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ビデオゲームはサッカーをどのように表現してきたのか

要約すると
・初期のサッカーゲームはアクションとしての楽しさが重視されていた。
・次世代機の登場と共に3D表現と選手AIが導入された。
・現在オンラインで11人対11人の試合が実現しています。

文・とめ(@tome_beta)
元ゲームプログラマー。現在は画像処理、機械学習が主な仕事。日韓W杯からサッカーの魅力と戦術の面白さに惹かれ現在に至る。 最近のお気に入りはサッリとランゲニックと相馬直樹。その時に面白い事をやればいいじゃないという精神で、内容がころころ変わるまとまりの無いブログを書いてます。
https://tomex-beta.hatenadiary.jp/

(注)本文中、以下のような略称を使います
・ファミコン→FC
・スーパーファミコン→SFC
・プレイステーション→PS
・セガサターンー>SS

◆サッカーゲームの創世記
1983年にファミコン(FC)が発売されてから、初めて発表されたサッカーゲームはそのものズバリのタイトル【サッカー】です。中身を見てみると、選手はゴールキーパーを含めて6人、ボタンを押した長さでパスとシュートを切り替える、守備では相手と重なればボールを奪う、といった少々チープな内容でした。ただしサッカーが決してメジャースポーツでなかった時期であることを考慮すると、育成年代で行われるミニゲームの様に単純化する事で遊びやすいというメリットもあったように思われます。

その後、発売されたソフトもサッカーを再現するよりはアクションとしての楽しさを重視する流れが続きます。スーパーファミコン(SFC)で発売された【スーパーフォーメーションサッカー】では、コントローラーのボタンが増えた事により長短のパス、シュート、スライディング、ショルダータックルといった基本的なプレーができるようになりました。

そして【Jリーグ エキサイトステージ96】によってアクションゲームとして高みに登りつめることになります。ヘディングでの競り合い、ダイビングヘッド、スライディングと、ボタンを押したときのアクションがボールとの距離により変化することで、プレイヤーはより自由度の高い多彩なアクションを駆使してできるようになりました。そしてワンタッチプレーでのボールスピードが速くなるように調整され、プレイヤーのスキルが上がる事で華麗なボール回しにつながる工夫がなされていました。

サッカーゲームはボールを扱うプレーの楽しさが重視され、アクションゲームとしての面白さも持ち得ていました。ただし、「これは果たしてサッカーなのか?」という思いがくすぶっていたのも確かです。その問に答えるように、ハードウェアの進化と共にサッカーゲームはシミュレーターとして舵を切っていくことになります。

◆次世代機の登場
1994年に発売されたセガサターン(SS)やプレイステーション(PS)ではソフト媒体に大容量のCD-ROMが採用され、さらにCPU性能向上に伴い3D表現(ポリゴン)を可能にしていました。サッカーゲームもこの流れに沿って、よりリッチな表現ができるようになります。
 この時期、後に続く3Dサッカーゲームの基礎となる【ウイニングイレブン】が発売されます。ゲームファンだけでなく、サッカーファンからも支持を受けた”ウイイレ”は現在まで続く人気シリーズとなっています。
”ウイイレ”では選手AIが新たに導入されました。
 前世代のサッカーゲームではコントローラーで操作していない味方選手は、フォーメーションで設定された位置から大きく動くことはありませんでした。そこで選手AIを導入することで、ボールを持っていない選手がそれぞれに判断を行ってポジションを取るようになったのです。
 サッカーはチームスポーツです。そのためには味方選手が意思を持って動いている様に見せる必要がありました。選手AIによりサッカーゲームはサッカーらしさを高めることに成功したのです。

◆シミュレータとしてのサッカーゲーム
 サッカーゲームとして思い切ったアプローチをしたのが【FIFA Football】です。11onというモードではプレイヤーは一人の選手だけを操作します。そして他のプレイヤーをオンライン上で集めて一つのチームを組みます。こうして11人対11人の対戦が実現さりました。11対11という事は、フィールド上の選手全てに人の意思が備わっているということです。これはもう身体能力の必要ないサッカーと言っても過言ではありません。

 11人のプレイヤーが監督役が指導の元でトレーニングを積むことで、複雑な戦術を実現することも夢ではありません。ゾーンディフェンス、偽サイドバック、アラバロール、ゲーゲンプレッシング、ダイレクトサッカー、オーバーロード・・・など、実際にサッカーで用いられている戦術をシミュレートすることも可能でしょう。

 テクノロジーの進歩と共にサッカーゲームはサッカーにどんどん近づいてきています。ひょっとすると「新しい戦術がゲームの中から生まれる」といった未来が訪れるのかもしれませんね。

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