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拡散を生むクラブ公式アカウントのツイートを探る~サンフレッチェ広島の例~

■要約すると
・クラブ公式Twitterアカウントのツイートを集計してみた
・ツイートをカテゴリに分け、リツイート数比較してみた
・拡散されやすいカテゴリはぜひ強化したい

■筆者:seizmen(@seizemen
 サッカーを愛する社会人。サッカーとは一切関係ない仕事に従事しているものの、頭の中はサッカーのことで一杯なフットボリスタ・ラボ一期生。応援するチームはサンフレッチェ広島とチェルシー。しぶとく、したたかに戦うサッカーがたまらない。
 ドキュメンタリー番組『All or Nothing』のマンチェスターシティ回を見たいがためにAmazon Primeに加入したが、その他のオリジナル番組にすっかりハマりながら今回の記事を執筆。

SNSの活用は王道of王道


 Jリーグが開幕して25年。サッカー界にもそれ以外にも様々な変化があったが、「より多くのファンを増やす」ということは「既存ファンの定着」とともに不変のテーマである。特に近年においては、様々なSNSを駆使して既存・新規ファンにリーチすることは『王道』のアプローチともいえる。

 中でもTwitterは最もポピュラーな手段であり、J1からJ3までほとんどのクラブが活用している。海外サッカークラブにおいても同様である。試合日程やスターティングメンバー、試合当日に開催されるイベントの様子やクラブの公式なリリースなど、様々な情報を発信するツールとなっている。

 「より多くのファンを増やす」という観点では、そのようなSNSで情報が拡散され、より多くの人に届けられるということは一つの大事なポイントである。直接クラブのTwitterアカウントをフォローしていない層にも、情報が届けられるためである。Twitterにおいては「リツイート」というアクションで情報が拡散される。

 今回はその「リツイート」を指標として、Jリーグクラブが発信する情報のうち、どのようなジャンルのツイートがより拡散されているかを探ってみる。対象としたのは、私が愛してやまないサンフレッチェ広島だ。

調査概要


調査対象クラブ:サンフレッチェ広島
調査対象SNS:Twitter
対象ツイート期間:2018年1月1日~9月30日
対象ツイート数:990ツイート
概要:
・上記期間中のツイートを独断と偏見で全32のカテゴリ分け
・各カテゴリにおける1ツイートあたりリツイート数の数値を算出


上位10カテゴリは…


 以下が上位10カテゴリとなった。


 1位は選手移籍情報。サンフレッチェ広島から他クラブに移籍する選手や、他クラブからサンフレッチェ広島に加入する選手に関する情報を発信したツイートである。このツイートの多くはオフシーズン、特に12月~2月に集中して発信される情報である。

 2位には災害や復興支援に関するツイートであった。2018年は7月の豪雨災害が中四国を中心に襲い、9月には北海道で発生した地震が大きな被害を残した。これらの災害に対する義援金の呼びかけや、応援メッセージが発信され、大きな反響を得た。
 また今シーズンよりサンフレッチェ広島に加入した、ティーラシン選手の母国であるタイで洞窟遭難事故の際にも、激励のメッセージを発信した。

 3位、4位は1位と共に、主に新シーズン開幕前に発信される情報となった。新ユニフォームや新チーム体制(主将、背番号、スローガンなど)は新シーズンの開幕を待つファンにとっては待ちきれない情報である。Jリーグの試合が無い期間を悶々とした気持ちで過ごしているファンが、思わず拡散してしまうのかもしれない。

 
 5位にランクインしたのは公式戦の試合結果である。他のシーズンと比較していないため判断できかねるが、今季の好調なパフォーマンスがリツイート数をけん引している可能性がある。

 参考までに、試合結果情報を発信している33ツイートの1ツイートあたりリツイート数をを試合結果別に計算してみると以下の通り。

 サンプル数が少ないものの、結果に連動して1ツイートあたりリツイート数が多くなるという結果となった。


この結果を受けて…


 さてまことに勝手ながら、以上結果を受けて「より多くのファンを増やす」ためにできることを考えてみる。なお実際にSNSを運用されているクラブ担当の方は、限られたリソースの中で尽力されているということは承知のうえである。現在のサンフレッチェ広島におけるSNS運用方針を批判するような意図は断じてなく、プラスアルファでできることを空想した、1ファンの呟きとして聞き流していただければ。

 先に述べた通り、「より多くのファンを増やす」ことに焦点をあてる。

 考えられる一つのアプローチとしては「ストーリー」である。拡散されやすいカテゴリとして1位にランクインした移籍情報から、新加入選手の情報を発信する際を例にしてみよう。どのようなプレーが得意で、前所属クラブではどのような結果を残しているのか、ということももちろん重要な情報である。そのうえでより多くの人にその選手を、ひいてはクラブを応援してもらうとすると「ストーリー」を持たせても良いではないだろうか。

 それは例えば、選手の経歴やキャラクターである。クラブ加入のお知らせと共に、高校、大学、前所属クラブでのエピソードを発信する。イメージしやすいのは、サッカーメディアが発行している選手名鑑かもしれない。近年の選手名鑑はプレーのことだけではなく、ピッチ外の様々なエピソードを紹介していることが増えている。

 そのようなエピソードのどこか一部分に受け手が共感を覚えると、おのずと「気になる」選手となり情報を追うようになるかもしれない。近年は海外クラブを中心として、新加入選手のお知らせをする際にツイート+動画で紹介するケースも増えているので、そのような手法と組み合わせても良いだろう。やはり労力の問題はつきまとってしまうが、今回のような調査で「拡散されやすい」ということが分かっているジャンルであれば、優先順位を高くしてパワーを割ける。

 動画活用の話とかぶってしまう部分もあるが、動画や画像などを有効活用することも忘れてはいけない。選手の顔と名前が一致するきっかけになったり、スタジアムの楽しそうな雰囲気を伝えたりする役割をもつ。今回の調査で5位にランクインした試合結果のお知らせ。試合終了直後ということで仕方ない部分もあろうが、サンフレッチェ広島のツイートは少し寂しい気がする。

 現在は、少し時間を置いてから活躍した選手の写真を載せることなどでフォローしている状況だが、拡散されやすさを考えると試合結果と共に画像などを添えられると良いように思う。試合結果や活躍した(であろう)選手、ひいてはユニフォームやスポンサーもより印象に残りやすくなると考えられる。画像を刷り込み続け、サブリミナル効果を狙おう。

 今回は「より多くのファンを増やすこと」に絞って述べさせていただいたが、もちろんクラブが直面しているのは新規ファンだけではないし、またSNS運用だけでもない。だからこそ、現在の状況を定量的に分析し、目的や優先順位を明確にすることは大事なことであると考え、このテーマで調査を行った。まだまだ深堀りの余地はありそうだということも分かったため、引き続き分析していきたい。


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