見出し画像

#9 (podcast クリップ) ブティック・フラワー・ファーム & ショップ

こんにちは。

今回のポッドキャスト・クリップは、アメリカ東海岸、ペンシルヴェニア州にある、ブティック・フラワー・ファーム、「ザ・ファーム・アット・オックスフォード (The Farm at Oxford のオーナー、マーラ・タイラー (Mara Tyler)さん(以下、マーラさん)のお話を、「スロー・フラワーズ・ウィズ・デボラ・プリンズィング (Slower Flowers with Debra Prinzing)」のポッドキャストから、コンパクトにまとめてお届けします。

デボラ・プリンズィングさん(以下、デボラさん)は、マーラさんの小売店の部分について、特にお話を聞きたい、ということでしたので、売る部分にフォーカスしてみることにします。

画像1

(マーラさんのインスタグラムより。IG @thefarmatoxford)

「ブティック・フラワー・ファーム」

マーラさんが、農場、そして小さな小屋風のお店を「ブティック」と言っても、すんなりと受け入れられるのは、なぜでしょう。
ひとつには、センスが良くて、あまり見かけることのない、厳選されたフラワー・コレクションを買うことができるからではないか、と思われます。

そしてもうひとつには、お店のあるエリアの消費者層。
州都のフィラデルフィアから、車で1時間ほどのところにある静かな高級住宅街。
富裕層が多く住み、大きな敷地の家もたくさんあります。
この辺りは、個人的な意見ですが、「(富裕層にとって)お金を使いたいのに欲しいものが売ってない」という感じを受けました。洗練されたお店が少ないのです。
センスがいいとか悪いとかも、よくわからない人も多いような気がします(内緒の話 -_^)。
ブティック、と呼ぶことでそこに住んでいる人(特に女性)の気持ちを高揚させ、安心感も出せる感じがします。

それでは、マーラさんのビジネス展開を、早速ポッドキャストで聴いてみましょう。

1.  北カリフォルニア出身のマーラさんがペンシルヴェニアにフラワー・ファームを持つまでの道のり

画像2

(マーラさんのインスタグラムより。IG @thefarmatoxford)

マーラさんは、カリフォルニア、サンノゼ(San Jose)エリアの出身。
仕事も場所柄、シリコンバレーで、デジタル・マーケティングの仕事を25年続けていました。
燃え尽き気味になったある日、ニュージャージー州出身のご主人とお子さんと、東海岸に移ることを決意。
「生まれも育ちもカリフォルニア(西海岸)なので、もしイースト・コースト(東海岸)が自分の性に合わなかったら戻ればいい、くらいに思って」。

ペンシルヴェニアの州都、フィラデルフィアでパートタイムの仕事を始めた頃は、余った時間をフラワー・ファームやフラワー・ビジネスを見ることにあてるうち、だんだん興味が湧いてきました。

ペンシルヴェニアに農場を見つける

それから1年半かけて60ヶ所の土地を見て回って、1838年に建てられた・農家の建物がある12エーカー(約4.9ヘクタール)の土地を購入。
そこは、以前、酪農と羊毛の農場として使われていたため、周りがフェンスで囲まれている上、平坦な牧草地だったのでフラワー・ファームには最適な環境。
2014年、マーラさんのファームがスタートしました。

「ザ・ファーム・アット・オックスフォード (The Farm at Oxford)」という名前は、「ファームのある通りの名前がオックスフォードだからです。お客さんを困惑させてしまうこともありますが、こちらは一般には開放していません」。

画像3

(マーラさんのインスタグラムより。IG @thefarmatoxford)

園芸、フラワーのメッカにファームとショップを構える

ペンシルヴェニア州は、アメリカの歴史の中でも園芸、農業が古くから盛んなところ。
3月初めにインドアで行われる「フィラデルフィア・フラワーショー」は、イギリスの「チェルシー・フラワーショー」ほどではありませんが、よく知られています。

マーラさんが選んだ土地は、フィラデルフィアから車で1時間のところにある、ケネット・スクエア(Kennett Square) という町。
「国内一のマッシュルームの生産地」を売りにしています。

車で15分のところには世界的に有名なロングウッド・ガーデン(Longwood Gardens)があります。
その他に、隠れた名園、シャンティクレア・ガーデン(Chanticleer)ウインタサ(発音はθ)ー・ガーデン(Winterthur)などが日帰りコースに組み込める範囲内にあり、植物、花好きの人にとっては、必ず訪れたい、園芸植物の聖地となっています。

ロングウッド・ガーデンは、素晴らしいディスプレイガーデンの他、園芸(Horticulture)だけでなく花卉園芸(Floriculture)の教育にも力を入れているので、世界中の人がやってきます。
「まさか40代でフラワー・ファームを始めるとは思ってなかったけれど、やってみたくなって。ファームがうまくいかなかったら、自分たちのためにフラワーガーデンを作ればいいわ、と思ったんです(笑)」。

ガーデニングの経験は、「子供の頃、母親の手入れする大きな庭を手伝いはしましたが、やったことが雑草を引いたり、落ち葉を集めたり、みたいな作業だったからあんまり好きじゃなかったんです。でも、自分で土地を持つとやりたくなるものですね」。

最近は、ロングウッド・ガーデンが提供する、数多くの「園芸・フラワー講座プログラム」で一般の人々に教えているマーラさん。
「昨年は、地元で育つ植物を、ということでダリアをテーマにして教えました。
ロングウッド・ガーデンで開かれたクラスですが、途中で私のファームに実際に出かけて現場の様子や花を見る、という部分を加えて好評でした」。


2. ビジネスの内容は、厳選された種類のカットフラワーとショップ

画像5

(マーラさんのインスタグラムより。IG @thefarmatoxford)

大きく分けて、マーラさんのビジネスは、
1. 「カット・フラワーの卸売」
2. 「フラワー・ファームのデザイン、フラワー・デザインについてのワークショップ」
3. 「小売店(植木鉢などを含むフラワーショップ)」


今年で3年目になる小売店の売り上げは収入の50%になるそうです。
特に、ホリデーシーズン(クリスマスの準備をする、11月半ばから12月半ば頃)の売り上げは大きいとのこと。

マーケティング・リサーチの仕事をしていただけあって、調べるのは得意分野です。
おそらく、農場の土地の選択も、お店の場所の決定も、選ぶ花の種類も、そのリサーチの賜物として功を奏しているのでしょう。


カット・フラワーは、自分で育てたり、農家と提携したりして入手

マーラさんが、ご自分で育てている花は、
春に咲く水仙・チューリップなどの球根類、シャクヤク、バラ、ダリア、アレンジメントに使える宿根草などが中心。

「春一番に出回る花、あまり見かけることのないストックの品種、夏に育ちにくいデルフィニアム、現在そこにしかない、という幻のエアルームの(Heirloom;昔から伝統的に育てられている品種のタネを引き継いだ)スイートピーやカーネーションなどを育てて、売っているファーム「ヘンドリックス」(Hendrick's Flower shops & Greenhouses)を見つけたんです。
そのファームとの距離からして、顧客がかぶったりしないので、お願いして、特別に卸売してもらっています。 」


「ヘンドリックスでは、植物を温室で育てているので、季節より早く手に入るのも魅力です」。

画像4

(マーラさんのインスタグラムより。IG @thefarmatoxford)


ショップは、マーケットの中のスペースで、週末だけオープン


画像6

(マーラさんのインスタグラムより。IG @thefarmatoxford)

マーラさんのショップがあるところは、ロングウッド・ガーデンの近く、ケネット・スクエア。
ダウンタウン(町の中心)は、レストランで食事をしたり、カフェでお茶を飲んだり、セレクトショップなどのお店を覗いたり、と、ガーデンに行った帰りにちょっと立ち寄りたくなる、チャーミングな雰囲気のある場所です。

マーラさんが入っているマーケットの名前は、ワークス(WorKS) (マーラさんは、ワークス・アーティザン・コレクティヴ (WorKS artisan collective)と言ってます)。
「 WorKSの、KとSが大文字なのは、地元の人ならすぐわかると思いますが、ケネット・スクエア(Kennett Square)という町のイニシャルをとってます」。
WorKSは、倉庫のようなワンフロアの建物を小さなスペースに区切り、クリエイター達がアートやクラフト、ビンテージ雑貨などを売るブースが並んでいるマーケットです。

「最初は1.5 m x 3m のスペースを借りてましたが、昨年の夏は、3m x 2.4mのスペースを加えました。入り口から入ると隣合わせになっています。
自分が好きなので、お客さんのために植物と植木鉢をアレンジしてあげることもあります。
植木鉢は、売れますが、花瓶はほとんど売れませんね」。

このお店を持ってよかったのは、
「収入が1年を通して、得られること」
「農場はオープンしていないので、このお店の住所があることで、クライアントが、マーラさんの商品を見に来るのが簡単になったこと」
「週末(金・土・日)の3日だけなので、商品をストックするのは週末分だけでいいこと」

お店は、まるで、”プチ・テレイン”、みたいです」。

(注:テレイン 'Terrain' は、カリフォルニア、ニューヨーク、ペンシルヴェニア、コネチカットなど、郊外の高級住宅地に住む、ハイエンド・カスタマーをターゲットにした、ガーデンとライフスタイルを提案するお店です。
例えば、ペンシルヴェニアにあるお店は、古いファームハウスをそのまま使用、コネチカットはニューヨーク風、新築のシャビーだけどクリーンなウェアハウス。カフェも併設されています。その土地、顧客に合わせたセレクションとディスプレイ。価格はかなり高めですが、富裕層の購買意欲をそそるものばかりです)。

画像7

(テレイン・ペンシルヴェニア店。2017年12月撮影)

3. フラワービジネスを始める人、すでに始めている人へのアドバイス。



全てやってみて、見直す

「まずは、全てトライしてみたらいいと思います。
それから、ビジネスが無理なく長く続くように、最適化していくことが大切。
好きだけど、あまりにもお金にならないことは、見直しをすることが必要かもしれません」。

「ビジネスの最適化に関して、マーラさんが、2020年に方向を変えたことは?」のデボラさんの質問に対して。
「今までは、食料品店など、何ヶ所もあったお花を売る場所を、今年は、自分のショップ以外は、先ほどのお店、「テレイン(Terrain)」だけに絞りました。
理由は、まず、テレインとは、とても良いビジネス関係が確立していて、適正な価格で取引ができているから。
そして、私のクライアントが、私の花はテレインで買える、ということを知ってくれているからです」。


他のフラワー・ファーマーとの協働

「私は会社を大きくして従業員を雇うより、小さな会社同士でのチームワークの方を好みますね」とマーラさん。

「全てを自分でやらなければ、というプレッシャーよりも
例えば、フラワーデザイナーを一人雇うことで、私はそこにエネルギーを使わなくてもいいことになりますから、うまくいくんじゃないか、と考えたり、他の人と仕事を協力、分業できないか、も考慮に入れます。」

先ほどの特別に古い花の品種を栽培している農家との関係もそうですが、
こちらは、ご近所にビニールハウス(フープハウス,Hoop House)を持っているフラワー・ファーマーとの協働の例。
「私のファームは、露地栽培のみで、温室の設備はありません。
『せっかくあるビニールハウスの設備を 有効に使いたい』近所のファーマーと、
『冬から春先のシーズンに使える、ラナンキュラスやアネモネのような花を、いち早くマーケットに出したい』私。
コストをシェアして、一緒に作業して。
お互いにプラスになるでしょう」。

まとめ

最後に、デボラさんが「まるでビジネスコンサルティングを受けているみたい」、とおっしゃっていたように、
インスタグラムの、優しそうなマーラさんの姿、のどかな郊外のフラワー・ファーム、美しい花々の写真からはわからない、マーラさんのビジネスの手腕が、インタビューからさりげなく伝わって来ました。

ターゲットを絞り、顧客が好みそうな花や植木鉢などの付属品を選び、他のお店にないセンスの良さを売りにしているマーラさん。
無駄がないように、事業の見直し、他者との協力関係を作るなど、たくさんのアドバイスを惜しげもなく、シェアしてくださいました。

本日も長くなりました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

画像8

(テレインのディスプレイ、参考になりますね。2017年12月撮影)




サポートありがとうございます。