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ビデオゲームのサブシナリオを作る際の注意点



メインシナリオとサブシナリオの役割

メインシナリオは主人公に関する物語であり、主人公のキャラクターアーク(成長や変化)を含みます。プレイヤーがゲームを進めるうえでの主要な筋書きです。

サブシナリオでは、多くの場合、主人公はキャラクターアークを起こさないことが多いです。これは、サブシナリオをプレイしないユーザーもいるため、そのシナリオで主人公が大きな変化を遂げるとメインシナリオの理解や整合性に問題が発生するからです。


サブシナリオの役割と例

サブシナリオは、主人公が他者の問題を解決することが主な内容となります。この場合、主人公は変わらず、他のキャラクターが成長したり、問題が解決されたりします。例えば、『ウィッチャー3』では、ゲラルトが各地で様々な人物の依頼を受け、彼らの問題を解決することで物語が進行します。これにより、世界観の深掘りやキャラクターの多様性が描かれます。

主人公がしっかりと問題解決に関与することで、ゲームとしての満足感や物語の一貫性が確保されます。『ファイナルファンタジーXV』では、ノクティスが仲間たちと共にサブクエストをこなすことで、彼らの関係性が深まる描写が多く見られます。

サブシナリオで主人公の意外な側面を見せることも有効です。『龍が如く』シリーズでは、桐生一馬のサブシナリオでの行動が彼のキャラクターの奥深さを示し、プレイヤーに新たな視点を提供します。

サブキャラクターをサブシナリオで深掘りすることもよくあります。メインシナリオがメインプロットとサブプロットで構成される場合、どちらにも収まりきらないストーリー要素をサブシナリオに流すことができます。これにより、ゲーム全体の物語が豊かになります。『ペルソナ5』では、サブキャラクターのコンフィデント(信頼度)システムを通じて、各キャラクターの背景や成長が描かれています。


サブシナリオ作成における役に立つノウハウ

1. バランスの取れたストーリーテリング

サブシナリオはメインシナリオと並行して進むため、全体の物語のトーンやテーマに一貫性を持たせることが重要です。過度に独立したサブシナリオは、メインストーリーからプレイヤーを引き離してしまう可能性があります。基本的な物語のトーンなどを踏まえつつ作成しましょう。

ただし、物語のトーンを踏まえつつ、あえて逸脱したトーンを持ち込むことでサブシナリオのバリエーションを出せる場合があります。「龍が如く」シリーズのサブシナリオでは本編では考えられないようなぶっ飛んだシチュエーションに桐生一馬が遭遇するなど、物語のトーンを保ちつつもバリエーションの創出に成功しています。


2. キャラクターの描き方にメインストーリーでの描き方と一貫性を持たせる

サブシナリオにおいても、主人公や他のキャラクターの性格や行動は一貫しているべきです。これにより、プレイヤーはキャラクターに対する感情移入を維持できます。

サブシナリオのライティングにおいても主人公のキャラクター性を深く理解することは重要です。これは前述した「サブシナリオで主人公の意外な側面を見せる」という手法と矛盾するようにも思えますが、そういった逸脱を行う場合はあくまで主人公のキャラクターを理解した上でどこまでが許されるかをシナリオディレクターやディレクターと協議しながら進めましょう。


3. 短く魅力的な物語にする

サブシナリオは短くてもインパクトのある物語を提供することが望ましいです。プレイヤーの関心を引き、報酬感を与えることで、プレイする意義を感じさせることができます。そのため設定やドラマ、人物相関図などを深く複雑にしすぎない必要があります。


4. メインシナリオの魅力を損なう展開を入れない

たとえばメインシナリオである仲間のキャラクターが裏切るというサプライズを用意していたとします。これは物語後半で起こる非常に重要なサプライズです。にも関わらずサブシナリオでも別の仲間が裏切りサプライズを起こすという展開を入れたとしたらどうでしょう?やり方にもよりますがメインシナリオで考えているサプライズを損なう可能性があります。こういった可能性があるものについてサブシナリオで行う場合は慎重になります。そして基本としてはメインシナリオの事情を優先することが大事になることが多いです。


5. 報酬とモチベーションを設計する

サブシナリオをクリアすることで得られる報酬(アイテム、スキル、ストーリーの断片など)は、プレイヤーのモチベーションを維持するために重要です。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』では、サブクエストをクリアすることで得られるアイテムや装備が、探索の動機付けとなっています。

サブシナリオを設計する前段階で考えるべきことですが、ゲームサイクルを踏まえたサブシナリオを考える必要があります。たとえば「ジャッジアイズ」シリーズではサブシナリオは基本的に探偵の依頼として主人公は行い、そのことでメインシナリオを進める上で必要になる経験値やお金、街の評判といったパラメータを取得することができ、これがサブのゲームサイクルを構成する要素になっています。

もう一つの例として『ホライゾン ゼロ・ドーン』があります。このゲームでは、サブクエストを通じて得られるスキルポイントやリソースが、主人公アーロイの成長や装備のアップグレードに直接貢献します。サブシナリオをこなすことでプレイヤーはキャラクターを強化し、メインシナリオをより有利に進めることができるのです。


6. サブシナリオのバリエーションを出すことを意識する

サブシナリオは多様な内容を提供することで、プレイヤーの興味を引き続けることができます。戦闘、探索、パズル、ストーリーテリングなど、異なるゲームプレイ要素を取り入れることが有効です。

例えば『スカイリム』では、戦闘系のサブクエスト、盗賊ギルドのミッション、パズルを含むダンジョン探索、NPCとの対話を中心としたストーリークエストなど、多岐にわたるサブシナリオが用意されています。これにより、プレイヤーは常に新しい体験を楽しむことができ、ゲームへの興味を持続させることができます。


結論

サブシナリオは、メインシナリオと並行してゲームの世界を豊かにし、プレイヤーに多様な体験を提供する重要な要素です。メインシナリオとの整合性を保ちながら、キャラクターの深掘りや新たな視点を提供することで、ゲーム全体の魅力を高めることができます。プレイヤーが自然に感情移入できる

初心者に特にオススメな本

  • ブレイク・スナイダーの「Save the Cat!: The Last Book on Screenwriting You'll Ever Need」(「SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術」)

難解ながら必読本

  • シド・フィールドの「Screenplay: The Foundations of Screenwriting」(「映画を書くためにあなたがしなければならないこと」)


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