『熱帯』森見登美彦

現時点で理解した『熱帯』について

1. 汝に関わりなきを語るなかれ
2. 『熱帯』は『千一夜』の異本
3. 『熱帯』やカードボックスに触れると世界が移る
4. その他

1. 「汝に関わりなきを語るなかれ」

「謎は謎のままにしておくべきである(汝に関わりなきを語るなかれ)、そうすると残った「謎」の塊が黒い月のように浮かび上がる*……」
 *『ペンギン・ハイウェイ』の世界の中と外の話と似ている 巾着の表裏をひっくり返すとそれまで外だったものが中に、つまり世界の全部を巾着の中に入れることができる それが「海」、世界の果て

・物語的には魔術のトリックであり、メタ的にはもりみーの本=謎に対する姿勢である

・「謎」の塊=黒い月=闇=栄蔵の書斎/カードボックス/牧信夫の平屋=「魔術」の源泉

・もりみーの物語には同じ人物やアイテムが作品を跨いで登場するが、それぞれ微妙に設定がずれていることがある。そしてそのずれは解明できなくても良い。『きつねのはなし』が良い例
・もりみーは通常計算づくで物語を書くことはなく、材料を捏ねくり回しながら作っていく(カードボックスと同じ)
 *ただしもりみーがどこかで言っていた、「普段は計算ずくで書くことはないけれどある本は半分計算で書いた」と。それは『熱帯』だったか『夜行』だったか……
・『熱帯』はもりみーのスランプ中に「物語とは何か」と問いながら書いた物語

2. 『熱帯』は『千一夜』の異本

・『千一夜』は様々な物語を寄せ集め、シャハラザードが語ったということにしたもの
・『熱帯』は 最初の語り手→……→商人→長谷川→栄蔵→佐山 と不思議な物語が語り継がれ、終わらせるように伝えられてきた。佐山はその不思議な物語と語り手たちの経験という物語を『熱帯』という本にして終わらせた。『熱帯』も物語の寄せ集め

3. 『熱帯』やカードボックスに触れると世界が移る

・「この門を開いたのは君だろう」

【元の世界】
・小説『熱帯』が存在する世界
・佐山が消失したように見える

↓『熱帯』を読む

【『熱帯』を読んだ世界】
・基本は元の世界であるが熱帯に侵食されていく
・幻覚、ドッペルゲンガー
・小説『熱帯』が消失したように見える

↓『熱帯』を求めるうちにカードボックスに触れる

【『熱帯』の中の世界】
・冒険小説風の世界

↓魔術の根源を知る 創造の魔術を使う

【元の世界’】
・ほぼ元の世界
・創造する力が失われる(造り手と読み手が入れ替わる)

4. その他

・入れ替わった世界では役割が変わる(例:「沈黙読書会」)
 ・もりみー(『千一夜』)、白石さん(佐山尚一の『熱帯』)、ギリシア哲学男
 ・佐山(『千一夜』の新資料)、千夜さん(『千一夜』)、白石さん(もりみーの『熱帯』)、今西さん(ギリシア哲学)、池内さん

・「サルベージ」について
 ・元の世界では物語の一部を引き揚げて『熱帯』を思い出すこと
 ・『熱帯』の中では古道具を引き揚げること=元の世界を思い出すこと

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?