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実は、「ライブトラッキングシステム導入していきなり活躍」してしまった話|パラグライダー


TRACKER(ライブトラッキング)導入

ぼくらが管理させていただいている「白馬八方フライトエリア」では安全管理の一環として、今年(2024年)5月からFLYMASTER社のTRACKERという機器によるライブトラッキング(リアルタイム位置情報共有)システムを導入しました。

ようするに、

「飛んでいる人の位置情報をリアルタイム(正確には約4分遅れ)でPCやスマホで確認できるから、何かあってもすぐに正確な場所が分かるよ!」

ってことです。
もしも、木に引っかかったり、墜落したりした場合に問題になる「位置の特定」がクリアできるので、救助に向かうまでがとてもスムーズになります。そういう事態では時間が大切です。さらに、行方不明というリスクも大幅に軽減できます。

有事の際への備えというだけでなく、サーバー上にフライトログ(軌跡)が保存されるのでフライト後の振り返りや仲間との楽しみの共有にも役立つのですが、今回は捜索救助に関する話です。

TRACKERは、世界中のパラグライダーのワールドカップやRed Bull X-Alpsなどのイベントで使用されている実績のある機器です。


『TRACKER PRO BOX CHANGING STATION 4G(10台セット)』
825,000円(税込)


👆がんばって、こいつを2セット(20台)購入しました・・・。

フライエリアの安全管理という観点から社会的責任を果たしつつ、フライヤーの皆さんには少しでもリスクを軽減して今まで通り広範囲のフライトを皆様に楽しんでいただくための導入です。

TRACKER導入内容

会員の皆さんの負担軽減も考慮して、講習生年度会員がパイロット空域のみをフライトする場合は義務化はしていません。

「導入に至る背景と経緯」に関しては、webサイトにて案内しています。

TRACKER導入して1ヶ月弱でいきなり活躍

▶ケガもなく、ちょっとしたミスが原因でした

ライブトラッキングシステムの導入は、決して対外的なパフォーマンスではなく、めちゃめちゃ有効な安全対策です。
それでも今までの経験上うちのエリアでは、通常営業(大会やイベントは除く)であれば捜索救助に活用するのは年に1~2回だろう。と思っていましたが、導入して1ヶ月弱でいきなり出番が来てしまいました。

こう言ってはなんですが、トラブルは圧倒的にビジターさんが多いです。
もうちょっと安全マージン取りましょ。。。

今回のトラブルは墜落のような事故ではなく「普通に飛んでいて、思ったよりも低くなってしまって木に引っかかった」ということらしいです。

▶発覚から位置確認まで10秒

本人からの無線連絡でトラブル発生を確認しました。
通信はできるし、ケガはないようなので落ち着いて救助に向けて準備開始です。

ビジターフライトの方には必ずTRACKERを携帯してもらう事にしていたので、PCやスマホを開けば、そこに至るまでの飛行ルートや現在地などをすぐに確認できます。

無線で連絡を受けてから10秒後には位置の特定が完了していました。

TRACKERによるライブトラッキング画面

▶ナビゲーションアプリをセットするまで1分

幸い、今回はテイクオフのすぐ近くで、現地へのアクセスは
「ゲレンデから山に入って直線で300m、ほぼ起伏なしの横移動」
という好条件。

ぼくが救助に向かうためにおこなったナビゲーションの準備は4ステップ。(すべてスマホでやってます)

  1. TRACKERによるライブトラッキングで位置確認

  2. 位置をGoogeマップに表示して座標確認

  3. 座標をコピペでGeographicaで表示

  4. GeographicaでGo toナビゲーション開始

👇この間1分弱。

▶PCで見る場合は

TRACKERによるライブトラッキングの画面から、要救助者が携帯している機器の位置情報を直接Googleマップに表示させる。

ライブトラッキングから直接表示した画面

対象ポイントの座標が度(D)度分秒(DMS)で表示されるので便利ですね。
詳細な地形図でアプローチのルートファインディングなど作戦を立てる場合は、ぼくはカシミール 3D使ってます。
(もっと使い勝手の良いものあればぜひ教えてください)

カシミール 3Dの画面

ポイントを「ここです」と点滅して表示してくれます。

▶救助は順調に完了

要救助者にケガはなく、グライダーもそれほど苦労せずに回収できて、すべて順調に救助完了でした。

ほんと、ケガがなくてなによりです。

まとめ

今回のケースは、まるでTRACKERによる遭難救助の予行練習のような難易度でしたが、基本的にはこんな感じの流れで活用できます。

本人と連絡が取れなくても、位置を特定できるのでスムーズに救助移行できます。警察や消防のお世話になる場合も断然動き出しが早くなります。

肝心の通信範囲ですが、八方尾根周辺は登山道として整備されていることもあるのか、今のところフライト空域はほぼ全体をカバーできそうです。細かいところは今後も継続的な検証が必要ですが。
墜落してしまって圏外になった場合も空中でのログはサーバーにとどいていそうなので、最低でもおおよその場所の特定はできそうです。

けどできれば、こんな活躍ケースは無い方がいいなぁ。
あくまでも「備え」です。

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