式の大半をVCが占めている。またCEOの持ち株が比較的少ない。今回のIPOの目的は社内整理をしようとしたと考える。
上場したのにベンチャー・キャピタルが株式の大半を押さえてしまうと、新たに参加する投資家は「いずれ大きく売られるだろうな」と考え、購入を控えるのが合理的である。
そうしたリスクを抑えるために、予め外部投資家が株を放出しておくのは、上場市場のことを考えれば、むしろ健全なことと言えます。

【全体の業績】

A 売上高と経常損失

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B 販売管理費

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2017年頃からプロモーション費に投資していることがわかる。
プロモーション費を調節することによって十分に事業の経常利益を操作することができることがわかる。

【Eコマースプラットフォーム「BASE」の業績】

A ショップ数

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1ヶ月で売上があったショップ数が年々増加している。プロモーションに多額を投資するようになった2017年以前と以後を比べると四半期ごとのショップの増加数が平均867ショップから平均1,499ショップに増加している。
また、2019年8月時点で80万ショップ開設されたとの発表があったのでアクティブ率はおおよそ3%程度と予想される。

B 流通額

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1ヶ月で売上があったショップの平均月間流通総額も年々増加している。

C 商品単価

販売手数料が6%+40円である。
※1決済あたり3.6%+40円の決済手数料及び3.0%のサービス利用料がかかる。ここから、ユーザー側に複数購入へと誘導する導線の工夫が見える。

マクロ的に平均テイクレートを求めると

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ミクロ的に平均テイクレートを求めると

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したがって商品単価は3000円から5000円程度と推測できる。

D CPA

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広告によりどれだけショップが増えたかの考察である。
1アクティブショップ開設に必要な投資はおおよそ12.5万円程度である。1ショップあたりの月間流通総額は今後も増加すると考えられるが最新値の13.5万円と仮定すると、13ヶ月間継続して利用してくれると広告費が回収できると考えられる。
※広告費に関しては、TVCMもあるため、開設者訴求のみならず、購入者訴求もあるだろうが、購入者にとっては自分が買うお店がBASEで作られたかどうかをさほど気にしていないはず。基本、広告費は開設者獲得と考えるのが妥当だろう。

【オンライン決済サービス「PAY.JP」の業績】

A 流通額

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流通額が急増していることがわかる。

B その他の考察

取り扱い者数などの情報はなく、プランも複雑なので、テイクレートのみ考察する。
PAY.JP事業の総流通額106.7億円に対して総売上は2.9億円であるためテイクレートは2.72%である。

3. 外部環境

【市場規模】

 A 日本

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市場規模は増加傾向であり、EC化率が低いことを考えれば今後も伸びしろがあると考えられるだろう。特にスマートフォン経由率が高い。

B 世界

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小売市場全体に対してEC市場の割合は12%であり日本は遅れている。
中国の小売市場自体は米国と同じくらいであるが、EC市場は米国のおよそ2.5倍も大きい。

【競合他社】

 A Stores.jp

Stores.jpは2つのプランを用意しており、位置付けは以下通りである。

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対してBASEは1つのプランのみ提供し、その位置付けはStores.jpのフリープランよりも限りなく無料に近い形で、リスクなくネットショップをスタートできる土壌を整えた。(細かい詳細を示すと煩雑になるため省略した)

比較したときのBASEの現在の強みはプラン一つというシンプルさと誰でも負債無くネットショッピングを開業させられる点である。

これに対抗するように2019年7月からstore.jpも無料プランの規制を大きく改定し、BASE並みの手軽なプランを打ち出した。

B Shopify

カナダ発のスタートアップ企業。175カ国82万店舗が参加しており、株価は4年前と比べて10倍と現在急成長中である。
国別の普及率は以下の図のようになっている。

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月額料金は最低$29からと高めであり、Stores.jpのスタンダード版のさらに売上が高い顧客向けのものとなっている。

現在の問題はグローバル化する上でのローカライズ化である。例えば決済方法において日本はクレジットカード主流であるがドイツは銀行振り込みが主流といった問題もある。その点ではBASEを買収も無くはないと思う。

4. 今後の経営について

【上場について】

公開価格割れをしたものの、今後は順調に株価が上昇すると考えられる。
・公開価格割れの理由
配当に関して、BASE社は設立以来配当を行っておらず、株主への恩返しも含めた上場であったため、上記のように公開価格割れしたことはある程度許容するべきであろう。上場したもののベンチャー・キャピタルが株式の大半を押さえてしまうと、新たに参加する投資家は「いずれ大きく売られるだろうな」と考え、購入を控えがちである。そうしたリスクを抑えるために、公開価格割れ覚悟で予め外部投資家の株を放出しておくことは、上場市場のことを考えればむしろ健全なことである。

・今後について
ロックアップも問題なくかかっており、社内留保もうまく進んでいるのであろうと推測される。業界としてもかなりのスピードで成長しており、黒転するのも時間の問題であろう。今後は投資家に大きなリスクをおわせることなく売買に参加させられるため需要が上がり、株価は緩やかに上昇していくと考えられる。

【業務について】

・現時点

現行プランのまま、ユーザーを獲得しきることが重要である。
競合と比較した時のBASEの強さはやはりシンプルなプラン体系と、負債なしでネットショッピングをすぐ開業できるという点である。しかしながら顧客が売上を上げていくにつれて売上に対する手数料の低いもの(Store.jpやshopify)にシフトしていくと考えられる。その前に潜在顧客をどれだけ囲えるかが重要である。モデル的に移行やで戻りが起こりにくいと考え、階層に分けたUXの設定が急がれる。
現在の獲得顧客数で既にstores.jpと並んでいるためstores.jpには既に競り勝ったと評価する。おそらく日本市場は取り切ることができるだろう。

・今後考えられうる事業

目論見書には、以下の4つの方向性が示されている。

1)サービスの認知度向上・新規ユーザーの獲得
2)プロダクトの強化
3)データ活用の強化
4)決済機能以外の付加価値

これ以外にも現実的には、独自クレジットの作成や海外事務所の設立により越境ECなど海外市場への拡大などできる可能性のあることは様々である。

5.まとめ

【業務について】

会社としての規模拡大に伴って、新規ユーザーの獲得はもちろんのこと、上記でも述べたように階層によりプランを分けるということも明記されている。データ活用は、研究費や開発費もかなりかかるため直近ではないと思うが、今後よりユーザーのニーズにこたえていくためには必要であろう。特に興味深いのは、ネットショップを提供するBASEが直接販売にも目を付けていることだ。うまく運用すれば、広告にもなりまたオーナーに対して付加価値の提供にもつながり、BASE内での競争を促す効果も期待できる。

【会社としての強み】

・確実な経営戦略
・独自の決済ライン保有
・広告運用など営業の強み

主に3つ挙げさせていただいた。
理由としては上記でかなり述べているが、BASEという事業はユーザー数の獲得の伸びも順調で他の事業などに手を伸ばしたくなるところではあるが、地に足を付けてかなり戦略的に経営を進めている印象を受けた。GMOの熊谷さんはじめ様々なサポートしていただける方に恵まれており、会社として弱みがあまりない印象で、組織づくりも素晴らしく、これからも今後の事業展開によって最適な人事を投与できるかが重要である。
何より数値への達成スキームを会社として持ち続けていることがこの会社のない寄りの財産であろう。

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