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【パウパー】イニシアチブから白が抜けた経緯

はじめに

どうも、flowerです。神奈川のパウパープレイヤーです。突拍子もないですが、青黒イニシアチブに関する記事を書いてみました。このデッキは非常に好みのアーキタイプということもあり熱心に調整を続けていたのですが、約3週間前とある課題にぶち当たりました。本記事は、その課題を解決すべくデッキの調整経緯を遡ることで何かヒントは得られないかと考え、そのついでに言語化したものです。課題解決までの過程をすべてシリーズ化しようとしたのですが、膨大な量と執筆するモチベーションが維持できなかったため、タイトルの内容で単発記事として投稿することにしました。したがって、「せっかく途中まで書いたから」という理由が大きいです。また、このような記事を書いてみたいという好奇心もあったので、お試しで投稿することとしました。注意点として、本記事は約3週間前にほぼ書き終えたもので、現時点のメタ・デッキの構成・カードの評価が異なっています。ちなみに、前述している「課題」というのは具体的には「青単」の克服になるのですが、それはまた別の話となります。あくまでタイトル通り「白が抜けた調整記録」としてご覧下さい。それではいきます。

青黒イニシアチブとは

暗黒の儀式》《アーラコクラの隠密》《物騒なバトルレイジャー》のパッケージを搭載した青黒ベースのデッキの総称。早期ターンにイニシアチブを得て、ダンジョン《地下街》を踏破することで圧倒的な盤面で押しつぶすコンボデッキ。イニシアチブを得た状態+イニシアチブクリーチャー+除去構えという盤面でターンを渡すのがセオリー。ゲーム序盤で構築されるこの布陣を突破できるのは、ほんの僅かなデッキとシチュエーションに限る。理不尽な勝ちパターンを保有しているのがこのデッキの魅力である。

青黒以外に各色()イニシアチブを得るカードもあるが、妨害・除去が豊富なカラーリングである青黒というのがイニシアチブを維持する事に長けている点、《アーラコクラの隠密》と《物騒なバトルレイジャー》の単体のスペックが高い点、《暗黒の儀式》の存在から、現在のイニシアチブデッキとは色の情報を除いても青黒であるというのが一般的な認識と言える。

主流デッキリスト

現段階で主流となっている型を紹介する。

7/16 Pauper Summit Cup 4-1 優勝 淡雪氏のリスト

前述した《暗黒の儀式》と2種のイニシアチブクリーチャーのコンボパッケージ、《対抗呪文》《殺し》《喪心》などのカウンター・除去のバックアップに加え、《睡蓮の花びら》と《儚い存在》が採用されている。
1ターンでも早いイニシアチブの獲得と地下街踏破を目指す型となっていて、かなりコンボに振り切っている構成に見える。

調整経緯

上記リストは結果を出しているので強力なデッキであるのは間違いない。しかし、大変おこがましい話ではあるが、正直このリストを見た時「ピーキー過ぎないか?」という印象を受けた。

理不尽な速度でのイニシアチブ獲得は魅力的だが、いくら《暗黒の儀式》があるとは言え、4マナ以上のスペルが計16枚は重すぎないか?マナソース26枚はマナフラッドしないか?マナベースを崩してまで《儚い存在》を入れる必要はあるのか?青絡みのデッキ相手に払拭以外のサイドカードがなく、捨てているマッチアップなのか?

色んな考えが頭を巡った。本来、既存のリストに疑念がある場合は、まずはそれをそのまま使用して検証すべきであるが、今回のリストは病的なほど「丸さ」を追求する私のマジック的嗜好には合わなかった。ただし、《暗黒の儀式》+イニシアチブのパッケージには魅力を感じていたため、これを搭載した新しいデッキを作るつもりで検討することとした。そこで、下記リストを試した。

type 1

本リストの所感は以下の通り

・《対抗呪文》が撃てない

初動で沼が要求されるデッキで安定して青青を用意するのはやはり難しい。スペルの半分以上が黒いということもあり、複数枚採用は無理がある。

・マナフラッド

土地・《暗黒の儀式》・《睡蓮の花びら》計26枚がマナソースであることから、イニシアチブを維持するためのスペルが足りず、イニシアチブを取られるというケースも珍しくなかった。

・《ボーラスの占い師》が強い

このデッキをネクストレベルに押し上げたカードその1。壁・リソース確保・イニシアチブの奪い返しと1人3役こなす。スペルの比率も高く、介護なしで素で出した時もそれなりのヒット率があり、非常にデッキとマッチしていいる。以上を踏まえて、下記リストに修正。

type 2

主な変更点

・《対抗呪文》→《マナ漏出
単色で撃てるカウンターにするという単純な変更。イニシアチブを奪う側は基本的に2アクション以上求められるため、中盤以降も腐りづらく良い変更だった。

・《睡蓮の花びら》の廃止
初手でコンボに貢献するのは言わずもがなだが、コンボは2ターン目でも十分と感じた上、初手以外での弱さがカバーしきれない・《ボーラスの占い師》のヒット率を上げるためにも廃止とした。

・《ディミーアの水路》アウト
1~4ターン目はマナをフルに使うことが多く、デッキと合っていないと感じた。これを置くことで発生するテンポ損は《睡蓮の花びら》でカバーすることもできたが、それもできなくなったためアウト。また、序盤は島が2枚必要なケースが多く、沼を積極的にバウンスするのだがそうすることで《殺し》が撃てないターンが生まれるのもデメリットだった。

・《見栄え損ない》の採用
スレイベンの検査官・僧院の速槍・ヴォルダーレンの美食家・フェアリーの予見者といった1ターン目からクリーチャーを展開されると、《殺し》を持っていない場合早期コンボを決めてもイニシアチブを維持できないと感じたため、そのようなシチュエーションで足並みを揃えるのに採用。想定通りの働きをしてくれて悪くない感触だった。

・《払拭》の採用
青黒の儀式からのイニシアチブクリーチャーをカウンターで1:2交換されるというのは使わなくても明確な負け筋とわかっていたため採用。文句なしのパフォーマンスを発揮してくれた。1枚あっても良いカード。

この時点でデッキの感触はかなり良く、高いポテンシャルを感じた。

ちょうどこの時、晴れる屋川崎店にて行われるチームパウパーでの使用デッキを検討しており、私は青赤黒系デッキ担当だったため、本格的な検討を視野に細部を調整することにした。MO未実装・大会1週間前ということもあり、仕方なくひたすら壁に向かって擦っていた。そんな中、とあるカードのポテンシャルに気づく。

誰もがキャスト時ドヤ顔しているように感じる。メインで撃った時の玄人感は異常

渦まく知識》である。この時、上記リストより《熟考漂い》を1枚《渦まく知識》変えていた。3枚目の《熟考漂い》の代替案を探していて、適当に入れた1枚の《渦まく知識》だったが、非常にデッキと噛み合っていて《ボーラスの占い師》同様、これも間違いなくこのデッキを1段階押し上げた変更である。
コンボパーツを探しにいける上、課題だったイニシアチブ確保後のマナフラッドの解消に貢献する。また、このデッキはシャッフル手段が多く《進化する未開地》や《灰のやせ地》のサーチ能力で固定されたデッキトップをリフレッシュする所謂「ブレストフェッチ」を始め、下記のような運用が可能。パウパープレイヤーからしたら馴染みのものもあるが、記載しておく。

①インスタント・ソーサリーをデッキトップに戻し、《ボーラスの占い師》を確実にヒットさせるor不要牌をデッキボトムに送る

②固定されたデッキトップ2枚を《定業》の占術でデッキボトムに送る

・イニシアチブ獲得時の基本土地サーチでシャッフルする

・《地下街》「失われた井戸」の誘発にスタックし戻した2枚を占術で下に送る

・《地下街》「死せる三者の玉座」の誘発にスタックし出したいクリーチャーをデッキに乗せる

など、あらゆるシナジーが存在する。

また、しばしば起きるのが「意図せずコンボ揃っちまった案件」。

3マナ出せる状況で《渦まく知識》→《ボーラスの占い師》を試みようとしたところ、《暗黒の儀式》+イニシアチブが揃いそのままコンボ始動。ついでにデッキシャッフル。

このパターンが結構あり、例え揃わなくても元のプランに向かえばいいため、リスクなし且つ自然な動きの中でコンボを揃えに行ける。

あまりにも使い勝手が良かったため2枚、3枚と徐々に枚数が増えていき、下記のリスト落ち着いた。

type3

type 3

type2からの変更は以下

-1《熟考漂い
-1《息詰まる噴煙
-1《島》

渦まく知識》の追加によって、早期コンボの安定性・イニシアチブ確保後のリソース供給と2つの課題が解決し、いよいよ以てトーナメントに持ち込めるレベルと感じた。

大会結果

4-1

なお、デッキの草案を共有したおれおくんのチームメイトの方も使用して5-0と、やはりデッキのパフォーマンスは相当高いと思われる。また、おれおくんとの情報共有はブレスト採用するかしないかくらいまでだったが、ちゃっかり彼も3枚に増やしてた。

儚い存在》は必要か?

このデッキの制作段階で最も議論した項目と言っても過言ではない。現段階では多くのイニシアチブ使いが白をタッチして《儚い存在》を入れているが、私は《儚い存在》が入っていない青黒型の方がデッキとして優勢だと考えている。なぜこのような表現をするかというと、エスパーと青黒では最早全く違うデッキだと捉えているからだ。エスパーの方は、サンプルリストで取り上げたようにとにかく早期地下街踏破を目指していて「コンボデッキ」としての構築思想が強かったように伺える。

一方、私はイニシアチブこそ「コントロール」すべきと考えている。《地下街》「地下墓地」以降は勝手にクロックが出来上がっていくため、それまで1:1交換を繰り返して盤面の交通整理を行えばいい。豊富な除去に理不尽な押し付けもできる謂わば「コンボ搭載のコントロール」だと捉えており、エスパーとは構築思想がまるで違う。もとより青黒からデッキを制作したが、type3の段階ではきちんと《儚い存在》を入れてテストを行った。これも残念ながら壁を相手にしたものとなったが、少なく見積って20回以上はデッキを回した。そこで不要と結論づけた理由が次の通りである。イニシアチブを維持できている状況は基本的に有利なことが多く、わざわざを《地下街》を探索する必要はないと考える。大きなリターンが見込めない一方、初手で引いた時の邪魔くささは一級で《暗黒の儀式》が絡まない場合、《儚い存在》を抱えた状態で4ターン目のイニシアチブに備えて盤面の整理を行う必要がある。初手の《儚い存在》の枠が除去であれば、不安定な状態でのイニシアチブ獲得にならなくて済む。《儚い存在》はイニシアチブ着地前はただの事故要因でしかなく、除去はイニシアチブ確保前のアクションの担保・イニシアチブ確保後維持するのに貢献するというゲームを通して役割がある。また、意外と気になったのが「イニシアチブ確保後でも撃てないケース」があったこと。4マナの状態でイニシアチブクリチャーを着地させ、平地をサーチしようとデッキに手をかけたところサーチにスタックで除去を撃たれ場が空になる状況が容易に想定できた。土地を5枚でキャスト且つ予め平地を置いておくというシチュエーションは意外と稀で、イニシアチブ確保によって平地にアクセスするケースが多いも事実。言わば《儚い存在》はハイリスクローリターンのカードとも言える。

古術師ループに関して

儚い存在》を肯定する理由として「古術師ループ※1」の存在がある。しかし、このパッケージも私は不要と感じている。古術師ループであっさり勝ってしまうパターンも確かだが、古術師ループが決まりやすいデッキ=インスタントでの介入が難しいデッキというのがあり、それ即ちイニシアチブデッキが繰り出す「2ターンイニシアチブ」にも干渉する手段が少なく、そもそもとして古術師ループが有効なデッキに対してイニシアチブが強いため、不要という意見である。

※1《古術師》を《儚い存在》でブリンク→反復で再度古術師をブリンクし《儚い存在》を回収するパウパーでよく見られるギミック

最後に

本稿ではエスパーイニシアチブから白が抜けた調整をまとめました。再三申し上げますが、あくまで白が抜けるまでの思考と記録であって、現在主流のタイプやその後のカードに対する評価の変遷については言及していないため、ご了承ください。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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