cash GTO/プリフロップ

プリフロップのGTO的な考え方について概説する。


レンジ表の暗記

身も蓋もないが、基本的なオープンレンジ/コールレンジはGTO Wizardなどのレンジ表を参考にして暗記していただくのが良いと思う。
ただ、それだけだとあまりに学びがないので、ここでは覚え方のコツだったり、直観に反するハンドについて解説しようと思う。

ポジションによるオープンレンジ

基本的にアーリーポジション(EP)になるほどオープン頻度は小さくなる。これは以下の理由による。

  1. 後ろにいる人数が多い

  2. アウトオブポジション(OOP)になりやすい

後ろにいる人数

プリフロップでアクションをしていない人はランダムな二枚組のカード、つまり「ランダムハンド」を持っている。以下の画像は6maxと9maxにおけるUTGのオープンレンジだ。


9max cash, effective 100bb, UTG open range
6max cash, effective 100bb, UTG open range

同じUTGというポジションでも、オープンできるハンドが9maxでは6maxよりも6%程度少なくなる。後ろにいる人数に応じてオープンレンジは弾性的でなければならない。

この基本原則を覚えていればリンプインしているEPがいる時のオープンレンジ、ストラドルが入っている時のオープンレンジについても、ある程度GTO的に正しいアクションを予測しながらプレーすることができると思う。

OOPのなりやすさ

EPで3betを受けたとき、SB, BB以外は全てIPからの3betとなる。OOPはフロップ以降極めて不利になるので、ハンドパワーを強くする必要がある。
ポジションによる優位性についてはまた今度noteを作ろうと思う。

スタックによるオープンレンジ

一般に、スタックが大きくなるとオープンレンジは広くなる。
ここで注意したいのは、どんなハンドのオープンレンジが広くなっているのか、ということだ。

6max cash, effective 100bb, UTG open range
6max cash, effective 200bb, UTG open range

T8s, 98s, 87s, 76s, 65s, 54s, 22~44のポケットの頻度に注目してほしい。
スーテッドコネクターやローポケットのオープン頻度が顕著に上昇している。一方、下限のオフスートのハンドレンジは少し広くなるものの、ここまで顕著に上昇はしない。

エフェクティブスタック(potに影響しうる最大の金額)が大きくなると、オープンに対するインプライドオッズが向上する。このため、上で挙げたような投機的なハンドのプレイアビリティが向上するため、オープンレンジが広くなる。

インプライドオッズは極めて重要な概念なので、別のnoteでしっかりと取り扱おうと思っている。

プリフロコールレンジ

基本的に、BTNとBB以外のポジションからプリフロップでコールに止める(コールドコール)はGTO的にとても頻度が少ない。
BTNとBB以外では基本的にレイズorフォールドである。

プリフロップでCCしてはいけない理由

  1. ハンドレンジがキャップされる

  2. ポジションが悪い可能性がある

  3. 後ろから3betされる可能性がある

プリフロップでCCすることによって、ハンドレンジが制限される。UTGopenにコールしたHJのレンジに、AAやAK、KKは存在するだろうか。少なくとも、GTOには存在しない。
ポーカーは不完全情報ゲームで、自分の手の情報をいかに相手に渡さないかが大事である。プリフロップでCCするということは、自分のハンドレンジがマージナルであることを伝えていることに他ならず、悪手になりやすい

UTGopenにHJからK♢J♤でコールし、BTNもコールしたとしよう。マルチウェイでHJはUTGにもBTNにも挟まれている。
フロップは Q♡J♧2♢ だ。potは9bb。

UTGから6bbのベットが飛んでくる。さあ、どうする?
もとよりQヒットには負けている。UTGにQのコンボは多い。BTNはどうだろうか。アクションがまだなため、わからない。もしかしたらQJを持っていて、コールした後BTNからレイズされるかも。

そう、この挟まれたポジションは最悪のポジションなのだ。マージナルハンドを形成した時、最も戦いにくいといって良い。

ケーススタディだ。BTNで全く同じK♢J♤を持っていた時、UTGのベットにHJがフォールドしたならどうだろう。コールするのが楽じゃないだろうか?

コールドコールして参加したハンドはそもそもマージナルハンドが多いため、フロップ以降もマージナルハンドになることが多く、こうやって苦しみやすくなる。

さて、CCした後、SBから15bbの3betがきた。UTGはそれにコール。さあ、HJでK♢J♤を持つあなたはどうする?

答えはフォールド一択だ。

BTNがコールする理由

BTNはフロップ以降一番いいポジションになることが確定している。このため、コールドコールすることが正当化されやすい。特にスーテッドコネクターやポケットペアはマルチウェイでのインプライドオッズが高いため、コールすることも多い。

BBがコールする理由

BBは後ろにアクションを行うものが誰もいないので、コールすることですぐにフロップを見に行ける。後ろから3betを食らう可能性が少ないのと、BBを既に払っていてオッズがいいため、コールすることが正当化される。

直観に反するハンド

オープンレンジ

UTG openに頻度でK6sまで含まれていることに驚いた人も多いと思う。
これが含まれる理由を3つ挙げる。

  1. Kハイフラッシュの可能性

  2. ローカードボードで抵抗するレンジを作る

  3. Kハイボードにおけるレンジの強化

スーテッドハンドというのは極めて優秀で、Kハイフラッシュを形成できる可能性がある。これはシンプルな理由だ。
また、バックドアを利用したブラフを行う際に、相手のリニアなレンジをブロックしないため、優秀なブラフハンドとしても機能する。

コーラー側に有利なローカードボードでつけ込まれすぎないようにするためにもこれらのスーテッドハンドはオープンレンジに含まれる必要がある。こういったKxsのハンドをオープンしないと、752ツートーンのようなボードが落ちた時、BMCBに抵抗しにくくなる。

オープン側はKハイボードであればほとんどの場合pot1/3サイズのCBを行うことができる。
これは”レンジベット”と呼ばれ、相手に対して自身のハンドレンジが全体的に強い時に行えるベットだ。こういったレンジベットのため、Kxsはオープンレンジに含まれる。

3betレンジ

3betにもブラフレンジが含まれている必要がある。強いハンド(QQ+,AK)のみで3betをしていたらオーバーフォールドされてしまってプレミアハンドで利益が出せないし、そのリニアなレンジを狙って投機的なハンドに攻撃されてしまう。

この時、3betに使われる優秀なブラフハンドとして、Axs(x = 3~5), K6s, 56sのようなハンドがある。これは強いから3betに用いているのではなく、ブラフハンドとして用いられている。

BTN以降のブラインド争い

ブラインド周りの3betレンジを正しく構築できている人は本当に少ないと思う。以下にBTNopenに対するSBのアクション、BBのアクションを順に示してみる。

6max cash, effective 100bb, SB facing BTN open range
6max cash, effective 100bb, BB facing BTN open range

SBはBTNに対してコールレンジがほとんどなく、レイズorフォールドの戦略を取る。これができている人がまず少ない。
また、レイズレンジはかなり広い。GTOでは余裕でレイズになるのだが、QJsやJTs, 88あたりのハンドをレイズせずコールに留める人が非常に多いと思う。

BBがコールできる理由は先も示した通り、BBを既に払っているためにオッズがいいのと、後ろのアクションがもうないからだ。

3betについての考え方だが、BBはこんなにコールに向いた条件であるのだから、3betは超強いハンドでしないと勿体無い。

なぜなら、AJoなどのハンドで3betして4betが返ってきたら、降りなくてはならないからだ。コールすればフロップを見に行けたのに、降ろされてしまうというのは極めて勿体無い。

このため、BBの3betレンジは4betにも余裕でコールできるか、100%フォールドするしかないというポーラライズされたハンドで構成される。

BTNまでフォールドで回ると、オープンされるハンドもマージナル〜弱いハンドが多く含まれてくる。このため、極端に3bet頻度が上昇する。この3betレンジをしっかりと理解して実行できている人は少ないため、他のプレーヤーをエクスプロイトするスポットになりやすい。

まとめ

プリフロップのハンドレンジは基本的に暗記するしかないのだが、基本的な考えというものは存在する。
こういったGTOの根底にある考え方を理解することは”エクスプロイト”につながる重要な事項だ。

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