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#16 (Article クリップ) 目印は、 ”ベイビー・ブルー”のピックアップ・トラック。 ビンテージのトラックは、動くお花屋さん。

「花を育てるのは、好きだけれど、マーケティングは苦手」、「マーケティングは好きだけど、花を育てるのは、ちょっと」とおっしゃる皆さんのために、ぴったりのペアリング。

今回は、スロー・フラワーズのポッドキャストでおなじみ、デボラ・プリンズィングさんが、Florist's Review という雑誌に書いた記事、「Keeping Close To Home (Town) (地元から地元へ。私の会社がお手伝いします。)」 を解説、要約して、お届けします。

(下のサイトから行くと、一番下の記事になります)


1. 拠点は、ニューヨークのロングアイランド

舞台は、ロングアイランド (Long Island)。
ニューヨーク、マンハッタンの東側に位置し、東西に190km と長く伸びた大きな島。

西は、ニューヨーク市のブルックリン区、JFK国際空港のあるクイーンズ区を含む、市街地。
長く伸びた東の先は、二股のフォークのように細長く分かれ、フォークの北は農業で知られ、南 (The Hamptons。ザ・ハンプトンズ)は、大富裕層の別荘地、大邸宅が並ぶ高級リゾート地として有名なところ。特に夏になると、別荘を訪れる人、バケーション客で賑わいます。
ニューヨークの中では、富裕層、保守的、白人の比率が多めです。

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2. 「従来のフラワービジネス」から「新しいビジネス」へ

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(写真:ジャクリンさんのウェブサイトより photo from hometownflowerco.com)

ロングアイランド生まれのジャクリン・ラ(r)ティグリーノ(Jaclyn Rutiglino、以下ジャクリンさん)さんは、フラワービジネスをしていた祖父母、両親の元で育ちましたが、自分の家業とは全く関係のない、顧客のための、広報、お店のブランディング、メディア・コンサルタントの仕事をしていました。

そんなジャクリンさんが、家族のフラワービジネスと、ジャクリンさんの得意分野のマーケティングをうまく合体させたのが、ご主人のマークさんと立ち上げた会社。
2019年5月の母の日の週末のことでした。
名前は、’Home Town Flower Co. (ホームタウン・フラワー・カンパニー)'。
まだ若い娘さんお2人(オーガスト(8月のAugust)さん と セージ(ハーブのsage)さん。可愛い名前ですね)とで営む小さなファミリー・ビジネス。

・初代: 祖父母が経営していたような、大きなビルの1階に入ってビジネスを営むフローリスト(開店は1948年)。

・2代目: 両親がやっているような、イベントやウエディングなどの特別な機会のためのフローリスト。

そして、3代目のジャクリンさんは、「ロングアイランドで最初の、モービル(Mobile : 移動)とデジタル (Digital)を組み合わせたフローリスト」

「ロングアイランドの消費者とロングアイランドのフラワー・ファーマーを結びつけるのがねらいです」。

ジャクリンさんの担当は、
・フラワーデザイン
・クリエイティブ・マーケティング
・ブランディング

ご主人の担当は
・毎日のビジネス管理
・植物の調達・運搬・配達など


3. ルールと合言葉は「ローカル(地元)」


忠実に守りたいルールはひとつだけ。
「バックヤード(backyard, 裏庭)から、つまり地元でその時期に育っているものを提供する、ということ」。

ビジネスをスタートさせる前に、最初にジャクリンさんがしたことは、1シーズンかけて、ロングアイランドにあるフラワー・ファームをいくつも訪問し、ビジネス関係を築き上げたこと。
卸売専門から、とことん地元、まで、規模も専門分野も違う10件の農家と取引を行うことになりました。

すぐ下の地図は、ジャクリンさんのウェブサイトからです。
黒い点の部分が提携している、フラワーファーマーの場所。
確かに ロングアイランド中に農家が散らばっています。

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モービル(移動できて) &  デジタル(ウェブ・SNSで集客)だからできること。

・ファーマーにとっては、地元で育てた花を、直接届けに行けないところへも届けてもらえる。

・逆に消費者にとっては、ファーマーズ・マーケットに出向くか、直接農場まで行かないと、手に入らなかった花を買うことができるようになる。

これを細長いロングアイランドの、端から端まで走ることで実現させました。

ジャクリンさんのお得意分野を駆使した、マーケティング力で、またたく間に、ロングアイランドとニューヨークの メディアの関心を 集めるようになってきました。


4. 「ローカル(地元)」だけではもう当たり前。 そこでビジュアル・インパクト登場

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(ジャクリンさんのウェブサイトより。photo from hometownflowerco.com)

「ローカル(地元)、シーズナル(季節)のものを買おう」、は、もう耳慣れたフレーズ。
視覚に訴えかける、斬新なインパクトを与える工夫をしました。

それが、「Baby Blue (ベイビー・ブルー)」(=パステル・ブルー)と、ジャクリンさん夫婦が呼んでいる、動くお花屋さん。
フォード(Ford)社製の1976年ものの、ビンテージのピックアップ・トラックです。荷台に、白と黒のストライプのテント張りの屋根をつけ、お花を載せて登場するその姿は、一度見たらすぐに覚えてもらえます。

5. ビジネス展開は、今までのものにちょっとひねりを効かせて


(1).  CSAスタイル「Flowers in a bag(フラワーズ・インナ・バッグ)」


(CSA=メンバー制で会費を募り、決められた期間に野菜、花を提供する農家と個人を結ぶスタイル。#_6_のブログ参照)

毎回違ったお花が、茶色の紙袋に入って、自宅や職場に届けられます。
間隔は、週1回、2週間に1回、毎月1回の中から、
サイズは4種類の中から選ぶことができます。
初回は、無料で花瓶がつきます。

ちなみにサイズ(呼び方も含めて)とお値段は以下の通り。
・ミニ=小(10本 $40)
・スモール=中(15本 $55)
・ミディ=大(20本 $70)
・キッチン・シンク=特大 (30本 $90)

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(ジャクリンさんのウェブサイトより。photo from hometownflowerco.com)

(2). 1回限りの注文と配達

(3). ギフト


1回単発でのオーダーと似ていますが、それに加えて以下のサービスがあります。
ギフト券(お値段はいくらでも)
定期便 (1ヶ月間、毎週ミニサイズ【=小】の花束をお届け。$150)

(4) .  トラックでお花屋さんを持ってくる、「Baby Blue Experience (ベイビー・ブルー・エクスペリエンス)」

ジャクリンさんのお店の「看板トラック」”ベイビー・ブルー”。
その登場の仕方はいろいろで、お客さんが経験することもそれぞれ異なります。

例えば:

[1]. ファーマーズ・マーケットに出店

[2]. ポップアップなどのイベント会場に出店。
「主催者のお誘いで、ポップアップに出店するのは、お客さんにお花の世界に浸ってもらうためです」。
主催者側からのリクエストも様々で、
「お花の冠を作るワークショップ開いて欲しい」
「フラワー・バー (Flower Bar)にして、その場でお客さんに花を選んでもらって、ブーケにしてあげて欲しい」など、アイデアにあふれたもの。

[3]. プライベートのイベントでのお花屋さんのケータリング

出店することによって、「ローカルの大切さを伝えること」は、もちろんのこと、「お客さんと関わることの大切さ」があります。
「見たことはあるけれど、どこかちょっと違っていて、絶対今までのお花屋さんでは、手に入らない花を見てもらうこと。そして『お花に親しむ』、ということを味わってらいたい」とジャクリンさん。
「きっと、お客さんは、私の意図を理解してくれて、お花を連れて帰る喜びを味わってくれるような気がします」。

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(ジャクリンさんのウェブサイトより。      photo from hometownflowerco.com)


6. まとめ

今回は、大きな消費者圏を視野に入れた、ジャクリンさんのビジネス展開についてお届けしました。
ニューヨーク市、その近郊は、アメリカでも考え方が、先に先にと進む、情報発信地です。当然、動きも早いし、競争も激しいわけです。

ご自分の家族が、フローリストとして働く姿を見ながら育ったジャクリンさんは、花の仕事と自分のキャリアを活かして、ご自分の会社(Home Town Co. )をどのようにブランド化し、プロモーションしていくかを考え、実行し、うまく軌道に乗せることができました。

「ローカル(地元)、シーズナル(季節のもの)、CSA, ファーマーズ・マーケット、ワークショップ」、そう言った、いまではすっかりおなじみのコンセプトに少しだけひねりを効かせ、ビジュアルに訴えかけるパステル・ブルーのトラックを看板に、ファーマーと人、人と花を結ぶ仕事をローカルのレベルで行っています。

ジャクリンさんのインスタグラム

今回もご覧いただきまして、ありがとうございました。

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ご近所でお花見できるといいですね。




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