『胡桃の箱』30 桜の宴
それから、二週間経った。
各地で桜が咲き始めていたが、コロナ騒ぎで自粛生活が強いられ、息苦しい日々だった。
そんな日曜日の朝、突然白石はるみから電話が来た。
「お休みの日に電話して、ごめんなさいね。寝てたかな?」
「いえ、大丈夫です」
彼女が実の母親だということを知ってしまったが、特に感情の変化は無かった。
「実は、うちの社長がね、『田園調布の家の桜が見頃だから、観に来ないか』って言うんだけど、折角だから春人君も来ないかなって思って」
「今日ですか」
「急だけど、どうかな?