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【最速公開】どこよりも早い、池田良子「実子誘拐ビジネスの闇」(飛鳥新社)読書ノート【ネタばれあり】(その4)

〔写真〕あまりにも表紙が恥ずかしいので、カバーかけてもらいましたw

【前記事】

四方八方にケンカを売りまくり...

こんばんは。
今夜もちょっと遅い時間に更新です。
ここからはだいぶすっ飛ばして書いていきます。

今日は「第3章 ハーグ条約を"殺した"人権派弁護士」。
P.110からなんですが、ここから矛先がぐにゃぐにゃし始めます。

まずケンカを売ったのは外務省。

2018年5月15日、フランス・パリにおいて、外務省・日弁連で開催されたハーグ条約に関するセミナーで、芝池俊輝弁護士の講演をやり玉に挙げています。
参加者によりすべて録音されていた。(P.110)などと書かれていますが、今までの情報ソース同様、もちろんネットに落ちている情報です。

ここで音源は全て聞くことができます。

四十五条のハーグ条約のなかで、子の返還拒否事由を規定しているのは二条ほどである。そのことから明らかなとおり、返還拒否は条約の主眼ではない。極めて例外的な特殊事情がある場合にのみ認められるものだ。「実子誘拐」を防止するための条約なのだから当たり前である。
にもかかわらず、芝池弁護士は、その極めて例外的な場合にしか認められていないはずの規定の適用を受けるためにはどうすべきか、延々と三十分説明したのである。
(P.111)

離婚後共同親権推進派である海外のNGOを中心に、このセミナーは当時から批判の的となっていました。
この論旨もネットのまとめ情報をかき集めたようなものですが、ちょっとここから謀略っぽい書き方になってきます。

ハーグ条約国内実施法28条の返還拒否事由の説明で、芝池弁護士が条約解釈として、DVのケースは返還拒否事由にあたる旨の説明をしたところ、筆者は、ハーグ条約にはこのような規定はないと指摘します。(P.111)
国内実施法の解釈を芝池弁護士は説明しているのですから、条約に文言がないという著者の指摘はそもそも的外れなのですが、著者は、「ハーグ条約十三条が全く想定していない」(P.114)国内実施法28条を創設し、条約にない条文を勝手に付け加えたという主張なのです。

親に子を誘拐させ、でっちあげたDVの証拠を持って帰国させられれば、日本の裁判官が返還拒否を認めてくれる。
(P.115)

そのための証拠として芝池弁護士が説明した三点を、筆者は「でっちあげ三点セット」(P.116)と罵倒します。
・病院の診断書
・シェルターに入っていた事実の証明書
・警察への相談記録
がそれです。

国際的な判例法が形成されつつあるDV返還拒否事由

秒で論破できるような話ですが、筆者が指摘する、ハーグ条約13条1項b号に掲げられている子の返還拒否事由ですが、確かに、"子への"害悪や重大な危険を規定していますが、制限的ではあるものの、DVやファミリーバイオレンスも含まれるよう解釈されつつあるのが、各国の裁判所の判例となってきています。

転換点となったのは、2010年7月6日に欧州人権裁判所大法廷で下されたノイリンガー事件判決です(0 Neulinger and Shuruk v Switzerland (App No 41615/07) ECHR (GC) 6 July 2010,(2012) 54 EHRR 31)。この中で、欧州人権裁判所大法廷は、「家族生活を尊重する権利」に対するが侵害がある場合、欧州人権条約8条に違反するとしたうえで、ハーグ条約13条1項b号にいう「重大な危険」の解釈として、子の最善の利益が最重要であり、欧州各国の裁判所は、子と家族に対する踏み込んだ調査を行う義務がある、としたものです。
少々婉曲的ではありますが、DVやファミリーバイオレンスのケースに返還拒否を妥当とする解釈に道を拓いた本判決については、欧州各国で大論争を引き起こすことになります(ハーグ条約はもともと、いわゆる本案判決を想定した条約ではないため、ノイリンガー判決に批判的な判例も出ています。)が、現在も欧米の裁判所でDVやファミリーバイオレンスによるハーグ条約13条1項b号に関する裁判は数多く争われており、日本だけが例外なわけではありません。

日本政府はDV対応を条件として批准方針を表明している

ハーグ条約については、2013年の加盟時(本書では2014年とされているがこれは発効日であり誤りです)において、女性弁護士を中心に反対論・慎重論が数多く出ており、その多くがDVがあった場合にも返還を強制されることでした。
そのため、政府はDVや虐待に最大限対処することを閣議了解したうえで批准方針を表明しており、日本政府の国際法上の対応に何ら不整合な点はありません。

よって、著者の池田良子のP.110~117の主張は、海外の裁判例とも日本の批准方針の経緯に関する事実と相違し、根拠のないものです。

"人権派弁護士”だけではなく、公明党も槍玉に挙げて...

しかし、著者の池田氏の暴走は止まりません。

この加盟における条約の”骨抜き”の策動の正体として、人権派弁護士のほかに、公明党まで槍玉に挙がっているのです。(P.118~125)

著者はその攻撃の材料として、2014年5月9日付の公明新聞を取り上げていますが、へー、公明新聞なんて購読しているんだ。。。
なーんだ、ググれば出てくるじゃん。

どこまでも安普請な本です。。。
でも、この記事読んでいるんだから、知っていますよね?

締結方針を表明したのは、民主党政権だってことが抜けていませんか?

「実子誘拐」防止条約とまで絶賛する池田氏としては、この功績は外してはいけないところじゃないですかねーwwwwww

でも、そこは華麗にスルー。

人権派弁護士の皆さんは、「与党となった公明党とその背後にある創価学会に近づき、ハーグ条約を徹底的に骨抜きにするよう国内実施法に細工をすることに作戦を変更した」(P.120)そうです。

で、ちらつく公明党・創価学会の影というわけと。

なぜ、国会議員の名前は伏せられていたのか

第3章まで読み終わって、ああ、これで分かりました。
(その2)の記事において、FPICによる面会交流の問題点を指摘した国会議員の名前が意図的に伏せられている事実を指摘しました。

これは公明党の浜地雅一議員だったのです。

つまり、こういうことです。

①筆者の池田氏は、この連載当時、すでに公明党を悪玉に挙げることを決めていた。
②しかしそれでは、公明党の浜地議員が面会交流の問題点を指摘した国会質疑を「実子誘拐ビジネス」攻撃の材料として使えなくなる。(論旨が一貫性を欠いてしまう)
③名前を伏せちゃえ!!

ですか、クッソダサいですよ。w

(この連載続く!)

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【分野】経済・金融、憲法、労働、家族、歴史認識、法哲学など。著名な判例、標準的な学説等に基づき、信頼性の高い記事を執筆します。