村田沙耶香『コンビニ人間』を読んで
これは、コンビニで約20年間働き続ける女性の物語だ。彼女は就活をしたが就職が決まらず、バイトとして働き続けている。
彼女はコンビニバイトのプロだ。
毎日天気予報を調べ、昼間にかけて暑くなる日であれば冷たい飲み物が売れるからこれらの商品を多めに並べておく。
新商品の発売日には、ノルマを達成すべく声掛けで大々的に宣伝する。
まさに一流の仕事ぶりである。
どんな職業も極めるのは簡単なことではない。
そして、彼女は究極的なマニュアル人間である。
徹底的なほどに合理主義者で、例えば小学生の頃喧嘩している男子二人の喧嘩を止めたかったから、そのうちの一人のズボンを降ろした。そして当然先生に怒られ、親は学校に呼び出された。
問題を最短経路で解決するためなら、手段が倫理的かどうかは問わない、そういう考え方の持ち主なのだ。
そんな彼女は空気を呼んで臨機応変に無難な行動とることが難しい。
マニュアルのない仕事につくことは難しいのだろう。
だから彼女はコンビニバイト以外の仕事ができないのかもしれない。
この物語を読んで思い出したのは「職に貴賤なし」という言葉だ。
どんな職業にもプロフェッショナルが存在するし、人がどんな職業を選んだかはその人のアイデンティティに直結する。
そんなことを考えた。
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