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社会に出てからの出会い

入社して2年程経った頃。

私は総務的な仕事プラス秘書の仕事も兼務するようになった。

大きな組織だったので部長クラスにも必ず秘書がつく。海外、国内出張含め会議もびっしり埋まるおじさん達ばかりだからだった。当時はネットも無く手書きのスケジュール帳での管理する時代。今思うとのんびりした時代だったとしみじみ思う。

私にとても影響を与えた上司が3人いる。

1人目は仕事が早くそれでいて完璧で、でもおじさん世代にしては新しいものに興味を持って私達と近い感覚を持っていた人だった。今思うと、入社して間もない私に色々任せる勇気がその方にもいっただろうと思う。仕事の出来る人からしたら「これ任せて大丈夫かな」と思う事も多かったのではないかと思う。大きな心で見守ってもらっていたなと思うことばかり。

その上司の仕事の進め方、周りとのやりとり、資料の作成…全てが学びだった。

とても心地よく、仕事とプライベートを切り離して生活も出来て充実していたなと思う。

冬はボーナス全てをスキーに費やした。金曜日の深夜に都内を出発する夜行バスに乗り朝から晩までとにかくスキーに興じた。安いバスツアーで毎週末…夏は海に山に…本当に若かった。体力あったなと思う。

しばらくして、アメリカ駐在を終えた上司となったのがもう1人の尊敬する上司だった。

その方がまた恐ろしく仕事が出来る人だった。

そしてこの仕事の出来る2人の共通点は仕事がとにかく早い。そして完璧という事だった。

新しいものにも躊躇することなく取り入れる姿勢も凄かったなと思う。

それでいて部下の失敗は自分が責任をとるという共通点。だからのびのびやっていいよ、という空気感があって安心して仕事に集中することの出来る私にとっては心地よい職場だった。

この上司はその後それぞれ会社を代表する立場まで昇り詰めた。納得、当然だなと思った。そして今はその仕事を終え違う場所で活躍されている。

今でも一緒に働いている人達は幸せだなぁと思う。

この上司の元で働いていた私はこの環境が普通だと思っていた。

次に待ち受ける、私の最後の上司となる彼に出会うまでは…

大きな組織変更で私は新しい上司の秘書をやることになった。挨拶にいくと、調子の良い元気なおじさんだった。また新しい出会いがスタートしたなと思った。

これまで同様、淡々と仕事が出来ると思っていた。

しかし彼のキャラは想像以上だった。

仕事が絡まないと良いおっちゃんなんだけどね〜、という表現が一番合ってるかな…

絵に描いたようなザ !ラサリーマンだった。

上昇志向と出世欲が半端ない。

出世の為なら使えるものは何でも使う、おいしいところだけはもっていく、人の手柄を平気で掻っ払っていく様な人だった。

そして自分の意中の上司には天才的に立ち回り気に入られる才能を持っていた。

先に言ってしまうが彼もその後会社の重要ポストまで昇り詰めた。でも方法がエゲツなく有名だった。

だから敵は多かった。けれどそれも承知の上。彼の計算内。

私も今ならわかる。

それがサラリーマンの世界。

所詮権力抗争なんだと。

でも当時まだ純粋だった私には彼の言動はとてもストレスになっていた。彼の為に彼が動きやすいようにするのが秘書の仕事だとはわかっていてもやりたくないな、この人の為にはこれ以上、と思わせる人だった。

そんな私を見透かしていたのでしょう。わざと私が怒るような事をしてくる。やる事がまるで子供のようだった。

まぁ、私もキャラの濃い人は嫌いでは無いし寧ろ好きな方。

けれどそれが例え上司であろうが何であろうが基本人間対等だと思っている私はどうしても納得出来ない仕事とは関係ない事を頼まれた時は拒否していた。それで心のバランスを保っていた。

そんな私をおもしろいと思ったのか、今まで周りには言いなりの人が多かったのか?彼なりに私には気を遣うようにもなっていた。そうやって絶妙な関係が続いていた。

でもある日、私の堪忍袋の尾が切れた。

私の元には各部署から担当者がスケジュールを押さえに来る。だから彼らと話す機会も多かった。

やっとのことでまとめたので後はこの上司の決裁もらうだけ、というものだったり、どうしてもこれはこの上司を通さないと先に進まない、というものばかりだった。彼はそういう立場にいる人だった。

なのでびっしりのスケジュールに稀に空きがあると「良かったー時間取れて!」と言って喜んで戻っていく人ばかりだった。

しかし彼はドタキャンの名手だった。

自分に得になる意中の上司、役員がやってきたとわかると大事な打ち合わせを当然ドタキャン。

「なんとかやっといて〜♪」と言ってフロアからいなくなってしまう…

またかぁ…

そう思いながら「すみません。急用が入ってしまって。ここに入れて頂いていた打ち合わせ、他の日に調整して頂けますか?」と担当者に連絡するのだけれど

「えー!?いやぁ、そっかぁ…参ったなぁ…」

と殆どの方がこのリアクション…

そうだよなぁ…あれ程準備してようやく時間押さえてこれで!って…ところのドタキャンは無いよなぁ…

しかもドタキャンの理由が出世ゴマスリの為なんですから…

まぁ、社内ではとても有名だったのでみんなわかってた。またゴマスリの為にいなくなったか、と。

でも部下としては何だかなぁ…ですよね。

何と言っても進むはずの仕事が進まない。ただ男性陣達は自分がその上司に意見する事で粛正されるのを怖がっているのも私は十分理解はしていた。本当に粛正する人だったから、そりゃ言えないよね…と。

ただ余りにもそのゴマスリ頻度が多くなりドタキャンが目に付くようになり、落胆する人たちを見ているうちに私の堪忍袋の尾が切れてしまった。

そしてある日私は「話があります」とその上司を会議室に呼び出した。

私なんて所詮一般職で入った女性社員のうちの1人でしかない訳で出世なんて関係ない立場にいる。

そんな私だからこそ彼に意見出来る立場にあるのではないかと。

辞めてもいいわ。私は守るべき家庭がある訳でも無いし。何とかなるだろう。

みんなが気持ちよく働けない職場なんて私にとってはストレスでしかない。秘書という仕事はみんなが気持ち良く仕事が出来る様に配慮するのも仕事のうちだと思っていた。

そして彼に伝えた。

「生意気だと思われるかもしれませんが秘書として、1人の人間として言わせていただきます。自分を支えてくれている人達をもっと大事にして下さい。みんなが一生懸命仕上げ、貴方との打ち合わせの時間をようやく取ってやっと!と思っていたら貴方は役員に呼ばれたからとほっぱらかしにしてドタキャン。自分のことしか考えてませんよね。みんなが仕事をしてくれてるからこその今の自分の立場があるのでは無いですか?もう少し部下の人たちのことも見て下さい。」

今思うと私も若かったなぁ〜苦笑、と思う。

今なら放っておくでしょう。

ただそれまでの上司が余りにも素晴らしく、その時の仕事環境と全く違う状況になってしまっていたことに私も戸惑っていたんだなぁと思う。

で結局、この後彼はどうなったかと言うと

「〇〇は俺に惚れてる」とまぁ何ともおめでたい受け止めをしてくれまして…

私が惚れてるだと〜⁈

まじか、こいつ…

「〇〇に怒られちゃってさぁ♪」と周りに流布して回ってる…

まぁ、仕事が絡まなければ調子の良いおっちゃん、で私もスルー出来たんだろうけど…

私は秘書の仕事が好きで際限なく幅広く仕事をしたいだけなんだけど。それが結果彼の為になるのか。。。と思ってしまった。

私はこれをきっかけに益々彼に対して強くなり、その強気な私を面白おかしくいじる…という。

周りから見ると夫婦漫才みたいね、と思われてたようだけれど私にとっては正直迷惑だった。普通に秘書の仕事がしたかった。でもその人の為になってしまう秘書という仕事が辛くなってきた。

仕事とはほぼ関係無いプライベートな事を私にやらせようとする事も納得出来なかった。

何故なら私は父親から「会社のものは紙一枚でも私的に使ってはいけない」と言われてきたからだ。プライベートと仕事はわけるのが当たり前だと思っていた。

当然彼が変わるはずもなく、益々出世の為のゴマスリが目に付くようになった。

本当に私にとってはストレスが溜まるばかりの毎日は続き…

ある日私は部署を変わりたい…と尊敬する前の上司に相談した。

続く…

mai















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