パンサラッサは速い しかし速すぎるということもない

先日の天皇賞・秋。
パンサラッサがハイペースで直線あわやという逃げを見せ、寸前のところでイクイノックスが差し切った。イクイノックスの上がりは32秒7。勝ちタイムは1.57.6。
観た誰もが興奮した、競馬史に残る熱いレースだった。

1000mの通過は57秒4。
確かに速い。マイル戦のようなペースだ。

しかし天皇賞・秋にはもっと速い事例があった。
ローエングリンとゴーステディがハナを譲らなかった2003年の天皇賞・秋はもっと速かったのである。
それぞれの鞍上は後藤浩輝と吉田豊。
因縁の二人である。競馬ファンならご存知のはずだ。
スタートから互いが先頭を譲らず、競り合い、ローエングリンが前に出た。そして飛ばし続けた。
そうして出来たペース。
1000m通過は、56秒9。速い。
狂ったような時計だ。
ラジオたんぱの小林雅巳アナウンサーが「これは速い!」と実況したが、確かにこれは異常なペースだった。
2頭が他馬を引き離して4コーナーまで逃げ続ける。
二番手で追いかけたゴーステディは直線に入るとほとんどキャンターのような足になり、大差の18着、最下位となった。
逃げたローエングリンはさすが、勝ち馬とは1秒7差の13着に逃げ粘った。
G1こそ勝てなかったが、名馬シングスピールを父に持ち、その後種牡馬となって皐月賞と安田記念を勝ったロゴタイプを送り出すだけのポテンシャルを秘めていただけのことはある。

サイレンススズカの悲劇が起きた1998年天皇賞・秋は57秒4。
今年のパンサラッサと全く同じペースだ。

あれだけの逃げを見せて、2着に逃げ粘ったパンサラッサと吉田豊には敬意を表す他ない。
凡戦になるとの予想もあった2022年の天皇賞・秋を盛り上げてくれた。
そしてその逃げは、決して無謀なペースではなかった。

控えることを覚えた逃げ馬は、どうしても魅力の一端を失ってしまう。
右足を使うことをはじめたレフティーのように。

ただもう、逃げるしか他にない逃げ馬。
その強さが出たのが、今回のパンサラッサだったと言えよう。
心から、パンサラッサと吉田豊にあっぱれ。

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