Red Hat 認定アーキテクト (RHCA) になるための戦略

はじめに

Red Hat 認定アーキテクト (RHCA) について、まとまった説明やブログを見かけないのでここで書こうと思います。レッドハット製品の更新に伴い、試験の制度はどんどんアップデートしていきます。この記事にリンクを貼りましたので、最新情報はレッドハットのサイトを参照してください。

レッドハットの技術者認定資格には、Linux、Ansible、OpenShift、OpenStack、クラウドネイティブ開発など、数多くの認定資格があります。認定試験を受験することで、自分の専門とする技術のスキルを客観的に確認をすることができます。

このようなレッドハット認定資格の頂点に位置づけられるのが Red Hat Certified Architect 略してRHCAです。RHCAを取得するためには、ひとつの専門性だけを極めるのではなく、複数の技術領域の認定試験に合格する必要があります。つまり、RHCA認定取得にはスキルの幅を広げる努力が求められます。

RHCAになると嬉しいこと

(1) CredlyでデジタルバッジをSNSに公開できる
Red Hat 認定試験に合格するとCredlyのサイトに自分が獲得したデジタルバッジが公開されます(公開する/しないは、バッジごとに本人が選択可能です)。試験に合格したときにはSNSでこのバッジを友人や同僚に知らせることができます。RHCAにもバッジがありますので、RHCAの認定取得の際には長年の苦労を多くの人に知らせることができます(おめでとうございます!!)。


(2) フリーグッズがもらえる
認定資格取得者は Red Hat Certified Professional Storeからポロシャツ、マグカップなどを購入することができます。さらに、RHCA取得者は、このサイトにおいて申請することで、このサイトからフリーグッズ(ポロシャツ、楯など)をもらうことができます。特にポロシャツにはRed Hat Certified Architectという文字と一緒に自分のCertification IDが縫い込まれています。これは世界に一枚しかない特別なポロシャツです。

(3) Red Hat Learning Subscriptionのディスカウント
RHCAを目指すのであれば、継続的なコースの勉強と受験が欠かせません。RHCAを目指す方にとって、Red Hat Learning Subscription (RHLS) は最適なツールです。Red Hat Learning SubscriptionのFAQによると、「現在有効な RHCA 資格を持つ方は 50% 割引で購入できる」とあります。RHLSを個人で購入される方は多くはないと思いますが、ご参考まで。

RHCAへの道

RHCAになるための特別な認定試験があるわけではありません。RHCAの条件を満たすように複数の認定試験に合格すると、RHCAという認定が付与されるのです。以下のページにRHCAになるための条件が 詳しく記されていますが、ここでざっくりと説明します。

RHCAには、2つの種類があります。

  • Red Hat 認定アーキテクト - Infrastructure

  • Red Hat 認定アーキテクト - Enterprise Applications

それぞれのRHCAになるための条件は異なりますので、以下、説明します。

Red Hat 認定アーキテクト - Infrastructure

これは一言でいうとインフラ系のRHCAです。RHCA - Infrastructureになるためには、Red Hat 認定エンジニア(RHCE)の認定取得の後、さらに(指定されたトラックの試験の中から) 少なくとも5つの認定試験に合格する必要があります。RHCEになるためには、EX200EX294に合格する必要がありますから、合計7つの試験に合格すればRHCAになれます。

EX200 + EX294 + 5つの試験 →RHCA - Infrastructure

Red Hat 認定アーキテクト - Enterprise Applications

こちらはアプリケーション開発系のRHCAです。RHCA - Enterprise Applicationsになるためには、Red Hat 認定エンタープライズ・マイクロサービス開発者(RHCEMD)またはRed Hat 認定クラウドネイティブ開発者 (RHCCD)の認定取得の後、さらに(指定されたトラックの試験の中から) 少なくとも5つの認定試験に合格する必要があります。

注意
Red Hat 認定エンタープライズ・マイクロサービス開発者(RHCEMD)は、過去にRed Hat 認定 JBoss 開発者 (RHCJD)の認定を取得した人がEX183に合格すると認定されるものです。しかし、現在ではRHCJDに認定されるための認定試験(EX283)がRetiredになったため、これからRHCJDの認定を取得する手段はもうありません。新規受験者がEX283+EX184でRHCEMDになるというパスは絶たれたのです。

Red Hat 認定クラウドネイティブ開発者 (RHCCD)になるには、EX378に合格するのが条件です。RHCCDからRHCAになるには合計6つの試験に合格する必要があります。

EX378 + 5つの試験→RHCA - Enterprise Applications

RHCAになるための計画

最初に、RHCAにはインフラ系とアプリケーション開発系があるので、どちらを目指すのかをよく検討しましょう。追加の5つの試験は、インフラ系とアプリーション開発系で定められた認定試験のリストがあります。まずは、このリストをじっくりと眺めてください。それぞれの種類のRHCAが指定した認定資格のリストがあります。

何も考えずにランダムに認定試験を選んでいると最短の時間でRHCAの認定条件を満たせません。どの順番に、どの試験を受けるのか、計画を立てましょう。EXではじまる認定試験のコードは、一般的に番号が大きい方が難易度が高いです。例えば、EX188よりもEX288の方が難しいし、試験時間もより長いです。RHCAの要件を満たすためには、数を稼ぐために、難しい試験にも挑戦する必要があります。どの試験を選択するのかはとても重要です。

認定資格には有効期限がある

もうひとつ重要な点があります。レッドハットの認定資格は3年経過すると最新の状態ではなくなります(「最新の状態ではない」とは記録としては残るけど、Red Hatの認定は無効状態になるということ)。ですから、RHCAになるためには、時間がかかるものの、あまりゆっくりした計画は立てられないのです。

RHCEの認定取得者がRHCAを目指す場合を例に考えてみましょう。EX200を合格してRHCSAの認定を取得したら、3年以内にEX294に合格しないとRHCEにはなれません。RHCAを目指すのであれば、EX200に合格したら、その調子で、EX294の準備に取り掛かりましょう。

さらに、RHCEを取得した後、RHCAになるまで最低5つの認定試験に合格する必要がありますが、これら追加の5つの認定試験を3年以内にすべて合格して認定の状態を維持する必要があります。3年を超えると、認定資格取得済みのものが次々に無効になり、RHCAの条件を満たせなくなるからです。

このように認定資格の有効期限は大事なので、自分が過去に合格した試験の認定期限は常に意識し続ける必要があります。このサイトで自分のCertification IDを入力すると、自分の認定資格とその有効期限を確認することができます。

認定資格の更新について

ここで一つの疑問が残ります。RHCA - Infrastructureを目指して5つの認定試験にチャレンジしていくなかで、RHCSAやRHCEの期限である3年が過ぎてしまわないのか。それらの再取得のために、またEX200やEX294を受験するという事態にならないのか、と。

実はRHCSAはRHCEに合格すると「最新の状態」になります(つまりRHCSAの有効期限が伸びます)。それからRHCA - Infrastructureの候補となる認定試験にひとつ合格すると、その時点でRHCEの認定資格が「最新の状態」になります。さらに別の認定試験に合格するとそれに合わせてRHCEの有効期限が伸びます。

このようにRHCAを目指して試験に合格を続けれていれば、RHCEの再受験のことは考えなくて良いように制度が設計されているのです。詳細は以下のページを読んでください。

さいごに

RHCAの認定取得までには時間がかかります。ひとつの認定試験合格のためには、コースの学習、試験準備、受験、(運が悪ければ)再受験を行います。RHCA認定を得るためには、このサイクルをひたすら何度も粘り強く繰り返す必要があります。

また、RHCAとは、定められた複数の認定を維持している状態を指します。RHCAの認定取得がゴールではありません。RHCAであり続けるためには、指定の数の認定資格を同時に維持し続けることが求められます。認定試験は製品更新に伴い常にアップデートし続けますから、RHCAを維持するためにはそれに追随する必要があります。RHCAとは終わりのない旅のようなものです。

エンジニアは日々の仕事で忙しいですから、毎日試験勉強ばかりに時間は避けません。そこで、RHCAになって、その後、RHCAであり続けるためには地道で計画的な学習が必要になります。そのような継続的学習のために、この記事が少しでも参考になれば幸いです。

2024/02/24 訂正

「Red Hat 認定アーキテクト - Enterprise Applications」のセクションにおいて、Red Hat 認定エンタープライズ・マイクロサービス開発者(RHCEMD)がRHCAになるための条件に関する記述を修正しました。 


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