見出し画像

【エルムS・レパードS】ダート重賞ウィークにダート種牡馬を勉強しよう

なかなか暑さの収まらない8月第一週。

今週はダート重賞ウィーク
新潟で3歳限定重賞G3レパードS(1800m)、札幌でG3エルムS(1700m)が開催される。

じつはJRA開催週でダート重賞のみ、というのは1年でもこの週だけ。
ダート重賞がふたつ、という特異な週末となるが、どうせならこの二つのレースを利用して、ここで日本競馬のダート血統について学習してみよう。



※なお、芝を中心とする競走馬の血統全体に関しては以下の記事で詳しく書いた。もし興味があれば、参照していただきたい。

※見出し画像にしたのは、エルムステークスの由来、北海道に多いエルム(ハルニレ)の木である。

エルムS・レパードS出走馬の父一覧


エルムS、レパードSの馬柱を見ると、父の欄には現在の日本競馬を代表するダート種牡馬の名が並んでいる。

とくにレパードSは3歳限定重賞であるため、比較的新しい種牡馬の名も確認できる。

さて、その内訳は以下である。

2頭出し…ヘニーヒューズ、アジアエクスプレス、シスターミニスター、ホッコータルマエ、ロードカナロア

1頭出し…エスポワールシチー、ディープインパクト、キングカメハメハ、オルフェーヴル、ダノンバラード、ワールドエース、モーリス、メイショウサムソン、タートルボウル、レッドファルクス、ラニ、ゴールドアクター、ロゴタイプ、アロゲート、ヴィクトワールピサ、エピファネイア、リアルスティール、ドレフォン、ダンカーク

一見するとわかるが、やはり芝のレースで見られる面々とはラインナップが全然違う。
ダート血統について、検討を加えていこう。

ノーザンダンサー系


ノーザンダンサー系は、北米系と欧州系に大別されるが、ダートを主戦場とするのはもちろん北米系の血統だ。

北米のダートで活躍するノーザンダンサー系の馬は、2歳戦が重視されるアメリカらしく仕上がりが早く、主に短距離でのスピード能力に秀でている。
なお、クロフネに代表されるフレンチデピュティ系は現在日本では数を減らしつつある。

ストームキャット系


ストームキャット系は現在の北米では主流血脈となっている。ディープインパクトとの交配はニックスとされ、母父ストームキャットはキズナをはじめ活躍馬を多数生み出した。


ヘニーヒューズ
(2頭)
…ダート競馬の本場北米で圧倒的な成績を残すストームキャット系の代表的種牡馬。2022年サイアーランキングダート部門ではトップに位置し、種付け料は500万円と破格の値がついている。
産駒にモーニンワイドファラオ

ほぼダート専門であるにも関わらず高い評価を受けている背景には、ヘニーヒューズ産駒の高い勝ち上がり率がある。
生産者や馬主にとっては、ヘニーヒューズを付けておけば損することはない、というわけだ。

北米ノーザンダンサー系らしく、仕上がりが早く2歳戦から抜群の強さを見せる。現在JRAダート2歳重賞は存在しないが、新設されるとすればヘニーヒューズ産駒は真っ先に「買い」である。

アジアエクスプレス(2頭)…上記のヘニーヒューズ産駒で、2歳時に朝日杯FSを征するなど芝でも活躍。産駒はダート短距離をもっとも得意とする。

ドレフォン…ジオグリフ、デシエルトと牡馬クラシック戦線でのイメージの強いドレフォンだが、血統背景から本来的にはダート向き。
デシエルトが東京ダート1600mのコースレコードを記録したように、スピードのある怪物級の産駒を生み出す可能性を秘めている。

欧州ノーザンダンサー血統


メイショウサムソン
…上記の北米をルーツとする馬たちとは違い、欧州の芝血統サドラーズウェルズをルーツにもつ。
すでに種牡馬は引退しているが、パワーの高さからか産駒はローカルを中心にダートでも活躍する。

タートルボウル
…アイルランド産の芝馬だが、産駒はダートもこなす。2017年に死亡したが、タイセイビジョンなどの活躍馬を残した。

ロゴタイプ
…ローエングリンを父に持ち、父系はサドラーズウェルズ系。自身は朝日杯、皐月賞、安田記念とG1を3勝した。
産駒数は限られているが、今年2023年兵庫チャンピオンシップ(G2)を征しJDD(G1)で三着に入ったミトノオーを出している。種牡馬としての可能性はまだ未知数で、注視する必要がある。

ヘイルトゥリーズン系


言わずとしれたサンデーサイレンスをはじめとするヘイルトゥリーズン系。
現在の日本の主流血脈であり、ダートでも活躍馬を多数輩出する。
芝を得意とする血統全体に言えることだが、スピードに優れダートでは稍重〜重の脚抜きのよい馬場でより力を発揮する。
馬場が湿っていたら、この系統を狙ってみたい。

ヘイロー系


エスポワールシチー

父ゴールドアリュールはサンデーサイレンス系の中でダート部門を一手に担う一大血脈の祖となった。ここからはスマートファルコン、コパノリッキー、ゴールドドリーム、クリソベリル、サンライズノヴァらが種牡馬入りし、人気を集めている。
中でもエスポワールシチーはすでに総合ランキングで20位以内にランクインし、次々に活躍馬を送り出している。
母父ブライアンズタイムと、ヘイルトゥリーズン4×4のクロスがかかっており、1990年代の日本競馬を代表する種牡馬の血が掛け合わされている。

ヴィクトワールピサ…父はネオユニヴァース。自身は皐月賞、有馬記念、ドバイワールドカップとG1を3勝した。
種牡馬デビュー以来安定した種付け数を集めてきたが、2021年からはトルコに供出されている。

オルフェーヴル…いわずと知れたスターホースで種牡馬リーディングも上位に位置する。芝が主戦場だが、パワーがあるためダートにも対応でき、特に新潟・小倉のダートで力を発揮している。
ダート活躍馬の筆頭は今年ドバイワールドカップを征し交流G1二勝のウシュバテソーロ

ディープインパクト系

ディープ産駒はダートとの相性が悪いが、孫世代になるとキズナ産駒を筆頭にダートでの活躍も見せる。
絶対数が多いだけに、ダート戦線でも常に注意は必要。

ディープインパクト
…芝での圧倒的な成績に比して、基本的にディープ産駒はダートでは走らない。中央重賞馬はGIIIレパードS(2011年)を勝ったボレアスのみ。
一方で仔のキズナ産駒は馬体が大きいためかダートでも高い適性を発揮する。

リアルスティール…現3歳世代が初年度産駒となるため、ダートへの適性はまだ未知数。母父ストームキャットの血が、ダートへの対応を後押しする可能性がある。

ダノンバラード…母レディバラードがTKC女王盃をはじめダート重賞2勝しているためか、ダートでの活躍が目立つ。キタウイングがフェアリーSを勝っているが、現状では産駒はダートでの成績が良い。

ワールドエース…産駒は2019年デビュー。
芝が中心だが、ダートもこなす。門別所属のシルトプレ(エルムSに出走)はダートですでに8勝を挙げている。

ロベルト系

ブライアンズタイムの血を引くフリオーソのランキングは下降気味だが、シンボリクリスエス、グラスワンダーの血脈がロベルト系をつなぐ。

エピファネイア…父シンボリクリスエスはダートでも活躍馬を多く出した。
エピファネイアは屈指の人気種牡馬となっているだけに登録数が多く、ダート戦線にも多数の産駒を送り出している。

モーリス・ゴールドアクター
…グラスワンダーの血を受け継ぐスクリーンヒーローが生んだこの二頭の種牡馬も、産駒はダートでもよく走る。
すでにモーリスの産駒カフジオクタゴンはレパードS(2022年)を征しており、ゴールドアクターの産駒もダートで高い適性を見せることが期待される。

ミスタープロスペクター系


優れたスピード能力をもつ「ミスプロ」系。ひと昔前はウッドマン、ティンバーカントリー、アフリートなど多くのダート種牡馬がランキングに名を連ねた。
現在は、芝・ダート両方こなすキングカメハメハ系と、フォーティナイナーやファピアノからの北米血統系とに大別できる。

キングマンボ系

ミスタープロスペクター系の中でも芝への適性が高いキングマンボの血を受け継ぐ血脈。
すでにキングカメハメハ系と言っていいほど、日本では地盤を築いている。

キングカメハメハ
…ディープインパクトに次ぐ、2000年代を代表する名種牡馬。
自身は日本ダービー馬だが、産駒にはダート馬も多くホッコータルマエ、チュウワウィザード、ジュンライトボルト、ベルシャザールといった名馬を生み出した。

ホッコータルマエ(2頭)
…G1を10勝と国内ダートで圧倒的な戦績を残したホッコータルマエは2020年に産駒がデビュー。2022年総合ランキング22位と、早くもリーディングを駆け上がってきた。
ヘイロー系、ノーザンダンサー系牝馬との交配も容易で、今後も順調にランキングを伸ばしていくと考えられる。

ロードアナロア(2頭)
…今年2023年リーディング最右翼のロードカナロア産駒はダートにも適性を示す。すでにレッドルゼルがJBCスプリント(G1)を勝っている。

ファピアノ系

今回紹介するのはいずれもアンブライドルズソングの仔。
グレイソヴリン由来の葦毛がよく出る。

ダンカーク
…母父エーピーインディと典型的なアメリカン血統だが、産駒は芝もこなす。ランキング中位で地味な印象だが、中京ダートを中心に安定した成績を残している。

アロゲート…今回扱う中では唯一の国外繋養種牡馬。自身は2016年北米最優秀3歳牡馬。2020年に死亡したが、産駒にケンタッキーオークスを勝ったシークレットオースがいる。
これまで日本では11頭の産駒がデビューしている。

フォーティナイナー系

レッドファルクス…フォーティナイナー→スウェプトオーヴァーボードの流れ。自身はスプリンターズSを連覇したが、ダートにも適性を示し、血統背景的には産駒はダートでの活躍が見込める。

ボールドルーラー系


ボールドルーラー系(シアトルスルー系)は現在ほとんどダートでのみ活躍馬を送り出している。他の有力種牡馬にパイロがいる。

シスターミニスター(2頭)
…ヘニーヒューズに続くダート種牡馬の雄。
G1三勝のテーオーケインズを筆頭に多くの活躍馬を送り出している。
ダートではコース、距離を問わずに走り、とくに人気を集めているときの安定感があるため、連軸として信頼できる。
その安定感から、種付け料は500万円が設定されている。

デビューから破竹の6連勝を飾り、JRA所属馬を抑えて7月にジャパンダートダービー(G1)を征した大井競馬所属のミックファイアもシスターミニスターの産駒。

ラニ
…名牝ヘヴンリーロマンスの仔で、UAEダービーを征した。
初年度産駒のリメイクがカペラSを勝利している。


【エルムS・レパードS】予想


さて、ここまで長々と血統について語ってきたところで、肝心の予想のほうにも触れねばならない。

<エルムS予想>

◎ペプチドナイル(父キングカメハメハ)
大沼SマリーンSと函館1700mを連勝。
ハンデも前走から0.5キロ減となるためここでも好走する可能性は極めて高い。オーソリティを抑えて一番人気になりそうだが、買うだけの価値はあると見る。

★カフジオクタゴン(父モーリス)
ダート重賞上位の常連にしては評価が低すぎないか? 得意の夏、一年ぶりの勝利もあり得る。

<レパードS予想>

◎クールミラボー(父ドレフォン)
前走加古川特別(2勝クラス)では2着に敗れたが、古馬との対戦での好走は評価できる。きさらぎ賞(G2)で3着している実績も魅力で、父ドレフォンの特徴を示すように、芝・ダートの両方での活躍を期待。

★ホッコータルマカ(父ホッコータルマエ)
左回りに活路を見出し、ここが勝負の好機。人気以上の実力があると見込む。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?