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NovelAI始めました 所感とスタンス表明

Stable Diffusionの可能性に惚れ込んで「この流れはさすがに乗れないと置いてかれる!」と環境構築までしたものの、大して成果もないまま今度はNovelAIにノックアウトされています。

NovelAIを用いて初めて生成した画像が以下。参考にしたプロンプトも特にありません。

cute girl, red hair, yellow eyes, ponytail, holding weapon, armored dress, 18 years old

武器を持っていない点だけ惜しいですが、自分が言外に求めていたクオリティを十二分に実現してくれています。ツッコミどころがあるとしたら、胸と腰の正中線がズレていることくらいでしょうか。
とはいえこのくらいのパリッとした塗り表現であれば、十分手直しでカバーできる範疇でしょう。

NovelAIのすごさと、技術的な懸念

Stable Diffusion(以下SD)では、様々な「呪文」を用いて出力画像の方向性をコントロールしていました。
「呪文」と呼ばれるのはその長大な文字の羅列がスタバの注文を彷彿とさせるからでもありますが、同時に「なんかよくわからないけど、これを入れとけば安定する」ワードの羅列でもあるからです。

Stable Diffusion (i2i) / beautiful screenshot of cute anime girl, Asuna, Shigeru Mizuki, detailed face, Granblue Fantasy, Cygames, Mucha, Cinematic, Photorealistic, 8k, high_resolution
プロンプト拝借:友人

img2imgかつこのプロンプト量で、さらに20枚から厳選して、ようやくこのクオリティまでいけるのがSDです。
もちろんプロンプトの研究次第でもっと品質は上げられると思いますが、研究が必要という時点でやはりハードルの高さは歴然でしょう。

上記で言う Shigeru MizukiやMucha、Cygamesなどがここで言う「呪文」にあたります。「実際にその要素を求めているわけではないけど、欲しいイラスト調へ近づけるためのマジックワード」を入れてAIをコントロールしているわけです。

NovelAI / {{{posing sketch}}}, {{{{white school uniform}}}}, pink hair, shiny wavy hair, blunt bangs, {{Strong light coming in}}, sitting, seen from the side
プロンプト参考:https://twitter.com/enda_log/status/1578218564661624833

これらのプロンプトを比較すると、NovelAIのプロンプト指定はもはや「呪文」ではなく「注文」といっても差し支えないでしょう。
そして呪文より注文で済むサービスの方が、AIイラストレーションツールとして適格なことは間違いありません。(もちろん、品質を上げていく上ではmasterpieceなどの呪文も使われますが)

ただし原理上、この特徴はデメリットにもなります。
何も書かなくても特定の分野に特化した画が出るということは、その分出力が恣意的に偏ってしまっているということでもあります。
特に出力されるキャラクターが指定内容に関わらず顔を赤らめてしまうことなど、NovelAIは出典元のDanbooruの傾向を良くも悪くも強く受け継いでいます。
キャラクターの構成パーツなども人気・定番・王道のものに寄ることが多いため、キャラクターデザインへの活用などを考える場合は「完全なランダム生成とは言えない」点は考慮する必要があります。

とはいえキャラクターイラストを制作する上で、現状利用可能なツールの中でぶっちぎりに「実用的」なのはNovelAIで間違いないでしょう。
出力画像をそのまま利用するか、i2iや手直しを駆使してブラッシュアップしていくかは場合によるとして、ついに本当の意味で革命的なAIツールが出てきたというわけです。

{{{{masterpiece}}}}, blonde hair, bob cut, hairpin, blue bodysuit, water gun, wet, ocean, 24 years old

NovelAIに対する倫理的なスタンス

ここで一つ言及しておきたいのが、NovelAI(とその出典元であるDanbooru)の倫理面に関する世論についてです。

ただでさえイラストレーター業界へのインパクトが大きいイラストレーションAIの隆盛に、加えて倫理的にグレーな転載サイトが下地となっている……いかに革命的な技術であるとはいえ、批判意見にも共感の余地は大きいです。
これについて、今後イラストレーションAIを活用して活動をしていくにあたって齟齬があるといけないので、自身がどのようなスタンスで接しているかを最初に表明しておきます。

結論から言うと、自分はこの議題に対して「他者の不利益になるべきではないが、そうでない範囲においては問題ない」というスタンスです。
何より、「これまで技術的ハードルにより十分な表現活動が行えなかった人たちが、より低いハードルでアイデアを発表できる環境」ができていくのは、クリエイティブ界隈全体にとっても益であると捉えています。

一つ一つの争点について列挙して言及していくとあまりにまとまりのない記事になってしまいそうなので、それは控えておきます。
ひとまず、全体を通して「白でも黒でもなく、割とぴったり中間のグレー」くらいの現状認識です。どっちの視点にも筋が通っている、という意味ですね。

特にDanbooruに関してはAI関係なく批判されていますが、同サイトもあくまで公共の利益のために善意で運用されているサイトという認識なので、必ずしも悪徳と言い切れることはないと思っています。
実態について把握しきれてはいないため、もし有料でクローズドに公開されているイラスト作品なんかも数多く転載されているとしたら、それは取り締まられるべきだと思います。(フェアユースでもそこまではカバーできないかと思います)
一方無料で公開されているイラストに関しては、著作者を明記して無償で転載する分には、むしろ勝手に広告宣伝してくれているメリットの方が大きいのではないのかなという意見です。

また、「AIで作成したイラストを自作発言する」というテーマもこれから長く続きそうな論点です。これに関連して、アメリカの方から教えていただいた記事を紹介しておきます。

記事では、アメリカの著作権弁護士いわく、「AIが出力しただけの画像には著作性は認められず、人が手を加えて初めて著作物としての権利を行使できる」という法解釈が紹介されています。
AI生成だけで制作されたイラストを使って営利活動を行っても、その画像の取り扱いに関して著作権を主張できない、ということですね。
これは「著作権」というものの存在意義=文化発展のための著作者利益保護の観点に正しく基づいており、納得の行く裁定なのではないかと思います。
なので自分も、上記と同じような考えを持っています。
一方で、AIにプロンプトを打ち込んでイラストを出力する行為自体に著作性が認められる、ということになったとしてもおかしくはないと思います。プロンプトを考案する過程にも創作性はあるはずだからです(それがイラストレーションなのかどうかは別として)。

最後にどのポジションでのトークかを明確にするため、自身の立場も明らかにしておきます。
自分の本職はゲームクリエイターで、かつ趣味でイラストも描いています。
イラスト制作スキルに関しては中の下で、練習時間が取れずになかなか数を重ねられていないのが現状です。
そういった立場上、「AIで効率的に高品質なイラストを生産する」ということについては、非常に当事者性が高いと感じています。「絵を描きたいけど、技術的に上手い絵が描けない」という立場ですね。
一枚絵も作りたいですし、ゲーム用に立ち絵などが作れても嬉しい。その上で、何でも自作したくなるクリエイター精神としては、あくまでAIをツールとして仕上げは自分で行いたい、というモチベーションもあります。

img2img / blond hair, short hair, wavy hair, frilled dress, frilled headband, adult, 24 yeas old

AIイラストレーションが描く未来

個人的に、今回のイラストレーションAIによりイラストレーター界隈にもたらされるインパクトは「専門的な技能を持たない一般人の乱入」ではなく、「イラストレーターに要求されるスキルセットの遷移」だと捉えています。

現代のイラストレーションAIでは、現役のイラストレーターを打ち破るクオリティのイラスト作品を生成することはできていません。
それはすなわち、現時点ではまだイラストレーターの仕事はAIに奪われていないことを意味します。
そして、今後徐々にAIが発展していくにつれて、段々とイラストレーターの立場が脅かされていくことが想定されています。

AIイラストレーションには、現代のイラストレーターが持つ技能の一部と、それとは別の全く新しい技能とが複合的に要求されると考えています。
代表的なのものは「画作りの引き出し」と「言語化能力」の組み合わせです。
「きれいに線を引く能力」は要求度が下がるかもしれないですし、逆に「AIが生成した絵を違和感なく手直しする能力」が要求されるようになるかも知れません。
AIを活用したイラストレーターが台頭する頃には、イラストレーターに要求されるスキルセットは「AIを活用したイラストレーションワークフロー能力」になっているはずです。
そしてそれは、必ずしもイラスト制作未経験の素人が満たしうるスキルセットではなく、従来のイラスト制作技能の一部をアドバンテージとできるはずなのです。

であれば、グラデーションにAIイラストレーションが実用化されていく時代の潮流で、すでにイラスト技能方面での強力なアドバンテージを持つイラストレーターたちがAIと対話する技術も習得していくことができたなら、決して現代のイラストレーターたちが抵抗もできず代替されるといったことはないわけです。

もちろんアナログがデジタルに移行したときのように、やりたいこと、できることの違いも出てきます。
新しい形のイラストレーター像に順応するかどうかは、その人の選択次第でしょう。

しかし界隈全体で言えば、やはり「AIによってイラストレーターの人口が爆発的に増加する」ということは、デジタル化以上に強力なインパクトをもたらしてくれるはずです。
「いいアイデアはあるけど、それを具現化できない」といった人たちがイラスト作品を発表できるようになれば、今以上に多様なコンテンツが生み出されるようになる。これは素晴らしいことではないでしょうか?

ということで、僕はAIイラストレーションの未来に期待を膨らませるべく、今のうちからStable DiffusionやNovelAIを中心に、新技術に手を慣らしていこうと思っています。

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以上が、AIイラストレーション及びNovelAIについてのファーストインプレッションとなります。
今後はNovelAIの様々な検証を行いつつ、その実用性や現実的なワークフローについて考察してみたいと思っています。いいアイデアがあれば記事に起こします。

それではまた。

{{{{masterpiece}}}},{{{posing sketch}}}, {{{{white school uniform}}}}, pink hair, shiny wavy hair, blunt bangs, {{Strong light coming in}}, sitting, seen from the side

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